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【致死率97%】世界中で「脳食いアメーバ」の被害拡大 脳を破壊する“怖すぎる病気”とは

 公開日:2024/09/16

インド南部ケララ州で、数カ月のうちに15人が「PAM(原発性アメーバ性髄膜脳炎)」に感染していることがわかりました。2023年5月には、アメリカ北部でもPAMの感染増加が指摘されており、今後も世界中で被害が広がる可能性が指摘されています。この内容について眞鍋医師に伺いました。

眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

”脳食いアメーバ“の被害とは?

インドなどで報告されている”脳食いアメーバ“の被害について教えてください。

眞鍋 憲正 医師眞鍋先生

今回のニュースで被害が取り上げられているPAMは、原発性アメーバ性髄膜脳炎という珍しい病気です。「フォーラーネグレリア」という微生物が原因で、脳細胞を破壊する特徴から“脳食いアメーバ”と呼ばれることもあります。CDC(アメリカ疾病予防管理センター)によると、PAM患者の97%以上が感染によって死亡しているとされ、アメリカで1962~2021年に感染した154人のうち、生存した人はわずか4人とのことです。

PAMの感染は、これまでに少なくとも39カ国で報告されており、毎年平均4.5%ずつ確認件数が増加しています。日本でも1996年に1例が報告されています。パキスタンでは毎年20人の死者が出る病気で、2024年に入ってからはインド、パキスタン、イスラエルでの感染が報告されています。インドのケララ州では、これまで年に1件程度だった感染報告が、今年はすでに15件報告されるなど急増しています。また、オーストラリア南西部やアメリカのグランドティトン国立公園にある温泉からも、フォーラーネグレリアが検出されています。

2023年5月にアメリカのカンザス大学の研究グループが「Ohio Journal of Public Health」で報告した研究によると、「フォーラーネグレリアは気候変動によって北方へ拡大しており、これまで確認されていなかった新しい地域でヒトの健康に対する脅威を増大させている」と記述されており、アメリカ北部への被害拡大が示唆されています。

脳食いアメーバがいる場所は?

PAMを引き起こす脳食いアメーバ(フォーラーネグレリア)は、どのような場所に潜んでいるのでしょうか?

眞鍋 憲正 医師眞鍋先生

フォーラーネグレリアは、未処理の温かい淡水や土壌、土ぼこりの中に生息しているとされています。フォーラーネグレリアによるPAM感染は、主に淡水の湖・池・温泉・貯水池で起きており、感染者はこうした場所で「水泳をする」「水をかける」「顔を水に浸す」といった行動をしていたこともわかっています。その一方、感染経路としての報告はそこまで多くはないものの、ホースの中でぬるくなった水や、一般家庭向けのウォータースライダー、水遊びができる噴水、個人の井戸から引いた水などからも感染したケースがあります。

フォーラーネグレリアは、汚染された水を介して人の鼻に入り、鼻粘膜を通過して嗅神経を辿って脳に到達すると、そこで平均5日間潜伏します。その後、PAMが発症します。前頭部の激しい痛み、発熱、吐き気、嘔吐などの症状が出た後に、幻覚や昏睡の症状が出て、やがて死に至ります。

脳食いアメーバの被害拡大への受け止めは?

「脳食いアメーバの被害が世界で広がっている」という指摘が、今回のニュースで明らかになりました。これまで1件しか確認されていない日本でも、被害が拡大する恐れがあるのでしょうか? 今回のニュースの受け止めを教えてください。

眞鍋 憲正 医師眞鍋先生

現状、日本で感染が拡大する可能性はかなり低いですが、長期で考えた場合はわかりません。地球温暖化に伴う水温の上昇や旅行・レジャー活動の増加により、感染のリスクが高まる可能性もあります。フォーラーネグレリアは温かい水で繁殖しやすいため、温暖化による水温上昇が感染の可能性を高める一因となります。さらに、被害拡大の報告がある地域では、水の安全性についての意識が高まっており、適切な予防策を講じることが重要です。

予防としては、淡水での水遊びや泳ぐ際、鼻に水が入らないよう注意すること、特に温かい水での接触を避けることが推奨されます。また、ろ過されていない水を使用する際は、浄水器を通すか煮沸消毒することで感染リスクを減らすことができます。

まとめ

インド南部ケララ州で数カ月のうちに15人がPAM(原発性アメーバ性髄膜脳炎)に感染しているなど、世界的にPAMの被害が広がっている可能性が今回のニュースで明らかになりました。これまで日本では1件しか確認されていませんが、こうした病気があるということを知っておくことは、身を守るために重要です。

この記事の監修医師