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「2型糖尿病」死亡リスクは“低所得ほど高い” 収入と糖尿病の関連性が研究で明らかに

 公開日:2024/12/10

韓国の高麗大学校の研究グループは、「低所得の20~30代の2型糖尿病患者は死亡リスクが高い」という研究結果を発表しました。この内容について濵﨑医師に伺いました。


濵﨑 秀崇

監修医師
濵﨑 秀崇(医師)

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東京大学理学部卒業、広島大学医学部卒業。国立国際医療研究センター病院、国府台病院勤務を経て、2024年9月より「うるうクリニック関内馬車道」に勤務。糖尿病を専門に、内科疾患および内分泌疾患を幅広く診療している。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本体力医学会評議員。

研究グループが発表した内容とは?

韓国の高麗大学校の研究グループが発表した内容を教えてください。

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

今回紹介する研究報告は、韓国の高麗大学校の研究グループによるもので、研究成果は学術誌「JAMA Network Open」に掲載されています。

研究グループは、韓国国民健康保険公団の研究に参加した2008年1月1日~2013年12月31日に2型糖尿病と診断され、2019年12月31日まで追跡された20~79歳の成人60万4975人と、対照群の63万5805人を対象にして、2023年1月1日~2024年8月27日の医療データを解析しました。その結果、2型糖尿病群では対照群と比べて、低収入であるほど死亡リスクは高くなったことが明らかになりました。また、対照群と比較した全死亡率の調整オッズ比は、高所得の2型糖尿病サブグループでは1.47、中所得では1.79、低所得では2.03となりました。

とくに関係性が顕著だったのは、若年者の所得と死亡リスクです。2型糖尿病の低所得者と高所得者を比べた全死因死亡率の調整ハザード比は、20~39歳では2.88、40~59歳では1.90、60~79歳では1.26でした。若年者での所得関連の格差のパターンは、心血管疾患による死亡率において顕著であり、がんによる死亡率では小さいことが示されました。

研究グループは、今回得られた結果について「収入は個人の健康に影響を与える重要な社会経済指標となります。過去の研究でも、糖尿病患者の収入と罹患率あるいは死亡率のあいだに逆相関が示されています。低収入は、血糖管理不良、合併症や心血管リスク因子の不十分な管理のリスクが高いことと関連しており、若年の2型糖尿病患者に焦点を当てた社会的支援や医療政策が求められます」と、コメントしています。

2型糖尿病とは?

今回の研究対象になった2型糖尿病とはどのような病気なのでしょうか?

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

2型糖尿病は、遺伝的な理由によるインスリン分泌の能力低下に加えて、生活習慣の悪化に伴うインスリン抵抗性が起こり、インスリンが相対的に不足した場合に発症します。糖尿病の中でも、患者数が最も多いタイプが2型糖尿病です。

一般的に生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病は、インスリン分泌の能力低下が鍵を握ります。生活習慣の乱れ以外でも、2型糖尿病患者は糖尿病になりやすい体質を持っていると言えます。ゲノム解析では2型糖尿病の要因となる多くの遺伝子が報告されており、中でも「KCNQ1」という遺伝子は、日本人の2型糖尿病発症に強く関連していることが判明しています。

2型糖尿病の治療方法は、インスリン療法やインスリン以外の薬物療法、GLP-1受容体作動薬という注射薬などです。

発表内容への受け止めは?

今回、韓国の高麗大学校が発表した研究内容への受け止めを教えてください。

濵﨑 秀崇 医師濵﨑先生

2型糖尿病患者の死亡リスクは、所得の高低に関わらず糖尿病がない人と比べて高くなりますが、所得格差が死亡リスクを大きくする、しかも20~30代の若年者において顕著であるという研究結果はインパクトが大きいと言えるでしょう。経済的な格差が拡大している社会において、真剣に受け止めなくてはいけないエビデンスです。

経済的な理由で適切な医療へのアクセスが制限されたり医療の質が低下したりすることは本来あってはならないことですが、現実的には難しい問題です。糖尿病は自己管理が極めて重要な病気ですが、所得の低い患者さんは食事や運動そして薬物療法に関して様々な制限があり、自己管理もうまくいかないのかもしれません。

著者らも述べているように、患者さんの所得格差を考慮した医療政策や若者を対象とした予防医学の推進が求められます。

まとめ

韓国の高麗大学校の研究グループは、「低所得の20~30代の2型糖尿病患者は死亡リスクが高い」という研究結果を発表しました。特に若年層で顕著な死亡リスクの上昇は、社会全体で早急に対策を講じるべき重要な課題です。医療格差の是正に向けた取り組みが求められる中、今回の研究結果が具体的な対策に役立てられることに期待が集まります。

この記事の監修医師