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「高血圧に初期症状」はあるの?高血圧がもたらす健康への影響も解説!

 公開日:2025/07/02
「高血圧に初期症状」はあるの?高血圧がもたらす健康への影響も解説!

高血圧は、たいへん身近な生活習慣病です。高血圧を放置すると動脈硬化が進み、心筋梗塞や脳梗塞、腎臓病など命に関わる病気のリスクが高まります。そのため、早期発見と適切な対策、治療がとても重要です。本記事では、高血圧の概要や症状、そして症状が現れたときの対処法を、わかりやすく解説します。

上田 莉子

監修医師
上田 莉子(医師)

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関西医科大学卒業。滋賀医科大学医学部付属病院研修医修了。滋賀医科大学医学部付属病院糖尿病内分泌内科専修医、 京都岡本記念病院糖尿病内分泌内科医員、関西医科大学付属病院糖尿病科病院助教などを経て現職。日本糖尿病学会専門医、 日本内分泌学会内分泌代謝科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本医師会認定産業医、日本専門医機構認定内分泌代謝・糖尿病内科領域 専門研修指導医、内科臨床研修指導医

高血圧の概要

高血圧の概要

高血圧とはどのような状態ですか?

血圧とは、心臓が血液を全身に送り出す際に、動脈の壁にかかる圧力のことを指します。一般的には上腕動脈と呼ばれる腕の動脈で測定される圧力を血圧と呼びます。

高血圧とは、血圧が慢性的に高い状態のことです。診察室で測った血圧が、収縮期血圧140mmHg以上拡張期血圧90mmHg以上のときに高血圧と診断されます。収縮期血圧とはいわゆる上の血圧のことです。心臓が収縮した際の、血管に最も強い圧力がかかっているときの値です。拡張期血圧はいわゆる下の血圧のことで、収縮した心臓がもとに戻って拡張したときの、血管にかかる圧力の値です。

なお、診断基準は診察室の値だけではなく、家庭での血圧の値も定められています。家庭で測定する血圧を家庭血圧と呼びます。収縮期血圧が135mmHg以上、拡張期血圧が85mmHg以上を高血圧診断します。高血圧の治療では、家庭血圧を指標として治療することがすすめられています。

高血圧がもたらす健康への影響を教えてください

高血圧を治療せずにそのままにしておくと、動脈硬化が進行し、心臓の病気や脳卒中腎臓病など重大な健康への影響がみられるようになります。血圧が120/80mmHgを超えて高くなるほど、心臓や脳、腎臓の病気のリスクと死亡のリスクが高くなることがわかっています。なお、収縮期血圧の方が心臓や脳の合併症のリスクをより強く予測する指標とされています。日本では、高血圧が原因で、毎年およそ10万人が脳や心臓の病気で亡くなっていると推定されています。脳や心臓の病気で亡くなる方の原因のなかで最も多いのが、高血圧です。

さらに、中年期の高血圧は、年を取ってから認知症になるリスクが高くなることがわかっています。このように、高血圧は健康に大きな影響を及ぼします。

高血圧の初期症状

高血圧の初期症状

高血圧にはどのような初期症状がありますか?

高血圧治療ガイドラインでも高血圧は通常、無症状であると記載されています。このように、高血圧の患者さんの多くは初期症状がなく、患者さん自身は自覚症状がないまま病状が進行することが少なくありません。これが、高血圧がサイレントキラーと呼ばれる理由です。症状が現れるのは、血圧が極度に上昇した場合です。頭痛、めまい、動悸、息切れ、肩こり、のぼせ、耳鳴りなどが現れることがあります。

また、二次性高血圧と呼ばれる、ほかの病気が原因で高血圧が引き起こされる高血圧では、それぞれ原因となっている病気に関連した症状がみられる可能性があります。夜間の頻尿や呼吸困難感、早朝の頭痛、昼間の眠気や集中力の低下、いびきなどに注意が必要です。

高血圧で症状が現れる理由を教えてください

一般的な高血圧では症状は現れませんが、血圧が極度に上昇した場合では症状がみられます。急激に血圧が上がると脳や耳などへの血流が乱れるため、頭痛やめまい、耳鳴りなどの症状が出るといわれています。

また、高血圧によって臓器に障害が生じると症状がみられることがあります。疲れやすさや息切れ、動悸、頭痛やめまいなどです。ただしこれらの症状の多くは、高血圧によって動脈硬化が進行し、臓器への血流が悪化したことが原因です。このような症状が出たときには、病状が進行している状態だと考えられます。

高血圧の初期症状はどの程度続きますか?

