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糖尿病患者さんは『歯科検診』が必要! 「糖尿病と歯周病の関係」や注意点を歯科医師が解説

 更新日:2024/01/26

糖尿病を抱える患者さんにとって「歯科検診」はお口の健康を守るだけでなく、糖尿病の病状を安定させるうえでもメリットがあります。今回は糖尿病患者さんにおける歯科検診の重要性やセルフケアのポイント、歯科治療時の注意点などを武部歯科医院の阿部先生に解説していただきました。

阿部 祐理子

監修歯科医師
阿部 祐理子(武部歯科医院)

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日本歯科大学生命歯学部卒業。同大学附属病院での研修、勤務を経て武部歯科医院副院長に就任。地域に根差した、患者様一人ひとりに寄り添う医療に心がける。日本歯科大学附属病院臨床講師、日本補綴歯科学会会員。日本糖尿病協会登録歯科医、日本スポーツ協会公認スポーツデンティスト。

お医者さんが糖尿病患者さんに歯科検診を薦める理由とは? 糖尿病になると歯周病が悪化しやすいって本当?

お医者さんが糖尿病患者さんに歯科検診を薦める理由とは? 糖尿病になると歯周病が悪化しやすいって本当?

編集部編集部

糖尿病になると、医科の先生からも「歯科検診」を強く推奨されると聞きます。それはなぜでしょうか?

阿部 祐理子先生阿部先生

歯科検診は健康な方でも定期的に受けていただきたいのですが、糖尿病の方は通常よりもむし歯や歯周病、ドライマウス、口臭などお口の病気を発症しやすい傾向にあります。そのため歯科医をはじめ、医科の先生も歯科検診を強くおすすめしているのだと思います。

編集部編集部

なぜ、糖尿病になるとむし歯や歯周病などを発症しやすくなるのでしょうか?

阿部 祐理子先生阿部先生

糖尿病になると体の変化やお薬の作用により、通常よりもお口の中が乾きやすくなるためです。唾液にはお口の中を洗い流す自浄作用がありますが、糖尿病の方はその唾液が不足しやすく、これにより口内に細菌が繁殖しやすくなります。くわえて、血糖のコントロールが悪くなると、細菌に対する抵抗力や傷を修復する働きも鈍くなります。このような理由から、糖尿病の方は健康な方と比べると、むし歯や歯周病の発症リスクが高くなってしまうわけです。

編集部編集部

糖尿病と歯科の病気では「歯周病」がよく話題に取り上げられるのですが、それはなぜでしょうか?

阿部 祐理子先生阿部先生

糖尿病と歯周病は、互いが互いの病気の発症や進行に影響を及ぼし合うことが数多くの論文で明らかになってきたからです。例えば、糖尿病の方が歯周病の治療をすると、血糖のコントロールが良くなるという報告があります。その反対に、血糖のコントロールが悪い方は、歯周病を発症するリスクが高くなることもわかっています。このように、糖尿病と歯周病は相互関係にあるため、糖尿病の方はとくに歯周病に警戒が必要です。

糖尿病患者さんの歯科検診で見られるお口の特徴 むし歯・歯周病でとくに注意したいポイントは?

糖尿病患者さんの歯科検診で見られるお口の特徴 むし歯・歯周病でとくに注意したいポイントは?

編集部編集部

糖尿病になるとお口の環境にも何か変化はありますか?

阿部 祐理子先生阿部先生

唾液の減少により、口内に汚れ(プラーク・歯石)が停滞しやすくなります。また、ドライマウスの状態が長く続くと口臭が強くなるほか、「味が感じられない」といった味覚障害を引き起こすこともあります。

編集部編集部

以上のような特徴をふまえ、糖尿病の方がお口トラブルを予防するうえで気をつけたいポイントを教えてください。

阿部 祐理子先生阿部先生

糖尿病に関係なく、むし歯や歯周病、口臭などのトラブルを防ぐうえでは、毎日の歯磨きで汚れをしっかり落とすことが肝心です。くわえて、歯科検診でむし歯・歯周病を管理していくことも重要になります。

編集部編集部

そのほかに、普段の生活で注意しておきたいことはありますか?

