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糖尿病のマウス治療に成功 膵臓の細胞増やして移植

公開日:2022/02/23  更新日:2022/02/22

東京大学医科学研究所が、膵臓の細胞を増やして糖尿病のマウスに移植したところ、血糖値を正常に近い値に下げることに成功したと発表しました。このニュースについて上医師に伺いました。

上昌広 医師

監修医師
上 昌広(医師)

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東京大学医学部卒業。東京大学大学院修了。その後、虎の門病院や国立がん研究センターにて臨床・研究に従事。2010年より東京大学医科学研究所特任教授、2016年より特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所理事長を務める。著書は「復興は現場から動き出す(東洋経済新報社)」「日本の医療格差は9倍 医療不足の真実(光文社新書)」「病院は東京から破綻する(朝日新聞出版)」「ヤバい医学部(日本評論社)」「日本のコロナ対策はなぜ迷走するのか(毎日新聞出版)」。

今回発表された内容とは?

今回発表された研究内容について教えてください。

上昌広 医師上先生

今回の発表は、東大医科研の山田泰広教授らのグループの研究内容になります。マウスを使った実験で、出生前後に膵臓で活発に働く「MYCL」という遺伝子が膵島β細胞の増殖に関わっていることを発見しました。MYCL遺伝子を働かせることにより、大人のマウスの膵臓の膵島β細胞を増やすことに成功したということです。試験管内で増殖させた膵島β細胞をマウスに移植するとインスリンを分泌し、血糖値がほぼ正常値まで低下したという結果が出ました。また、試験管レベルでは、脳死ドナーから提供された人の膵島β細胞が、MYCLにより増殖することも確認されたことから、5年後を目処に糖尿病患者への臨床試験を始めることを目指すとしています。

糖尿病治療の現状は?

糖尿病治療についての現状を教えてください。

上昌広 医師上先生

2016年の国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる人である糖尿病有病者は約1000万人、糖尿病の可能性を否定できない人である糖尿病予備群は約1000万人と推計されています。糖尿病に使われる年間医療費は2017年の国民医療費の概況によると1兆2239億円で、年間死亡数は2017年の人口動態統計の概況によると1万2969人になっています。

糖尿病は膵臓に存在する膵島β細胞から分泌されるインスリンが不足することで発症します。現在の糖尿病に対する治療法は、糖の吸収を抑える薬剤やインスリン製剤の投与などの対症療法が主流ですが、そのほとんどが糖尿病そのものを治療するものではありません。糖尿病の根治を目指してiPS細胞などの多能性幹細胞からインスリン産生細胞を作製し、細胞移植による再生医療に応用する取り組みも進められていますが、医療応用に至っていません。

今回新しく発表された内容の受け止めは?

今回発表された研究内容についての受け止めを教えてください。

上昌広 医師上先生

自分の膵島細胞を増殖させると言う意味で、他人の細胞を必要とせず、非常に有望な研究結果です。ただし、現時点では動物実験のレベルにとどまっており、今後の研究の進展が楽しみです。

まとめ

膵臓の膵島β細胞を増やして糖尿病のマウスに移植すると、血糖値の値が正常に近くなったことが今回のニュースで明らかになりました。国内の患者数が多い病気なだけに、今後予定されている臨床試験にも注目が集まります。