【闘病】右足に感じたわずかな違和感。正体は難病だった《慢性炎症性脱髄性多発神経炎》(1/2ページ)

病気や怪我などで落ち込んでいる人がいると、「前向きに頑張って」と声をかけてあげたくなるかもしれません。しかし、闘病者の塩見さんは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を患ったご自身の経験から「病気を受容するためには、落ちることも必要だった」と言います。「しばらくは精神的に底辺に落ちていた」という塩見さんに、検査や治療の経験談、現在の生活について話してもらいました。

体験者プロフィール:
塩見 靖博
千葉県市川市在住の会社員。2021年に慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を発症。「ひとつでも多く、楽しい、嬉しいを」「難病なんかに負けてられねぇ」の精神で日々を過ごしている。

記事監修医師:
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
11年前の古傷かな…?

編集部
慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)が判明した経緯について教えてください。
塩見さん
仕事中に、右足に若干の違和感を覚えました。そのまま仕事を続けていたのですが、夜には足を引きずるまでになり、これはおかしいと思って夜間の救急外来に行きました。過去に頚椎の病気をしたことがあったため、それに関連している症状かと当時は思っていました。
編集部
どのように医師から説明がありましたか?
塩見さん
最初は病気を特定できず、検査が続きましたが、その中で慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の可能性が高いという話でした。手足の神経を免疫細胞が攻撃してしまう病気で、手足の痺れや動かしにくさが主な症状です。「原因不明の病気で完治はしない」と言われました。いくつかある治療のうち、まずは血液浄化療法を実施し、以降は状態を見て方針を決めていくということでしたね。CIDPといっても色々種類があって、治療法も少し異なるようです。私の場合は、血液浄化療法と並行して、途中からステロイドの投薬も開始しました。
編集部
診断名がついてからも検査が続いたそうですね。
塩見さん
初日の違和感から、大まかな診断がつくまでに約2週間かかりました。そこで血液浄化療法を始めたのですが、その後も検査が続きました。CIDPは典型や非典型など、いくつかのカテゴリーがあり、それらの特定に主治医も苦戦していたようです。こちらも精神的にキツかったですね。
編集部
どんな思いで検査を受けていたのですか? また、診断確定後の心境も教えてください。
塩見さん
まずは、なかなか病名やタイプがわからないということに苛立ちました。ネットで色々な病気を検索して調べていました。中には、「これであってくれるな」という疾患もありました。判明後は、完治しない病気であると言うことが受け入れられず、しばらくは精神的にどん底まで落ちていたと思います。
ただ1時間、じっと耐えるという苦しみ

編集部
検査や治療はとても大変だったそうですね。
塩見さん
血液浄化療法を実施するにあたり、首の静脈から心臓付近まで太さ約4mmの管を入れたのですが、それが入院生活の中で一番大変でした。管を入れる部分に局部麻酔はしましたが意識ははっきりしており、滅菌のシートを被せられて自分からは何も見えない中で、動かず、ひたすら堪えるという感じでした。小一時間ほどかかったと思います。もう2度とやりたくないですね。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
塩見さん
2人の娘の存在です。発症直後は、「こんな自分は誰にも見られたくない」という思いが強く、誰とも関わりたくないと思っていました。唯一の例外が娘たちでした。本当に感謝しています。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか? 今だからこそ言えることなどありますか?
塩見さん
思い浮かびませんね。診断確定後、落ち込んでいた自分に「落ち込むな」とも助言しません。病気を受容するためには落ちることも必要で、そこからゆっくりと受け止めていくのだと思います。病気になってはじめて気付いたことや、新たに得た視点はたくさんあり、それは確かに自分を成長させてくれましたが、それを喜ぶべきなのかわかりません。病気にならない方が良かったので。