乳がんの遺伝子検査、12月から公的医療保険の対象に

公開日:2021/11/20  更新日:2021/11/19

乳がんの遺伝子検査「オンコタイプDX」について、厚生労働省は公的医療保険の対象とすることを決め、12月1日に保険適用されることになりました。このニュースについて前田医師に伺いました。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

乳がんの遺伝子検査の現状は?

まず、乳がん治療における遺伝子検査について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

大きく分けて、乳がんの遺伝子検査をおこなう目的は3つあります。

まずは「遺伝性乳がん卵巣がん症候群」といって、遺伝的に乳がんになりやすい人を見つけるために検査します。これは、BRCA1,2という遺伝子の変異が主に関係しており、この遺伝子変異はがんのあるなしに関わらず200~500人に1人がもっているとされています。正確な頻度は不明ですが、日本ではおこなわれる機会は少ない検査です。

次に、乳がんを罹患(りかん)している人が治療に使う薬を決めるための検査があります。HER2というタンパク質をみる検査で、乳がんの組織を採取して検査されます。陽性の場合、HER2を標的とした薬を使用することで大幅にがんを小さくする効果や生存期間を伸ばせることがわかっており、全ての乳がんの人におこなわれる大変重要な検査です。

そして3つ目が、今回保険適用となった抗がん剤の効果と乳がんの再発を予測するための複数の遺伝子を対象とした検査です。

オンコタイプDXとは?

12月から保険適用されることが決まった「オンコタイプDX」とは、どのような検査なのでしょうか?

前田 裕斗 医師前田先生

乳がんの手術以外の治療法には、放射線治療や女性ホルモンを抑える治療、先述したHER2などを対象とした特別な薬や、抗がん剤などがあります。オンコタイプDXは、乳がんのうち女性ホルモンを抑える治療が有効で、HER2タンパクが陰性の乳がんについて、再発リスクだけでなく抗がん剤を治療として使う効果があるかどうかを判定する検査です。

21種類の遺伝子を検査し、9年以内の再発リスクと、抗がん剤を治療に追加することでどのくらい再発や死亡リスクが減るかを予測します。検査の結果は、再発スコアとして0~100の数値で点数化され、「18未満は低リスク」、「18以上31未満は中間リスク」、「31以上は高リスク」と分類されます。

再発スコアの結果から低リスクや一部の中間リスクの患者さんは、抗がん剤治療をおこなわずに女性ホルモンを抑える治療のみをおこなうなど、患者さんに合わせた治療計画を立てる助けとすることができます。また、これまでは保険適用されていなかったため、約45万円と高額な費用がかかってしまっていました。

保険適用によって期待できる効果は?

オンコタイプDXが保険適用されることで期待できる効果を教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

オンコタイプDXを利用する最大のメリットは、検査の対象となる人で抗がん剤を使うかどうかを適切に判断できることです。

オンコタイプDXの有効性を確かめた試験では、再発スコア25を超えた人は女性ホルモンを抑える治療のみと比べて抗がん剤を加えることで、12年後に乳房以外の場所での再発が26%低下した一方で、再発スコア25以下の人では抗がん剤を加えた場合でも再発率は変わらなかったと報告されました。

再発スコアが25以下となる人は全体の80%とされており、オンコタイプDXを利用することで、検査の対象となる人の80%が抗がん剤を回避できる可能性が示唆されました。抗がん剤は身体に対する負担に加えて経済的な負担も大きいことから、できれば回避したい患者さんも多いと思います。そうした患者さんにとってはよいニュースと言えるでしょう。

ただし、全ての乳がん患者が対象となるわけではないので、対象となる条件については治療を受けている医師に尋ねてみてください。

まとめ

乳がんは女性の9人に1人がなるとも言われており、国立がん研究センターの統計では、2018年の1年間に新たに乳がんと診断された女性は9万人余りとなっています。オンコタイプDXが12月から保険適用されることで、抗がん剤治療が必要かどうかの判断材料を容易に得られることは全ての女性にとって重要なことと言えそうです。