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【体験談】左手の謎のしびれは難病のサインだったのか《慢性炎症性脱髄性多発神経炎》

 公開日:2023/02/27
【体験談】左手の謎のしびれは難病のサインだったのか《慢性炎症性脱髄性多発神経炎》

産後の健康相談から「慢性炎症性脱髄性多発神経炎(まんせいえんしょうせいだつずいせいたはつしんけいえん)」の診断を受けた鈴木美幸さん。再発を繰り返すと言われるこの難病を抱えながら、3人の息子さん(取材時。2022年10月には娘を出産)の子育てと仕事を両立しているそうです。慢性炎症性脱髄性多発神経炎とはどのような病気なのか、また現在の身体の状況について、話を聞きました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年12月取材。

鈴木さん

体験者プロフィール
鈴木 美幸

プロフィールをもっと見る

1984年生まれ。宮城県在住。結婚し、夫と息子3人(11才、6才、2才)と娘1人(0才・取材後に出産)の6人暮らし。車で10分程度の距離に実家あり。発症時はパート(育休中)。2016年3月に次男を出産。2016年6月頃に左手小指のしびれを感じ、抱っこのし過ぎかと思い接骨院へ行くも異常なし、もしかしたら何かの病気かもと言われたが育児優先で放置。現在も再発を繰り返しながら、子育てに奮闘中。

出口 誠

記事監修医師
出口 誠(医師)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

病気の診断を受けてもすぐに寛解(かんかい)

病気の診断を受けてもすぐに寛解(かんかい)

編集部編集部

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(まんせいえんしょうせいだつずいせいたはつしんけいえん)とはどのような病気なのでしょうか?

鈴木さん鈴木さん

手足の筋力低下やしびれがある末梢神経の病気です。「腕が上がらない」「お箸がつかえない」「階段が登れない」「転びやすい」「手足がピリピリしびれる」といった症状が出ます。再発をくり返す病気です。

編集部編集部

診断される前に、病気の兆候はありましたか?

鈴木さん鈴木さん

2016年6月に、左手小指のしびれを感じるようになりました。7月にしびれの範囲が広がり、両手両足がしびれて物を落としたり、歩くときに両足を引きずったり、立ち上がれなかったり、目が見えづらかったり(距離感が分かりづらい)、さまざまな症状が出て、明らかに何かがおかしいと感じるようになりました。

編集部編集部

病気はすぐに判明したのでしょうか?

鈴木さん鈴木さん

2016年8月、産後の健康相談で症状を伝えると「脳梗塞かもしれないから、早めにMRIを撮りましょうね」と言われ、近所の脳神経外科を受診しました。しかし、原因は分からず、別の病院を紹介されました。

編集部編集部

紹介先の病院ではどのような検査を受けましたか?

鈴木さん鈴木さん

MRIを受け、画像を見て「入院が必要です」と言われ、夫のお盆休みに合わせて入院することになりました。「MRI」「血液検査」「髄液検査」「神経伝導速度検査」の結果、「慢性炎症性脱髄性多発神経炎」と診断を受けました。

編集部編集部

治療について、どのような説明がありましたか?

鈴木さん鈴木さん

治療については、詳細や方針の相談は特になく、免疫グロブリンの点滴を5日間と、ステロイドパルス療法の点滴を3日行いまして、それでほぼ寛解となりました。

編集部編集部

すぐに寛解できたのですね。ほかの治療などはなかったのですか?

鈴木さん鈴木さん

治療と同時に作業療法と理学療法でリハビリがはじまりました。ほかには神経内科と一度だけ視野検査で眼科にかかりました。今でも、年に1度MRIを撮って経過を確認しています。

退院後も再発を繰り返すも普段は健常者と変わらない

退院後も再発を繰り返すも普段は健常者と変わらない

編集部編集部

退院後はどんな様子ですか?

