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【動画付き】「乳がんは遺伝することがある」これって本当?

 更新日:2023/03/27

乳がんと遺伝の関係性について、耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。ピンクリボンブレストケアクリニック表参道の島田先生によると、「遺伝により発生する乳がんがあります」とのこと。自分が乳がんになりやすい体質なのか調べる検査や予防法について、伺いました。また、自分が乳がんになってしまった場合、子どもにどう伝えるべきかも、知りたいところです。

島田 菜穂子

監修医師
島田 菜穂子(ピンクリボンブレストケアクリニック表参道 院長)

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筑波大学医学専門学群卒業。筑波大学附属病院、東京逓信病院放射線科で、乳腺外来開設。1998年アメリカワシントン大学ブレストヘルスセンター勤務、2005年イーク丸の内副院長を経て、2008年にピンクリボンブレストケアクリニック表参道を開設。診療の傍ら、乳がん啓発や診療環境の改善を目指し、2000年に認定NPO法人乳房健康研究会を発足、ピンクリボン活動を日本で始動。ピンクリボンウオークの開催や講演、出版、ピンクリボンアドバイザーの教育などをおこなっている。日本医学放射線学会放射線専門医、日本乳癌学会乳腺専門医、日本がん検診・診断学会認定医、認定スポーツドクター、認定産業医などの資格を有する。東京2020オリンピック聖火ランナーも務める。

血縁に乳がんの人がいる場合は注意

血縁に乳がんの人がいる場合は注意

編集部編集部

「乳がんは遺伝することがある」というのは、本当なのですか?

島田先生島田先生

そうですね。身内に乳がんの発症がある場合は、乳がんの発症のリスクは確実に上がります。

編集部編集部

身内に乳がんの人がいるというのは、どのくらいの近さまで気をつけた方がいいのでしょうか?

島田先生島田先生

第1度近親者(母、姉妹、子)はもちろん、第2度近親者(祖母、孫、おば、姪)に乳がんの人がいる場合は、乳がんの発症リスクが1.3〜2倍になると言われています。遺伝的に近いほど、また人数が多いほどリスクは増加するため注意が必要です。

編集部編集部

そういう人は、どのように注意をしたらいいのでしょうか?

島田先生島田先生

遺伝子の異常により乳がんになる人は、発症年齢が通常より若いのも特徴です。そのため、自治体などの検診年齢を待つのではなく、身内で乳がんになった方の発症年齢マイナス10歳くらいの年齢になったら、乳腺クリニックなどでかかりつけ医を持ち、リスクに合わせた定期的な乳がんの検診を受けることが大切です。

BRCA遺伝子に異常があると乳がん発症のリスクが高い

BRCA遺伝子に異常があると乳がん発症のリスクが高い

編集部編集部

遺伝子的に乳がんになるとは、どのようなことなのでしょうか?

島田先生島田先生

BRCA1BRCA2という遺伝子に異常がある場合、70歳までの発症リスクは50%と言われており、かなりの頻度で乳がんになります。また、この遺伝子に異常があると卵巣がんの発症も高率であることが分かっています。前立腺がんや膵臓がんなどのリスクも上がります。これらのがんの発症を予防する遺伝子がBRCA1あるいはBRCA2で、この遺伝子に異常が起きることでがんが発症しやすくなるという仕組みです。

編集部編集部

この遺伝子に異常があるかどうかは、どうやったらわかるのですか?

島田先生島田先生

血液検査で調べることができますが、今のところ日本では、すでに乳がんなど病気を発症している人でないと保険適用されません。すでに乳がんの人は保険適用で調べることができ、もしこの遺伝子を持っている場合は、もう片側の乳房も乳がんになる可能性が高くなります。また、卵巣がんのリスクも高いことから病気になる前の、予防切除を勧められる場合があります。この予防切除に関しても2020年に保険適用になりました。ただ、まだ病気になっていない方は保険適用で遺伝子検査や予防切除を受けることはできないため、それを希望する場合は、自費で検査や手術を受けることになります。

編集部編集部

もし、BRCA遺伝子に異常があるとわかったら、どうしたらいいのでしょうか?

