発症率が高い「悪性リンパ腫」の初期症状と”6つの種類”を医師が徹底解説!
公開日:2025/12/12

悪性リンパ腫は血液のがんの1つです。白血球の1種であるリンパ球ががん化することで発症します。 悪性リンパ腫は種類は多岐にわたり、血液に発生するがんのなかでも発症頻度の高い疾患です。本記事では悪性リンパ腫の種類・進行速度・治療法について解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。
目次 -INDEX-
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫は、血液中のリンパ球ががん化した発症率の高い血液腫瘍です。悪性リンパ腫は発症リスクの高いタイプから稀なタイプまで種類が多岐にわたり、一般的にはリンパ節や脾臓および扁桃腺などのリンパ組織に発生します。全身に転移する可能性も否定できません。発症する部位や発症した悪性リンパ腫の種類によって進行速度・症状・治療方法が異なることが特徴です。
早期発見と早期治療を受けられれば、根治できるタイプもあります。
悪性リンパ腫の種類
さまざまな種類がある悪性リンパ腫は、大きく6つに分類されます。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
血液細胞は骨髄にある造血幹細胞からつくられます。造血幹細胞は増殖しながら、未熟な細胞が成熟した細胞に変化していく分化を経て、骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に成長します。骨髄系幹細胞は以下のとおりです。
- 赤血球
- 白血球(顆粒球・単球)
- 血小板
- 首・脇の下・足の付け根にしこり
- 発熱
- 体重減少
- 大量の寝汗
- 水腎症
- むくみ
- 麻痺
慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫は、B細胞ががん化する疾患です。がん化したB細胞は血液や骨髄で存在しますが、リンパ節・肝臓・脾臓でもみられることがあります。小リンパ球性リンパ腫は、慢性リンパ球性白血病と同じ疾患で、診断される条件は以下のとおりです。
- がん化したB細胞がリンパ節に多くみられる
- 血液中にがん化したB細胞はみられないか
- B細胞が少数だけみられる
これらの症状がみられたら、速やかに病院で検査を受けることをおすすめします。
濾胞性リンパ腫
濾胞性リンパ腫(ろほうせい)もB細胞ががん化する疾患です。- 首・脇の下・足の付け根にしこり
- 胸やお腹のなかに腫れ
病気が進行するとB症状が現れ、症状が進行すると、水腎症・むくみ・麻痺などにつながる可能性があります。
MALTリンパ腫
MALTリンパ腫もB細胞ががん化し、粘膜に影響する疾患です。MALTリンパ腫と似た疾患には、リンパ形質細胞リンパ腫・マントル細胞リンパ腫・バーキットリンパ腫などがあります。
MALTリンパ腫はほかの悪性リンパ腫と同様に、B症状や圧迫症状が現れることが一般的です。
成人T細胞白血病リンパ腫
成人T細胞白血病リンパ腫は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染で起こる病気です。HTLV-1がT細胞に感染し、がん化した細胞が増殖して発症します。しかし、HTLV-1の感染と成人T細胞白血病リンパ腫の発症はセットではありません。HTLV-1の感染者が、生涯のうちに成人T細胞白血病リンパ腫を発症する確率は2〜5%程です。
感染ルートは、授乳による母子感染と性行為です。発症すると以下のような症状がみられます。
- 全身のリンパ節が腫れる
- 皮膚に発疹や腫瘤が現れる
- 下痢や便秘
- 頭痛
- 倦怠感
- 意識障害
皮膚のリンパ腫
皮膚のリンパ腫は、皮膚組織のリンパ球ががん化したものです。皮膚がんとは区別されています。病気の分類は、皮膚T細胞・NK細胞リンパ腫と皮膚B細胞リンパ腫の2つに大きく分けられます。皮膚T細胞・NK細胞リンパ腫は以下のとおりです。
- 菌状息肉症
- セザリー症候群
- 原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫
- 皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫
- 原発性皮膚CD4陽性小型
- 中型T細胞リンパ増殖異常症
- 成人T細胞白血病リンパ腫
- 粘膜関連リンパ組織節外性辺縁帯リンパ腫
- 原発性皮膚濾胞中心リンパ腫
- 原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