鈴木さん鈴木さん

退院後は、次男が授乳中だったので、予防薬は使えず、再発を繰り返しました。再発する度に通院して、ステロイドパルス治療を受けました。医師からは「MOG抗体陽性だから、予防薬は使わない」と言われましたが、詳細な説明はなかったと思います。自分もあまり気にしていなかったので、今でもよくわかっていないですね。

編集部編集部

その後、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の再発はありますか?

鈴木さん鈴木さん

2017年4月には、パートに時短就労で復帰しましたが、疲労とストレスや、風邪の発熱などの影響で、年に数回再発しています。約2ヶ月おきに再発していると思います。その都度、通院してステロイドパルス治療をおこなっていますが、毎回寛解しているので、その点はラッキーだと思います。

編集部編集部

最初に慢性炎症性脱髄性多発神経炎がわかったときや再発のときの心境を教えて下さい。

鈴木さん鈴木さん

元々メンタルが強いので、多少のことでは落ち込みません。発症したときも再発時も「コンチクショー」と思う程度でした。これは自慢ではなくて、難病になっても、割と元気に暮らしている人もいるよってことを知ってもらいたいです。

編集部編集部

現在の生活状況を教えて下さい。

鈴木さん鈴木さん

毎日、子育てに追われています。10才、5才、1才の3人を育てているので、仕事をしているときのほうが気は楽です。仕事が息抜きの感覚で、その上お金も稼げるなんて最高だと思っています。

編集部編集部

身体のしびれなどの症状はどうなりましたか?

鈴木さん鈴木さん

再発したとき以外は、調子もいいですね。普段は健康な人と変わらないか、それ以上に元気です。予防薬も使わず、通院治療のみで寛解します。普段は、小5の長男と50m競争しても、勝てるくらいの運動はできますよ。

伝えたい気持ち

伝えたい気持ち

編集部編集部

入院で辛かったことはなんですか?

鈴木さん鈴木さん

とにかく家に帰れないのが辛かったですね。特に次男が生後5ヶ月だったので、「側にいられなくてゴメン」と思いました。実際には有給を取った夫が完璧に、家事と育児をしていて全く問題なしでした。

編集部編集部

闘病中の心の支えはなんでしたか?

鈴木さん鈴木さん

やっぱり、心の支えは家族とお見舞いに来てくれた友達ですね。息子たちはものすごくカワイイです。再発すると分かっていても、もう1人産みたくなるくらいかわいくて、辛さと嬉しさを天秤にかけた結果、三男を産みました。ぜんぜん後悔はしていません。

編集部編集部

過去の自分に伝えたいことはありますか?

鈴木さん鈴木さん

過去の自分には「難病になっても結構大丈夫だよ」と教えたいですね。

編集部編集部

医療従事者に対して伝えたいことはありますか?

鈴木さん鈴木さん

医療従事者も他業種と一緒で、人の当たり外れや相性がありますが、病人相手なのだから最低限優しくしてほしいと言いたいです。入院が長引くことを伝えに来た医師は配慮に欠けていて、今でも納得のいかない対応をされたと思っています。

編集部編集部

読者に対して伝えたいことはありますか?

鈴木さん鈴木さん

この病気を理解してほしいと言っても無理です。自分も発症するまで聞いた事ない病名でした。ただ、コロナ禍でマスクしない、鼻が出てる人(特にシニア世代に多い印象)に恐怖することはあります。ヘルプマークを付けて仕事しているのだから、エチケットとして、マスクはしっかりしてほしいと思いますね。あと「明らかな体調不調があれば、早く病院に行った方がいい」と思います。

編集部まとめ

突然の難病診断を受けて、再発を繰り返しながらも、出産や仕事に復帰した鈴木美幸さん。ヘルプマークしていたら「何かあるんだな」と思えるように、もっと浸透してほしいと願われています。また、ご自身の経験から、部下を持つ人は「配慮が必要な人には、どんな配慮が必要なのかしっかりと理解させないと配慮できませんよ」と言われていました。助け合いや配慮の気持ちがあれば、難病でつらい思いをされている人にとって、もっと生活しやすい環境が整いそうですね。

この記事の監修医師