「手足口病」に「プール熱」まで…今年の夏は新型コロナだけじゃない “感染症ドミノ”に警戒を
「新型コロナウイルス」や「手足口病」などの感染症が広がっている中、厚生労働省は有識者を集めたヒアリングを実施しました。このニュースについて、中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
厚生労働省が実施したヒアリングの内容とは?
厚生労働省が有識者におこなった感染症に関するヒアリング内容について教えてください。
中路先生
厚生労働省はこれまで、専門家で構成された助言機関から新型コロナウイルスの感染状況や対策の意見を得ていました。しかし、この助言期間が2023年度末に廃止されたため、2024年7月22日にヒアリングの場が設けられました。ヒアリングの出席者は、新型コロナウイルスの感染者が大幅に増えている沖縄県などの医療機関で、入院調整が必要になっている現状を共有しました。また、解熱鎮痛薬などの不足や、流行地域の半分程度の高齢者施設で感染者が出ている情報も出ました。
新型コロナウイルスの治療費については、2024年4月から公費支援が受けられないので、軽症・中等症用の抗ウイルス薬を使用する場合は自己負担が3割の患者は1万5000円~3万円を支払うことになっています。この費用負担について、出席した有識者から負担軽減策の検討を求める意見が出ました。また、国立感染症研究所からは、感染の主流となっているオミクロン株の新系統「KP.3」について「リスクが高まっているという知見はない」との報告もありました。
新型コロナウイルス以外には、幼い子どもを中心に手足などに発疹ができる手足口病や、プール熱(咽頭結膜熱)などの感染者数が増加傾向にあることも共有され、手洗いやタオルの共有禁止などの注意喚起がなされました。
今回のヒアリングについて、武見厚生労働大臣は「施策に活かすべく、ヒアリングを実施した。先々の感染状況を見据えて迅速かつ適切に感染対策をおこない、この夏の感染症対策に万全の体制で臨みたい」とコメントしています。
新型コロナウイルスなどの感染状況は?
今回実施されたヒアリングで、新型コロナウイルスの感染状況に対する注意喚起されましたが、現状について教えてください。
中路先生
2024年7月15日~7月21日までの1週間に、全国およそ5000の医療機関から報告された新型コロナウイルスの患者数は、前週から1万2262人増加して6万7334人となりました。また、1医療機関あたりの平均の患者数は13.62人で、前週の1.22倍となりました。11週連続で前週より増加しており、注意が必要な状況です。
都道府県別に1定点あたりの患者数を分析すると、佐賀県が31.08人と最も多くなっています。次に多くなったのが宮崎県で29.72人、次いで鹿児島県で27.38人、熊本県で27.13人、大分県で24.02人などとなっており、45の都道府県で前週より増加しています。
また、ヒアリングで感染者の増加が指摘された手足口病は、2024年7月15日~2024年7月21日までの1週間で新たに3万6797人が感染しました。ただし、前週から5213人減っています。1医療機関あたりの報告数は11.72となり、12.3%の減少となります。
現在、流行している感染症の感染状況への受け止めは?
この夏、流行している感染症の感染状況への受け止めを教えてください。
中路先生
医療現場からは、新型コロナウイルスの治療薬の自己負担額が3割負担でも1万5000円~3万円かかることから、処方件数が下がっているという報告があります。今後、感染のピークを迎えるにあたって、高齢者など高リスク群の自己負担額を下げるなどの国の支援策が求められると考えます。
まとめ
複数の感染症が広がっている今夏、厚生労働省は有識者を集めたヒアリングをおこないました。今回実施されたヒアリングで指摘されたように、新型コロナウイルスだけではなく、手足口病やプール熱の感染者数も増えているので、感染動向には今後も注意が必要です。