初期症状では、赤い斑点・皮膚の表面が小さく盛りあがる・しこりなどの症状がみられます。
病気が進行すると、赤い斑点が広がったりリンパ節やほかの臓器にがんが広がったりします。
悪性リンパ腫の進行速度の違い
悪性リンパ腫の種類によって進行速度にも違いがあるため、詳しく解説します。年単位で進む種類
年単位で進む種類は、インドレントリンパ腫です。これに該当する悪性リンパ腫は以下になります。- 慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫
- リンパ形質細胞性リンパ腫
- 脾辺縁帯リンパ腫
- MALTリンパ腫
- 節性辺縁帯リンパ腫
- 濾胞性リンパ腫
- マントル細胞リンパ腫
- T細胞大型顆粒リンパ球性白血病
- 成人T細胞白血病/リンパ腫
- 菌状息肉症/セザリー症候群
- 原発性皮膚未分化大細胞型リンパ腫
月単位で進む種類
月単位で進む種類は、アグレッシブリンパ腫といいます。B細胞ががん化するものは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫です。T細胞の種類は以下のとおりです。
- 末梢性T細胞リンパ腫
- 腸症関連T細胞リンパ腫
- 未分化大細胞リンパ腫
- 肝脾T細胞リンパ腫
- 成人T細胞白血病/リンパ腫
- 節外性NK/T細胞リンパ腫
- 血管免疫芽球性T細胞リンパ腫
あくまでも一般的な期間で、状態が急変する可能性は否定できません。参考程度の認識でいることが大切です。
悪性リンパ腫の治療法
ここからは悪性リンパ腫の治療法について解説します。薬物療法
薬物療法は、がんの完治・進行抑制・症状緩和を目的としています。化学療法・ホルモン療法・分子標的療法の3種類があります。化学療法は、細胞障害性抗がん薬を使う治療のことです。がんの治療では、薬物療法と手術や放射線治療が併用されます。
放射線治療
放射線治療はがんの3大治療法の1つです。がんの部分に放射線を当てて治療します。放射線を当てても、痛みや熱を感じることはありません。放射線治療の目的は、完治を目指すものと苦痛を緩和するものの2つに分かれます。放射線治療のみ適用されることや、手術や薬物療法を併用されることもあります。
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植は、大量の化学療法や全身への放射線治療を行った後に健康な造血幹細胞液を注入する治療法です。合併症を引き起こすリスクがあるため、造血幹細胞移植を受けるかは十分な話し合いが大切です。
また、造血幹細胞移植は注入から白血球が増え始めるまでに10日〜2週間程かかります。合併症のリスクもあるため数ヵ月の入院が求められます。
悪性リンパ腫の種類についてよくある質問
ここまで悪性リンパ腫の種類・進行速度・治療法などを紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫の種類」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
悪性リンパ腫で自覚症状が生じるものはありますか?
初期症状は気付きにくいですが、B症状が現れれば自覚する方も少なくありません。悪性リンパ腫の種類は多岐にわたるため、B症状を自覚した場合には速やかに受診することをおすすめします。
予後が悪い悪性リンパ腫の種類はありますか?
高度アグレッシブリンパ腫やB細胞性リンパ腫のナイーブB細胞型は予後が悪いとされています。がんの進行速度が速く、ナイーブB細胞型に関しては遺伝子異常も多岐にわたるからです。
編集部まとめ
悪性リンパ腫の種類・進行速度・治療法について解説していきました。 悪性リンパ腫の種類や進行速度は多岐にわたりますが、どの悪性リンパ腫であっても早期発見・早期治療に努めることが大切です。悪性リンパ腫と関連する病気
「悪性リンパ腫」と関連する病気は2個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
上記はウイルスや細菌感染でも発症するため、悪性リンパ腫と上記の病気を見分けるには詳しい検査が必要です。
悪性リンパ腫と関連する症状
「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は4個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
悪性リンパ腫は、リンパ節の腫れた場所や症状の進行速度によってさまざまな症状が現れます。自覚症状があれば、医療機関で受診しましょう。
参考文献



