新型コロナワクチン「定期接種」10月1日を目途に開始 “自分を守るために”接種の検討を
厚生労働省は、新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、10月1日を目途に接種を開始する方針を決めました。この内容について、小幡医師に伺いました。
監修医師:
小幡 史明(医師)
厚生労働省が決めた方針とは?
厚生労働省が決めた新型コロナウイルスのワクチン接種の方針について教えてください。
小幡先生
2024年3月までは新型コロナウイルスワクチンを無料で接種できましたが、秋からはインフルエンザと同様に原則として接種費用の一部自己負担が求められる定期接種となります。この定期接種の時期はこれまで検討が重ねられてきましたが、厚生労働省は2024年10月1日を目途にワクチン接種を開始する方針を決めたとのことです。この方針をもとに自治体ごとに接種開始日を決め、2025年3月末までの間で接種期間を設定されることになります。接種する際の自己負担額は自治体によって変わりますが、最大7000円となるように国が接種1回あたり8300円を各地の自治体に助成することになります。
今回の定期接種は、65歳以上の高齢者、60~64歳の重症化リスクが高い人が対象となります。それ以外の人がワクチンを接種する場合は任意接種となるので、原則として金額は自己負担となります。なお、今回決まった方針は、専門家による会議を経て正式に決定されることになります。
新型コロナウイルスの医療費の現状は?
今回のニュースで、新型コロナウイルスワクチンの定期接種の開始時期が2024年10月1日を目途に開始する方針が決定しました。実際、新型コロナウイルスに感染した際の治療体制については、現在どのような対応がなされているのでしょうか?
小幡先生
新型コロナウイルスの予防について、新型コロナウイルスワクチンは2024年3月まで全額公費負担、つまり無料で接種を受けることができました。しかし、2024年4月からはインフルエンザと同じように、原則接種費用の一部自己負担が求められる定期接種に変わりました。
新型コロナウイルスの医療費を巡っては、2021年から治療薬を全額公費で負担をしていましたが、2023年5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ5類に移行したことを受けて、2023年10月に治療薬は所得に応じて3000~9000円の自己負担となりました。そして、2024年4月からは公費負担を全廃しています。
新型コロナウイルスに対する治療薬は、窓口負担の割合に応じて1~3割の支払いを求められることになります。重症化リスクがある人向けの「ラゲブリオ」は、窓口負担3割の人で約2万8000円となります。また、軽症や中等症向けの飲み薬である「ゾコーバ」は、3割負担の人で約1万6000円となります。入院患者向けに使われる点滴薬「ベクルリー」は、3割負担だと約5万6000円です。
厚生労働省が決定した方針への受け止めは?
厚生労働省が決めた方針について受け止めを教えてください。
小幡先生
2024年4月以降は公費負担が全廃され、治療薬の窓口負担が1割から3割に引き上げられることになりましたが、この方針転換について一定の理解はできます。新型コロナウイルスが流行初期ほど深刻な状況ではなくなってきたことを踏まえれば、公費負担を段階的に縮小し、個人の自己負担を増やしていくのは妥当な対応だと考えられます。
ただし、重症化リスクのある人や低所得者層への配慮も重要であると感じます。ラゲブリオやゾコーバなどの治療薬について、3割負担では患者の経済的負担が大きくなる可能性があります。特に、重症化リスクの高い人たちが必要な治療を受けられなくなるようでは本末転倒です。そのため、重症化リスクの高い人や低所得者層に対する公費負担の継続、窓口負担の軽減措置の検討など、患者側の経済的負担を最小限に抑える取り組みが求められます。また、新型コロナウイルスの感染動向を注視しつつ、必要に応じて公費負担の復活や自己負担割合の見直しなど、柔軟な対応も検討すべきだと考えます。
総じて、新型コロナウイルス対策の方針転換に一定の理解はできますが、患者側の経済的負担軽減と感染症対策の両立が重要だと受け止めています。厚生労働省には、この点に十分配慮した対応を期待したいと思います。
まとめ
厚生労働省は、新型コロナウイルスワクチンの定期接種について、10月1日を目途に接種を開始する方針を決めました。定期接種の対象は、65歳以上の高齢者、60~64歳の重症化リスクが高い人です。それ以外の人がワクチン接種をする場合は原則自己負担となるので、注意が必要です。