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「口腔がん」の初期症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「口腔がん」の初期症状はご存知ですか?医師が監修!

口腔がんは胃がんや肺がんに比べて、あまり聞きなれないがんかも知れません。実際、すべてのがんの中で口腔がんが占める割合は1~2%程度で、極めて珍しいがんといえます。

人口10万人の中でもたった6例未満しかないがんを希少がんと呼び分けることがありますが、口腔がんも希少がんの1つです。

滅多にないため気づきにくく早期発見、早期治療が遅れやすいがんともいえるため、注意が必要でしょう。

ここでは口腔がんになる原因を明かし、万が一発症してしまったときの治療法をお伝えします。生存率や治療後の注意点など最新情報も併せてお話させていただくので、参考になれば幸いです。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

口腔がんの初期症状と原因

タバコを持つ男性

口腔がんはどんな病気ですか?

口腔がんは、舌・歯肉・舌と歯肉の間・口腔底・唇・頬の粘膜・上顎など口腔領域に悪性の腫瘍が発生するがんです。お口の中はほぼ粘膜組織から成り、粘膜組織に巣食う扁平上皮がんになりやすい特徴があります。
粘膜の中でも特に悪性腫瘍にかかりやすいのは舌で、調査によって舌がんは口腔がん全体の約6割を占めていることが判明しました。年間に約23,000人以上の患者さんが口腔がんの診断を受けていますが、舌がんも含め口腔がんは全体のがんの中ではそう多くありません。
すべてのがんの中で口腔がんが占める割合は1~2%程度で、極めて珍しいがんです。人口10万人の中でもたった6例未満しかないがんを希少がんと呼び分けることがありますが、口腔がんも希少がんに分類されます。

初期症状を教えてください。

どういった初期症状が現れるかは、口腔がんの種類にもよります。例えば歯肉に悪性腫瘍が発生する歯肉がんの場合、土台となる部分にがんが広がって歯がぐらぐらする症状が出ることも珍しくありません。
歯肉に異常が起きることで、入れ歯がフィットしなくなるなどの違和感を覚える患者さんもいらっしゃいます。頬の内側の粘膜部分ががん化すると、赤みや白みが強く出る変色症状や変形症状が出る可能性があります。
口腔内のしこり・しみる感じ・異物感・出血から異変に気づくケースもありますし、長引く口内炎の症状が受診のきっかけになるケースもあるでしょう。最初は本当にちょっとした変化なので、すぐに口腔がんを疑うのは難しいかも知れません。

進行したらどんな症状が出ますか?

初期症状で感じた違和感は、がんが進行するにつれてひどくなっていきます。最初は感じなかった明らかな痛み・ただれ・出血症状も出てきますし、口が開けにくくなることに気づくでしょう。
食べ物が飲みにくくなるので、食事のときも不快な思いをすることがあるかも知れません。話しにくいと訴える患者さんもいらっしゃいます。お口の中を指で触れてみると硬化したしこりがあることが分かるはずです。
もししこりがあっても他の粘膜と同じぐらい柔らかい場合は、あまり心配ないでしょう。舌がんの患部になりやすいのは舌の両サイドなので、硬いしこりがないかどうかチェックしてみてください。患者さんによっては顎や首にしこり(リンパの腫れ)ができることもありますが、いずれにしても早急に受診が必要な段階です。

口腔がんの原因はなんですか?

普段の生活習慣や嗜好品が大きな影響を与えていると考えられます。例えば煙草も発症原因として指摘されています。口腔がんになりやすいのは、喫煙習慣がある方や飲酒習慣がある方です。
また、虫歯や合わない入れ歯によって口内に慢性的な刺激を与えている場合も、粘膜ががん化するきっかけになるかも知れません。他にも歯磨きをきちんとしないせいでお口の中が不衛生だと、粘膜の状態が悪くなり悪性腫瘍に狙われる恐れもあります。

口腔がんの診断方法と治療方法

歯医者

何科を受診すればいいですか?

最初は耳鼻咽喉科で診て貰いましょう。耳鼻咽頭科を受診した上でもし口腔がんの疑いがある場合は歯科口腔外科や顎口腔腫瘍外科など専門の病院で診て貰った方が安心です。
最近は口腔健診を実施している歯医者さんもあります。専門外来の腫瘍外来もありますが、口腔がんの治療を受けるなら頭頸部がん専門医が在籍している施設が理想的です。

口腔がんの診断基準を知りたいです。

口腔がんと診断されたら、TNM分類という分類法を使ってがんがどれぐらい進行しているのか特定します。各項目ごとに細かく分けられているので、数値からがんの状態を正確に把握することが可能です。
この結果を元にがんのステージが決まります。がんは進行する病気で、時間の経過と共に状態は変わるため何度も診断と検査を受ける必要がありますが、最初に実施するタイミングは治療を開始する前です。この分類を臨床分類と呼びます。

  • T:腫瘍の有無、がんの大きさと浸潤具合など
  • N:リンパ節転移の有無、転移している場所など
  • M:遠隔転移の有無

どんな検査が行われるのですか?

