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「ノロウイルス」に効果的な「消毒薬」はご存知ですか?消毒する際の注意点も解説!

 公開日:2025/11/05
「ノロウイルス」に効果的な「消毒薬」はご存知ですか?消毒する際の注意点も解説!

ノロウイルスは冬に流行しやすい食中毒や感染性胃腸炎の原因となるウイルスです。ノロウイルスは感染力が強く、予防対策をしていても学校や職場、飲食店などで感染してしまうことがあります。

ウイルスは種類によって消毒剤の効果が異なります。この記事では、家庭で簡単にできるノロウイルスに適した消毒液の作り方や用途に応じた消毒方法、消毒の際の注意点を解説します。

居倉 宏樹

監修医師
居倉 宏樹(医師)

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浜松医科大学卒業。初期研修を終了後に呼吸器内科を専攻し関東の急性期病院で臨床経験を積み上げる。現在は地域の2次救急指定総合病院で呼吸器専門医、総合内科専門医・指導医として勤務。感染症や気管支喘息、COPD、睡眠時無呼吸症候群をはじめとする呼吸器疾患全般を専門としながら一般内科疾患の診療に取り組み、正しい医療に関する発信にも力を入れる。診療科目
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。

ノロウイルスの特徴と有効な消毒薬

ノロウイルスの特徴と有効な消毒薬

ノロウイルスの特徴を教えてください

ノロウイルスは感染性胃腸炎食中毒の原因となるウイルスです。ノロウイルスによる胃腸炎や食中毒は1年を通して発生し、なかでも特に冬季に流行します。強い感染力を持ち、数十〜100個程度のわずかなウイルス量でも感染、発症する可能性があります。

主な症状は吐き気、嘔吐、下痢や腹痛です。発熱は軽度で、高熱が続くことはあまりありません。健康な方は数日で回復しますが、乳幼児や高齢の方などは症状が重くなることもあります。

ノロウイルスに有効な消毒薬を教えてください

内閣府食品安全委員会や各自治体が推奨するノロウイルスに有効な消毒薬は、次亜塩素酸ナトリウムです。

次亜塩素酸ナトリウムは次亜塩素酸の酸化作用によりノロウイルスを不活化します。家庭用塩素系漂白剤として安価かつ容易に入手が可能です。

参考:『ノロウイルスの消毒方法』(内閣府食品安全委員会)

ノロウイルスへの消毒効果が期待できない消毒薬はありますか?

ノロウイルスへの消毒効果が期待できない主な消毒薬は下記のとおりです。

種類 主な用途
消毒用エタノール 殺菌・消毒剤
塩化ベンゼトニウム 傷薬、消毒薬
ポビドンヨード うがい薬、消毒薬
グルコン酸クロルヘキシジン うがい薬、消毒薬

ウイルスにはエンベロープと呼ばれる脂質の膜を持つエンベロープウイルスとエンベロープを持たないノンエンベロープウイルスがあります。ノロウイルスは脂質の膜のないノンエンベロープウイルスに分類されます。
エンベロープを持たないノロウイルスに対し、エタノールの効果は期待できません。

また、うがい薬に含まれるポビドンヨードやグルコン酸クロルヘキシジンは口腔内の洗浄に役立ちますが、ノロウイルスが付着した物品の消毒剤としては一般的ではありません。

次亜塩素酸ナトリウム消毒液の作り方を教えてください

次亜塩素酸ナトリウム消毒液は市販の塩素系漂白剤を希釈して作ります。漂白剤には塩素系酸素系がありますが、酸素系漂白剤では効果的な消毒ができません。塩素系漂白剤を使用しましょう。熱湯を使用すると消毒効果が低下するため、希釈には水を使用します。

市販の塩素系漂白剤(濃度5%)を使った簡単な作り方は下記のとおりです。

濃度 次亜塩素酸ナトリウム 希釈水
200ppm
(0.02%)
10ミリリットル
(ペットボトルのキャップ2杯)
2.5リットル
300ppm
(0.03%)
3ミリリットル
(ペットボトルのキャップ1杯弱)
1リットル
500ppm
(0.05%)
5ミリリットル
(ペットボトルのキャップ1杯)
500ミリリットル
1000ppm
(0.1%)
10ミリリットル
(ペットボトルのキャップ2杯)
500ミリリットル

ペットボトルの水にペットボトルのキャップに入れた次亜塩素酸ナトリウムを加え、蓋をしてよく混ぜ合わせます。消毒液の濃度は用途に応じて使い分けます。

塩素の濃度はppm(ピーピーエム)という単位で表され、1ppmは1リットルの水に1mgの次亜塩素酸ナトリウムが溶けている状態を意味します。

消毒対象別!ノロウイルスの消毒方法

消毒対象別!ノロウイルスの消毒方法

ドアノブや床はどのように消毒すればよいですか?