島田先生島田先生

日本ではこの遺伝子検査を受ける前に必ず遺伝カウンセリングを受け、そのうえで検査をおこなうことになっています。本当に遺伝子情報を知りたいか、もし異常があったらどうするか、身内に伝えるかなどをあらかじめいろいろ想定し、様々な情報を理解し、心の準備も整えて検査を受けることになります。遺伝子異常があった場合は、積極的な予防策としての乳房や卵巣の予防切除という選択肢もありますが、もちろん予防切除は必須ではなく、個々の価値観でおこなうべき対処は変わってきます。なるべく早く発見する努力を選択する方も多くいます。一番大切なのは、正しい情報をしっかり理解し、それぞれ自分にとっての最も納得できる方法を選ぶことです。

子どもと乳がんについて話すことも大切

子どもと乳がんについて話すことも大切

編集部編集部

今までのケースに当てはまる場合、どれくらいの頻度で検査をおこなえばよいのでしょうか?

島田先生島田先生

基本的に通常のリスクの方には、年に1回の検査をおすすめしています。しかし、BRCA遺伝子に異常がある方は、25歳から開始し、半年~1年に1回の画像診断による検診を推奨します。検査方法には特に25~30歳の若年には検査による被ばくなどを避けるためMRI検査もおこなわれます。体の負担にならない方法を、年齢や乳房のコンディションにあった検診の計画を乳腺科の先生と相談しながら進めるとよいでしょう。

編集部編集部

乳がん予防のために、なにかできることはありますか?

島田先生島田先生

喫煙は乳がんに限らず、がんになるリスクを上げるので推奨できません。アルコールも過度の飲み過ぎは、体に悪影響です。毎日飲んだり、過度な量を飲んだりすることは控えましょう。肥満もホルモンバランスに影響を与えるため、閉経後は特に注意が必要です。また、週に1時間以上の運動習慣は、乳がん発症のリスクが下がることが分かってきました。肥満予防にもいいと思いますので気持ちよく続けられる運動を心掛けてみましょう。

編集部編集部

もし自分が乳がんで子どもがいる場合、気をつけてあげられることはありますか?

島田先生島田先生

必要以上に怖がることはありませんが、小さい頃から乳房に対する意識(ブレスト・アウェアネス)を高める習慣をつけましょう。女の子は初潮の始まる前後から、胸が膨らみ始めます。その頃から乳房の発達の仕組みや、乳房の働きなどに加え、徐々に胸のセルフチェックの仕方や、20歳になったら乳がん検診を受けることの重要性などを、教えてあげるといいと思います。BRCA1遺伝子の異常では、卵巣がんになる確率も高くなります。例えば将来、卵巣を取ることになるかもしれないことを踏まえ、子どもを産む年代のプランを立てるなど、人生設計について若い頃から話すことも重要かもしれません。

編集部編集部

最後に、乳がんの遺伝で悩んでいる方へ、メッセージをお願いします。

島田先生島田先生

全国の病院には“遺伝カウンセラー”と呼ばれる人がいます。遺伝子検査の前に必ず遺伝カウンセラーとしっかりお話をすることになりますが、もし遺伝子の異常が見つかった場合、検査の後もカウンセラーに相談することができます。どのような予防治療を受けるか、受けないという選択肢を取るかなど、選ぶのは自分自身。それも含め、いろいろと相談してみるといいと思います。状況をわかってくれる人が側にいると、とても安心ですよ。

編集部まとめ

身内に乳がんがいる場合、特に2名以上や40歳未満の場合、両側乳がんなどを発症した身近な親族がいる場合は、遺伝子異常の可能性が高いということでした。この場合、他の方よりも注意が必要で、まずは乳腺クリニックなどで乳房の主治医をもつこと。そして、自分に必要な検診を定期的に受けることが大切。予防としてできることもあるので、不安に思う人は一度先生に相談してみるとよいでしょう。

医院情報

ピンクリボンブレストケアクリニック表参道

ピンクリボンブレストケアクリニック表参道
所在地 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前4-3-13 エムズクロス神宮前2F
アクセス 都営地下鉄「表参道」駅より徒歩1分
診療科目 乳腺科、乳腺放射線診断科、婦人科

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