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糖質制限・脂質制限、がん死亡リスクなど高める恐れ 名古屋大学ら研究グループ示唆

 公開日:2023/08/02
糖質・脂質制限 死亡リスク上げる恐れ

名古屋大学らの研究グループは、「男性の低炭水化物摂取や女性の高炭水化物摂取が全死亡リスクとがん死亡リスクを上昇させ、女性の高脂質摂取は全死亡リスクを下げる可能性が示唆された」と報告しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

名古屋大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回の研究は、名古屋大学らの研究グループが実施したものです。研究グループらは、J-MICC STUDYのベースライン調査(第1回目調査)参加者のうち、がんおよび心血管疾患の既往歴を持たない男性3万4893例と女性4万6440例を対象に、炭水化物・脂質摂取量と死亡リスクとの関連を調査しました。

エネルギー比率50%以上55%未満を基準群として、男性の炭水化物摂取量と死亡リスクとの関連を調べた結果、エネルギー比率40%未満の低炭水化物摂取群は全死亡リスクが1.59倍、がん死亡リスクが1.48倍となりました。エネルギー比率45%以上50%未満の中程度の低炭水化物摂取群では、基準群に対し循環器疾患死亡リスクが2.32倍でした。

女性の炭水化物摂取量と死亡リスクとの関連を調べた結果、炭水化物摂取の死亡リスクへの影響は一定でなく、時間の経過とともに変化しました。そこで、追跡期間を中央値の約半分である5年で区切って分析した結果、追跡期間が5年以上のとき、エネルギー比率50%以上55%未満の基準群に対して、65%以上の高炭水化物摂取群で全死亡リスクが1.71倍、がん死亡リスクも同等でした。一方で追跡期間が5年未満では、同45%以上50%未満の低炭水化物摂取群と60%以上の高炭水化物摂取群で循環器疾患死亡リスクが上昇し、それぞれ4.04倍と3.46倍でした。

男性の脂質摂取量と死亡リスクの関連を調べた結果、エネルギー比率20%以上25%未満の基準群に対して、35%以上の高脂質摂取群でのがん死亡リスクは1.79倍となり、循環器疾患死亡リスクは脂質摂取量に比例して上昇したとのことです。

研究グループは「長期的な生命予後への影響を考えると、極端な低炭水化物食や高炭水化物食、脂質摂取の過剰な制限といった食習慣は見直すべきだ」と指摘しています。

今回の発表内容の受け止めは?

名古屋大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

これまで欧米では、炭水化物や脂質の摂取と死亡リスクについての研究が数多くおこなわれてきました。その一方で、食生活の異なる日本人についてのこれらの研究は、これまで実施されていませんでした。今回、名古屋大学の研究グループがおこなった研究は、この点で高く評価されると考えます。最も興味深いことは、糖質・脂質制限と死亡リスクに性差(男女差)があることです。また、今回の結果は「ローカーボダイエット」や「脂質制限」などの極端な食事習慣を見直す契機となる可能があります。何事もバランスが重要です。

今後の追加研究への期待感は?

今後、追加研究を目指すことになりますが、期待感について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

さらなるJ-MICC STUDYの追跡調査により、日本人一般集団での結果の再現よりも高いレベルのエビデンスの構築やこれらの機序の解明が期待されるでしょう。

まとめ

名古屋大学らの研究グループが、「男性の低炭水化物摂取や女性の高炭水化物摂取が全死亡リスクとがん死亡リスクを上昇させ、女性の高脂質摂取は全死亡リスクを下げる可能性が示唆された」と報告したことが今回のニュースで明らかになりました。今後おこなわれる追加研究にも注目が集まりそうです。

この記事の監修医師