ドアノブや床、日用品などを消毒する際は濃度が200〜500ppmの次亜塩素酸ナトリウムをたっぷり浸したペーパータオルや使い捨てのふきんなどで拭きます。

次亜塩素酸ナトリウムはアルカリ性で人体に影響を及ぼす可能性があります。200ppmの低濃度の消毒液の場合は、時間の経過とともに自然に揮発しますが、次亜塩素酸ナトリウムには金属を腐食させる性質があるため、金属部の消毒後は水拭きをしましょう。

トイレやお風呂の消毒方法を教えてください

トイレの便座や床、お風呂を消毒する場合は塩素濃度が300ppm以上の次亜塩素酸ナトリウムで拭きます。ドアノブや床と同様にペーパータオルやふきんで浸すように拭きましょう。

嘔吐物などで汚れた場所はどのように消毒しますか?

嘔吐物で汚染された床や家具は、塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウムを浸すようにつけたペーパータオルで拭き取ります。ウイルスが周囲に飛散している可能性があるので、拭き取った床とその周囲も広く拭きます。

拭き取ったペーパータオルはビニール袋に入れ、濃度1000ppmの次亜塩素酸ナトリウムを廃棄物が浸るように入れて密閉して廃棄します。ビニール袋は厚手のものが望ましいですが、ない場合は薄手の袋を2枚重ねて使用しましょう。

衣服や下着、シーツや枕などの消毒方法を教えてください

患者さんの嘔吐物や便が付着した衣類やリネン類は廃棄するのが望ましいですが、廃棄できない場合は以下の方法で消毒を行います。

嘔吐物や便をペーパータオルで静かに取り除き、85度以上の熱湯に90秒以上浸して消毒します。ノロウイルスの消毒には煮沸消毒も有効であり、煮沸消毒は薬剤を使わずに効果が得られるため、家庭では簡単でおすすめの方法です。

煮沸消毒が行えない場合には次亜塩素酸ナトリウムで消毒をします。嘔吐物や便を取り除いた後に、塩素濃度1000ppmの次亜塩素酸ナトリウムに30〜60分つけ置きをし、十分にすすぎます。

また、嘔吐物や便が付着していない患者さんの使用した衣類やリネン類も、ウイルスが付着している可能性があるため消毒が必要です。
煮沸消毒ができない場合は、洗剤を入れた水の中で静かにもみ洗いした後、一度水気を切ってから濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウムにつけ置きして消毒をします。

参考:『ノロウイルスの消毒方法』(内閣府食品安全委員会)

ノロウイルスを消毒する際の注意点

ノロウイルスを消毒する際の注意点

ノロウイルスに感染後、何日程度消毒を継続すべきですか?

ノロウイルスは症状が治った後も1週間程度、場合によっては数週間ほど便からウイルスを排出し続ける場合があります。そのため、回復後も最低1週間はトイレや洗面所、ドアノブやテーブルなど身の回りの消毒を継続しましょう。

次亜塩素酸ナトリウム消毒液を使用する際の注意点を教えてください

次亜塩素酸ナトリウムを使用する際には下記の点に注意します。

  • 消毒液が直接皮膚に触れないように樹脂製の手袋を着用する
  • 消毒液が皮膚や粘膜に付着した場合はただちに流水で洗い流す
  • 作業中は換気を十分に行う
  • 酸性洗剤やアンモニア製品など、ほかの薬品と混ぜて使用しない
  • 日光への曝露により効果が薄れるため、消毒液は冷暗所に保管する

次亜塩素酸ナトリウム液はアルカリ性で、皮膚や粘膜に触れてしまうと炎症を起こすことがあります。目に入った場合は放置すると失明する可能性もあるので、使用には十分注意をはらいましょう。

消毒をする際の服装や消毒後の手洗いで気を付ける点を教えてください

消毒作業時はエプロン、マスク、手袋を着用します。可能であれば、エプロンも含め使い捨てのものを使用し、二次感染を予防しましょう。

消毒に使用した手袋やエプロンを脱ぐ際にウイルスが皮膚や衣類に付着する可能性があるため、マスクや手袋は密閉して廃棄します。消毒時に着用していた衣類は煮沸消毒または次亜塩素酸ナトリウムでの消毒が望ましいです。

消毒後は手指を入念に洗います。石鹸と流水で30秒のもみ洗いをし、15秒間の流水でのすすぎを行いましょう。これを2回繰り返すと、ノロウイルスの残存率が約0.0001%まで減量したという実験結果もあります。石鹸にはノロウイルスを消毒する効果はありませんが、ウイルスを手指からはがし落とす効果があります。

編集部まとめ

編集部まとめ
家庭でのノロウイルスの消毒には次亜塩素酸ナトリウムが効果的です。市販の塩素系漂白剤を使えば、簡単に消毒剤を作ることができます。用途に合わせて濃度を調整し、正しく使用してウイルスの二次感染を防ぎましょう。

次亜塩素酸ナトリウムはスーパーやドラッグストア、コンビニでも手に入ります。いざというときに備えて1本常備しておくとよいでしょう。

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