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【闘病】右足に感じたわずかな違和感。正体は難病だった《慢性炎症性脱髄性多発神経炎》

 更新日:2024/08/20
~実録・闘病体験~ 右足に感じたわずかな違和感。正体は難病だった《慢性炎症性脱髄性多発神経炎》

病気や怪我などで落ち込んでいる人がいると、「前向きに頑張って」と声をかけてあげたくなるかもしれません。しかし、闘病者の塩見さんは、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を患ったご自身の経験から「病気を受容するためには、落ちることも必要だった」と言います。「しばらくは精神的に底辺に落ちていた」という塩見さんに、検査や治療の経験談、現在の生活について話してもらいました。

塩見さん

体験者プロフィール
塩見 靖博

プロフィールをもっと見る

千葉県市川市在住の会社員。2021年に慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を発症。「ひとつでも多く、楽しい、嬉しいを」「難病なんかに負けてられねぇ」の精神で日々を過ごしている。

今村 英利

記事監修医師
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

11年前の古傷かな…?

11年前の古傷かな…?

編集部編集部

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)が判明した経緯について教えてください。

塩見さん塩見さん

仕事中に、右足に若干の違和感を覚えました。そのまま仕事を続けていたのですが、夜には足を引きずるまでになり、これはおかしいと思って夜間の救急外来に行きました。過去に頚椎の病気をしたことがあったため、それに関連している症状かと当時は思っていました。

編集部編集部

どのように医師から説明がありましたか?

塩見さん塩見さん

最初は病気を特定できず、検査が続きましたが、その中で慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)の可能性が高いという話でした。手足の神経を免疫細胞が攻撃してしまう病気で、手足の痺れや動かしにくさが主な症状です。「原因不明の病気で完治はしない」と言われました。いくつかある治療のうち、まずは血液浄化療法を実施し、以降は状態を見て方針を決めていくということでしたね。CIDPといっても色々種類があって、治療法も少し異なるようです。私の場合は、血液浄化療法と並行して、途中からステロイドの投薬も開始しました。

編集部編集部

診断名がついてからも検査が続いたそうですね。

塩見さん塩見さん

初日の違和感から、大まかな診断がつくまでに約2週間かかりました。そこで血液浄化療法を始めたのですが、その後も検査が続きました。CIDPは典型や非典型など、いくつかのカテゴリーがあり、それらの特定に主治医も苦戦していたようです。こちらも精神的にキツかったですね。

編集部編集部

どんな思いで検査を受けていたのですか? また、診断確定後の心境も教えてください。

塩見さん塩見さん

まずは、なかなか病名やタイプがわからないということに苛立ちました。ネットで色々な病気を検索して調べていました。中には、「これであってくれるな」という疾患もありました。判明後は、完治しない病気であると言うことが受け入れられず、しばらくは精神的にどん底まで落ちていたと思います。

ただ1時間、じっと耐えるという苦しみ

ただ1時間、じっと耐えるという苦しみ

編集部編集部

検査や治療はとても大変だったそうですね。

塩見さん塩見さん

血液浄化療法を実施するにあたり、首の静脈から心臓付近まで太さ約4mmの管を入れたのですが、それが入院生活の中で一番大変でした。管を入れる部分に局部麻酔はしましたが意識ははっきりしており、滅菌のシートを被せられて自分からは何も見えない中で、動かず、ひたすら堪えるという感じでした。小一時間ほどかかったと思います。もう2度とやりたくないですね。

編集部編集部

治療中の心の支えはなんでしたか?

塩見さん塩見さん

2人の娘の存在です。発症直後は、「こんな自分は誰にも見られたくない」という思いが強く、誰とも関わりたくないと思っていました。唯一の例外が娘たちでした。本当に感謝しています。

編集部編集部

もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか? 今だからこそ言えることなどありますか?

塩見さん塩見さん

思い浮かびませんね。診断確定後、落ち込んでいた自分に「落ち込むな」とも助言しません。病気を受容するためには落ちることも必要で、そこからゆっくりと受け止めていくのだと思います。病気になってはじめて気付いたことや、新たに得た視点はたくさんあり、それは確かに自分を成長させてくれましたが、それを喜ぶべきなのかわかりません。病気にならない方が良かったので。

楽しく笑って過ごしたい

楽しく笑って過ごしたい

編集部編集部

現在の体調や生活などの様子について教えてください。

塩見さん塩見さん

基本的には自立してほとんどのことは出来ますが、外を歩くのは杖がないと不安です。疲労が溜まりやすいうえに抜けにくく、全ての動作が通常の2〜3倍は時間がかかってしまうようになりました。 3〜4日動いて1日ゆっくり休むといった生活です。毎日、入院中に作ったトレーニングメニューを実施しており、後は、積極的に外出するようにはしています。薬は、ステロイド(プレドニゾロン)と神経修復のお薬(メコバラミン)、あとは胃腸薬(パリエット)と便秘薬(マグミット)を飲み続けています。

編集部編集部

慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)を意識していない人に一言お願いします。

塩見さん塩見さん

難病は、いつどこで、誰がなるかわかりません。なってからじゃないと、意識もしません。なので、ならないようにと祈るばかりです。

編集部編集部

医療従事者に望むことはありますか?

塩見さん塩見さん

現在でも、医療従事者の方達は現場で頑張ってくれていると思います。ただ、自分の病気に関わらず、新薬や新治療法を切望している方は沢山います。小さな命が懸命に闘いながら生きています。そんな方達が、ひとりでも多く安心できるようにと思います。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

塩見さん塩見さん

これを目にする方がどういった方かは分かりませんが、健康な方であるならば、今のご自分の境遇が決して当たり前ではないのだと、いかに幸運なことなのかと考えてみてほしいと思います。難病を持っている人は、難病を持っているからこそ、毎日を幸せに生きようと一生懸命です。それは、私が前向きな人間だからなどではなく、そうならざるを得なかったのです。楽しく笑って人生を過ごしたいと思うのは、どんな人でも一緒だと思います。

編集部まとめ

「右足にちょっと違和感」というところからわずか半日で、足を引き摺らないと歩けなくなったという塩見さん。突然の発症と数々の検査、そして「原因不明の病気で完治しない」と言われた上での治療、様々な思いがあったと思います。当たり前の生活は決して当たり前ではないのだと考えさせられました。塩見さん、ありがとうございました。

この記事の監修医師