口腔がんに限りませんが、がんの疑いのある患者さんが受けるのは想定されているよりも多くの検査です。実際に治療をスタートするまでにかなり時間がかかります。がんは進行する病気なので、中々治療方針が決まらないと不安になってしまう患者さんもいらっしゃるでしょう。
しかし身体にかかる負担を最小限に抑え、治療効果を最大限得るため慎重に検査を重ねる必要があります。治療方針が決まるまでに時間がかかることは覚えておいてください。
口腔がんの疑いのある患者さんが最初に受けるのは、問診と診察です。身体の状態を診ながら、どのような症状を自覚しているのかヒアリングが行われ患部を医師が直接観察します。今までにかかったことがある病気や現在治療中の病気の有無など、質問いくつか行ないます。
ご自身はもちろん家族や身内の方の情報があると、遺伝の可能性なども探りやすくなります。喫煙者かどうか、お酒はどれぐらいのペースで飲むかなど生活習慣に関する質問も代表的な質問です。さらに血液検査やCT検査・超音波検査・MRI検査など画像検査も実施されます。最終的に病変を採取して顕微鏡で調べる病理検査を行い、がんかどうか診断されるのが一般的な流れです。

口腔がんの治療はどのように行いますか?

具体的な治療内容はがんの状態や年齢、患者さんの希望などによって総合的に決定されます。治療方針を決めるための検査もたくさん受けなくてはなりません。
口腔がんの治療方法は大きく分けて、既に医療現場に導入されている標準治療とまだ研究段階にある治療方法の2通りあります。一般的には標準治療の外科手術でがんがある組織を切除する治療を受ける流れになるでしょう。
同じ手術でも切除する範囲は患者さんによって異なります。切り取る部分が大きかった場合、形成手術を受けて口腔の失った部分を再建することを検討する流れになるでしょう。また、手術でがんを取り除いた後も、徹底的にがん細胞を死滅させるために放射線療法や化学療法が組み合わされることもあります。
その他、温熱療法や多分割放射線療法などの治療法は新しいものです。いずれにしても治療法によって保険が適用されるものとされないものに分かれます。費用にもかなり差があるのが現状です。予算の問題も考慮しながら治療法を決めていくことになります。

口腔がんの再発・生存率・治療後の注意点

検査医

口腔がんは再発しますか?

がんは再発リスクを伴う病気で口腔がんも例外ではありません。そのため、常に検査を行って細かく状態を把握する対策がとられています。
治療を終えた後も転移や再発の可能性をチェックするために定期的に検査を受けなくてはいけません。検査の結果再発していることが分かったら、再びがん細胞を消滅させるための治療を行います。

口腔がんの生存率はどれくらいでしょうか。

がんの状態や性別、年齢によっても生存率の計算方法は色々ありますが、がんと診断されてから5年後に生存している患者さんの割合を表すのが5年生存率です。
口腔がんの5年生存率は、男性女性患者さんを合わせて約64%に達しています。一方5年生存率が低いすい臓がんは8.9%、胆嚢がんと胆管がんは26.8%、肺がんは29.5%です。数値からも口腔がんの生存率が高いことがお分かりいただけるでしょう。がん全体の62%という確率も少し超えています。

治療後はどのような点に注意すべきですか?

再発リスクを必要以上に不安に感じることはありません。しかし再発する可能性はゼロではないので、定期検診は必ず受けてください。同時に、口腔がんの発症原因になりやすい喫煙や飲酒などの生活習慣を改め、規則正しい生活を送ることも大切です。口腔内を清潔に保つために毎日の歯磨きも丁寧に行いましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

口腔がんはがんの中でも珍しい希少がんではありますが、近年患者さんの人数が増加しています。調査によって口腔がんと診断される患者さんは、この30年間で4倍以上に増えていることが判明しました。幸い、口腔がんの5年生存率は決して低くありません。
早い段階でがんを発見し治療に取り組めば、がん診断後も健康に過ごせる確率が高いでしょう。少しでもおかしいと感じることがあればすぐに病院を受診することが大切です。口腔がん患者さんが増加している影響から、最近は口腔がん検診や口腔健診を受けられる歯科も増えています。

編集部まとめ

歯磨きする女性
口腔がんは肺がんや胃がんほど有名ではありません。しかし、口腔がんについて詳しく知ることで、口の中のちょっとした異変にも注意しなければいけないことが分かったのではないでしょうか。

口は話したり食べたりする大事な機能があるので、万が一がんに患ったら大変です。虫歯の定期的なチェックと同じように、口腔内の定期検診を受けることの重要さも認識できました。

毎日の歯磨きのときも、口内にいつもと違う様子はないかセルフチェックするだけで口腔がんの早期発見、早期治療に繋げることができそうです。

この記事の監修医師