【闘病】『乳がん』宣告と終わらない治療の日々… 一児の母が痛感した健康と備えの後悔

ある日、右胸上部にしこりがあることに気付き、病院で検査を受けて乳がんが発覚した飛田さん。子育て中ということもあり、入院や金銭面での不安を抱えながら右胸の全摘出手術を決断したそうです。抗がん剤治療中の彼女に、これまでの歩みを聞きました。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2025年10月取材。

体験者プロフィール:
飛田照視さん
右胸上部のしこりの正体は乳がんだった

編集部
飛田さんが病院にかかることになったきっかけを教えてください。
飛田さん
2025年4月ごろ、右側の鎖骨の少し下あたりにしこりがあることに気付き、「何だかコリコリするな。胸と鎖骨の間だし胸じゃないよね?」と思いながらインターネットで調べると、「動くしこりは良性だ」と書いてありました。しばらく放置していましたが、5月半ばになってやはり気になり、何もなければ安心だと思い受診しました。
編集部
乳がんと診断されるまでにどのような検査をしましたか?
飛田さん
受診時にしこりがあることを伝えると、すぐにマンモグラフィ検査を受け、先生にエコーで診てもらいました。すると、その場で先生に「悪性腫瘍の可能性が高く、すぐに細胞を取って精密検査に回します」と伝えられ、太めの注射器をしこりに直接刺して、細胞を取る検査をしてもらいました。バチンという大きな音が何度かして驚きましたが、麻酔をしていたので痛みはありませんでした。10日後に検査結果が出たところ、乳がんだったのです。
編集部
医師からは病気についてどのような説明がありましたか?
飛田さん
「ルミナールHER2タイプの乳がん(女性ホルモンの刺激と、HER2というタンパク質から出される刺激で、細胞が増えるタイプの乳がん)なので「手術、ホルモン剤、抗HER2薬(HER2を狙い撃ちする分子標的薬)、化学療法(抗がん剤)での治療になる」という説明を受けました。そして、「おそらくステージ1なので、頑張って治していきましょう」とも言われました。
編集部
病気が判明した時の心境を聞かせてください。
飛田さん
ポカンとした感じであまり実感はありませんでした。「子どもがまだ小さいので入院時はどうしようか?」ということと「お金がいっぱいかかるから、保険に入っておけばよかったな」という経済的な不安が大きかったですね。
治療中の後悔

編集部
どのような治療を受けましたか?
飛田さん
まず右胸の全摘手術を受けました。先生には「おそらくステージ1だから部分切除して、放射線治療と抗がん剤治療でいけると思う」と言われていたものの、今後の生活で右胸に痛みが出たり、違和感がある度に再発の不安を抱えたりすることが怖くて、全部取ってもらうようにお願いしました。手術の結果、幸いリンパまでは転移していませんでした。ただ、「ステージ2で顔つきが悪い(再発しやすく進行が早い)細胞だった」と伝えられ、術後1カ月から抗がん剤治療が始まったのです。私の場合、「エピルビシン(抗がん剤)+シクロフォスファミド(抗がん剤)4回、ドセタキセル(抗がん剤)+トラスツズマブ(抗HER2薬)+ペルツズマブ(抗HER2薬)4回、トラスツズマブ+ペルツズマブ14回を3週間ごとに投与する」とのことでした。ホルモン治療に関しては、「5年かかる」と伝えられました。
編集部
治療の中に後悔していることなどありますか?
飛田さん
抗がん剤治療で、さまざまな薬剤を注入するために胸の皮膚の下にCVポート(薬剤の投与や栄養補給を長期間、安全かつ確実に行うために、皮膚の下に埋め込む小さな医療機器)を埋め込みました。ただ、首やポート部分に違和感があり、思っていたより傷ができていることに気分が落ち込みました。しっかり事前の説明を聞いて、分からないことはもっと詳しく聞けばよかったと少し後悔しています。当初は、「簡単な手術」と聞いていたものの、部分麻酔での手術のため、「圧迫感があっても動いてはダメ」など制約が多く、とてもきつかったですね。ポートの埋め込みを考えている人は、納得がいくまで医師の説明を聞くことをおすすめします。
編集部
病気になって、つらかったことや大変だったことを教えてください。
飛田さん
まずは手術による右胸の全摘。次に抗がん剤治療による脱毛や体調不良などの不調です。あとは自分の体調不良が原因で夏の間、子どもをどこにも遊びに連れて行ってあげられなかったことが、何よりも悲しかったですね。
編集部
抗がん剤治療を続けている飛田さんにとっての心の支えは何ですか?
飛田さん
主人と子ども、そして友人たちが支えになっています。主人は家事を手伝ってくれますし、まだ小さい子どもは私をヨシヨシとなでてくれます。友人たちは、お金を集めて医療用帽子などをプレゼントしてくれて……本当にいろいろなことが励みになっています。
病気になって初めて気付くこと

編集部
現在の体調や生活について教えてください。
飛田さん
抗がん剤治療後の10日間ほどは、とても体調が悪くなります。期間中は体のだるさ、吐き気、めまい、頭痛、皮膚のかぶれやただれ、少し動くと息切れするなどの症状が出ています。それに加えて、副作用を抑えるために大量の飲み薬を服用しなければいけません。苦痛ですが、勤め先が病気や副作用を理解してくれるおかげで副作用が治まっている間はアルバイトもできています。「無理はせずに」という感じで、元気な期間だけシフトを入れてもらっています。
編集部
医療従事者に期待することはありますか?
飛田さん
私は30年前、父を膵臓がんで亡くしています。当時は抗がん剤治療の副作用により起き上がることもできず、記憶の乱れもあって――はっきりいって悲惨な思い出ばかり残っています。今、自分が抗がん剤治療を受けるに当たり、もちろん大変なことはたくさんあります。でも、私は父のような状態にはなっておらず、「医学は日々進歩しているのだな」と実感しています。これからもがんだけでなく、いろいろな病気に効く薬や治療法をもっと見つけていってほしいですね。
編集部
最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。
飛田さん
病気になって、あらためて身近な人たちの大切さ、経済的な不安、思うように動かない体の不自由さなどを感じました。健康はお金で買えない大切なものだと心の底から思います。乳がんは、早期発見できれば治療の選択肢が広がる病気になってきています。少しでも体に異変を感じたら、納得がいくまで何度でも病院に行って調べてもらってほしいと思います。そして、いざ病気になると困るのは経済面です。今回の経験で「ちゃんと保険に入っておけば……」と強く思いました。抗がん剤治療の影響で思うように働けないのに、治療費は毎月何万円もかかっています。普段から備えておくことが大切だと痛感しました。
編集後記
しこりに気付いても、最初は自己判断で病院へ行かない選択をした飛田さん。似たような経験をした人もいるのではないでしょうか? この記事を読んで、一人でも多くの人が早めの受診と定期検査に足を運んでもらえたらうれしく思います。
本稿には特定の医薬品、医療機器についての記述がありますが、情報提供のみを目的としたものであり、医療上の助言や販売促進などを目的とするものではありません。
なお、メディカルドックでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

記事監修医師:
寺田 満雄(名古屋市立大学病院乳腺外科)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