阿部 祐理子先生阿部先生

糖尿病の方はお口の中が乾燥しやすいため、水分補給をこまめに行うほか、乾燥が強い場合は「保湿ジェル」を併用していただくのも予防には効果的です。また、糖尿病は血糖値の値によって健康状態も大きく変化するため、普段から血糖のコントロールをしっかり行うことも、お口トラブルの予防につながるでしょう。

歯科検診で「治療が必要」と言われたら? 歯科治療を受ける際に注意したいポイント

歯科検診で「治療が必要」と言われたら? 歯科治療を受ける際に注意したいポイント

編集部編集部

糖尿病患者さんが歯科検診で「治療が必要」と言われたら、すぐに治療を受けることはできるのでしょうか?

阿部 祐理子先生阿部先生

血糖のコントロールが良好であれば、基本的には問題ありません。ただ、細菌に感染しやすい糖尿病の方の場合、抜歯やインプラント、歯周病治療などの外科処置についてはその時の状況をみて判断する必要があります。

編集部編集部

外科処置を含め、糖尿病の患者さんが安心して歯科治療を受けるために、どのような点を考慮すべきでしょうか?

阿部 祐理子先生阿部先生

糖尿病患者さんが問題なく歯科治療を受けられるのは、血糖値が正常である場合です。不安な場合は、かかりつけ医や歯科医師に相談してみましょう。

(参考) 日本歯周病学会「糖尿病患者に対する歯周治療ガイドライン 改訂第3版」

編集部編集部

血糖値が正常であれば、抜歯やインプラントも問題なく行えるのでしょうか?

阿部 祐理子先生阿部先生

抜歯に関しては問題ありませんが、術後の感染が心配されるケースでは事前に抗生物質の服用(術前投与)を行う場合もあります。インプラントに関しては治療自体に問題はないのですが、治療後の長期的な管理も視野にいれておかなければなりなりません。感染リスクが高い糖尿病患者さんの場合は、インプラントを入れた後にそれを長く維持できるかもよく検討していく必要があります。

編集部編集部

糖尿病患者さんが歯科治療を受ける際に、注意しておきたいポイントを教えてください。

阿部 祐理子先生阿部先生

まずは、自身が糖尿病であることを必ず担当歯科医に伝えていただきたいと思います。その際に「糖尿病連携手帳」など、これまでの病状の経過がわかるものがあれば一緒に提示してください。また、治療に際しては血糖値の変動を防ぐために空腹時はさけ、必ず治療前に食事を済ませておきましょう。

編集部編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

阿部 祐理子先生阿部先生

糖尿病は自身のみならず、ご家族や知人など身近な人にも多くみられる病気です。今回お話ししたように、糖尿病患者さんが歯科医院でお口の健康を維持することは、糖尿病の病状を安定させることにも大きく貢献しています。したがって、ご家族やご友人にもし糖尿病の方がいらっしゃる場合は、歯科検診に行ってみることをぜひおすすめしていただきたいと思います。

編集部まとめ

唾液の減少によりお口が乾燥しやすい糖尿病患者さんはむし歯・歯周病のリスクのほかに、口臭や味覚障害にも警戒が必要です。糖尿病患者さんの歯科検診はこれらのトラブルを予防できるだけでなく、歯周病の予防・改善が血糖のコントロールにも良い効果をもたらします。歯科医院を受診の際は自身が糖尿病であることを伝えたうえで、信頼できる「かかりつけ歯科医」のもと、お口の健康維持に努めていきましょう。

医院情報

武部歯科医院

武部歯科医院
所在地 〒762-0031 香川県坂出市文京町1-2-1
アクセス JR四国「坂出駅」徒歩3分
診療科目 歯科、口腔外科、小児歯科

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