【大人も注意】流行中の「マイコプラズマ肺炎」厄介な特徴とは? 長い潜伏期間から“歩く肺炎”とも…
国立感染症研究所は2024年8月20日、マイコプラズマ肺炎の1医療機関あたりの患者の報告数が1.14人と発表しました。マイコプラズマ肺炎の感染者数は過去10年で最多ペースとなっており、注意が必要な状況です。このニュースについて中路先生に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
マイコプラズマ肺炎の感染状況とは?
今回、ニュースで取り上げられたマイコプラズマ肺炎の感染状況について教えてください。
中路先生
マイコプラズマ肺炎の感染状況については、2024年8月20日に国立感染症研究所が2024年8月5〜11日の速報値を発表しており、1医療機関あたりの患者の報告数は全国平均で1.14人と、6週連続で増加していることがわかりました。昨年の同時期と比べて、57倍の患者数になります。また、過去10年で最多ペースとなっています。
1医療機関あたりの患者の報告数が最も多かったのは大阪府で、3.72人でした。次いで福井県で3.5人、岐阜県で3.2人、佐賀県で2.33人、東京都で2.12人と続いています。
マイコプラズマ肺炎とは?
過去10年で最多ペースの感染状況になっているマイコプラズマ肺炎ですが、どのような病気なのでしょうか?
中路先生
マイコプラズマ肺炎は、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することで発症する呼吸器の感染症のことです。報告された感染者の8割は14歳以下ですが、成人の感染報告もあります。マイコプラズマ肺炎は、周期的に大流行を起こすことが知られており、日本では4年周期での流行が報告されています。
マイコプラズマ肺炎は、感染者が咳をした際のしぶきを吸い込むことや、感染者との接触によって感染します。感染してから発症するまでの潜伏期間は2~3週間と長いことが特徴で、感染に気づかないうちに出歩き、人にうつしてしまうケースが多いという理由から「歩く肺炎」とも呼ばれています。発症すると発熱や全身の倦怠感、頭痛、咳などの症状がみられます。また、熱が下がっても、咳が長引く傾向にあります。
マイコプラズマ肺炎の治療には、抗生物質やマクロライド系などの抗菌薬が用いられます。ただ、最近は抗生物質が効かない耐性菌も増えてきています。マイコプラズマ肺炎の感染を防ぐためには、普段から手洗いをすることが大切とされています。
マイコプラズマ肺炎の感染状況への受け止めは?
マイコプラズマ肺炎の感染状況が過去10年で最も多いペースとなっていますが、こうした状況への受け止めを教えてください。
中路先生
今回の感染の流行の背景には、新型コロナウイルスが5類に移行してから初の感染対策の緩和による社会活動の再開と、マイコプラズマ肺炎の4年に一度(オリンピックの年)の感染流行の波が重なった可能性が考えられます。前回の流行の年は、コロナ禍の感染対策がなされていたため、流行しなかった可能性があります。今後、夏休みの期間が終わって集団生活が始まることで、さらなる感染拡大が懸念されます。また、大人の家庭内感染や施設内での集団感染にも注意が必要です。マスクの着用や手洗いなどの基本的な感染対策を見直すことが重要であると考えられます。
まとめ
国立感染症研究所は2024年8月20日、マイコプラズマ肺炎の1医療機関あたりの患者の報告数が1.14人と発表し、過去10年で最多ペースとなっていることがわかりました。手洗いやうがい、必要な場所でのマスクの着用など、自身でできる感染症対策が重要になります。