高血圧の多くは自覚症状がありませんが、血圧が急激に上がったときには、頭痛やめまい、動悸などの症状がみられることがあります。血圧が下がれば自然におさまる場合もありますが、臓器にダメージが生じている場合には、症状が長引いたり悪化したりすることもあります。

血圧が極度に上昇した場合、緊急の治療により血圧が下がれば、通常は数時間から数日以内に症状が軽減します。一方で血圧が改善しなければ症状が持続する可能性があります。

高血圧の初期症状を放置するとどうなりますか?

高血圧の初期症状を認めて、それを放置した場合、動脈硬化が進みます。その結果、脳卒中(脳梗塞や脳出血)や心筋梗塞、腎臓病などの重い病気を引き起こしやすくなります。

また、極度に血圧が高い状態になると、高血圧性脳症になる可能性が高まります。高血圧性脳症は、脳の調節機能を超えて極端に血圧が上昇することで、脳がむくんでしまう病気です。高血圧脳症は高血圧の合併症のなかで最も重症で緊急での対応が必要な病態であり、適切に治療されない場合、脳出血、意識障害などを認め、死に至ることもある病気です。

このように、高血圧の症状を放置して治療されないままになると、重大な合併症を引き起こす可能性が高まります。

高血圧の初期症状があるときの対処法

高血圧の初期症状があるときの対処法

高血圧の初期症状のなかですぐに受診をした方がよいものはありますか?

高血圧そのものの初期症状は軽いことが多いといわれていますが、次のような症状が現れた場合はすぐに受診してください。

  • 激しい頭痛
  • 頭痛に伴う嘔吐
  • 片方の手足のしびれや麻痺
  • ものが二重に見える、言葉が出にくいなどの症状
  • 急激な視力低下や意識障害
  • 胸の圧迫感や痛み

これらは脳卒中や心筋梗塞など重度の合併症の可能性があるため、緊急での対応が必要です。

高血圧の初期症状があるときに受診すべき診療科を教えてください

高血圧や初期症状が気になる場合は、まずは内科、可能であれば循環器内科を受診してください。また、かかりつけの内科がある場合には、主治医に相談するようにしましょう。

高血圧の初期症状に対して病院ではどのような治療を行いますか?

高血圧の治療は、基本的には生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせて行います。ただし極度の高血圧で緊急の対応が必要な場合は、入院のうえ、点滴による血圧の薬を下げる治療などが行われることがあります。

初期症状が軽度の場合は、生活習慣の改善と薬の内服が選択肢となります。まず、生活習慣には、減塩などの食事療法、体重管理、運動療法、禁煙などの指導があります。生活習慣の改善だけでは目標血圧に達しない場合、または最初の受診から重度の高血圧の場合には、薬による治療が行われます。血圧を下げる薬には、さまざまな種類があります。カルシウム拮抗薬、ACE阻害薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)に加えて、最近ではARNIという新しいタイプの薬も使用されることがあります。これらの薬剤はそれぞれ特徴があるため、医師が患者さんの状態に合わせて選択し、ときには複数を組み合わせて治療を行います。

編集部まとめ

編集部まとめ

高血圧は初期には自覚症状がほとんどないといわれているため、自分では気付きにくい病気です。しかしときに、激しい頭痛や意識障害、胸の痛みなどの強い症状がみられることがあります。このような場合は速やかに医療機関を受診する必要があります。一方、自覚症状に乏しい場合でも、気付かないうちに動脈硬化が進行し、重大な合併症を引き起こす可能性があります。自宅での血圧測定を行い、血圧が高い場合や異常を感じる場合は、医療機関を受診しましょう。

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