甘い飲み物をよく飲む人は「口腔がん」リスク増加 “砂糖入り飲料”の健康被害が研究で示唆

アメリカのワシントン大学の研究員らは、喫煙女性および非喫煙女性において、砂糖入り飲料の摂取と口腔がんリスクの関連性を検討しました。この内容について中嶋医師に伺いました。

監修歯科医師:
中嶋 麻優子(歯科医師)
研究グループが発表した口腔がんに関する研究内容とは?
アメリカのワシントン大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
中嶋先生
アメリカのワシントン大学の研究員らによる研究報告によると、砂糖入り飲料(SSB)の摂取が女性の口腔がんリスクに影響を与える可能性が示されました。本研究は、アメリカの看護師健康調査および看護師健康調査IIに参加した16万2602人の女性を対象とした30年にわたる縦断的コホート研究です。
調査の結果、砂糖入り飲料を1日1回以上摂取する女性は、月に1回未満しか摂取しない女性と比べて、口腔がんの発症リスクは約4.87倍高くなることがわかりました。また、非喫煙者または軽度の喫煙者で、かつ非飲酒者または軽度の飲酒者に限定すると、このリスクは5.46倍に上昇しました。しかし一方で、口腔がんの発症率自体は10万人あたり2~5人と低く、絶対的なリスクは大きくないことも示されています。
本研究は、従来のリスク要因がない層における口腔がんの新たな危険因子として砂糖入り飲料の関与を示唆しています。ただし、研究対象が女性に限定されているため、今後は男性を含めたさらなる研究が必要とされています。また、自己申告に基づく飲料摂取量の測定や、ほかの生活習慣要因の影響についても慎重な解釈が求められます。
研究テーマになった口腔がんとは?
今回の研究テーマに関連する口腔がんについて教えてください。口腔がんの初期症状や見た目の変化、口内炎との見分け方について教えてください。
中嶋先生
口腔がんは、舌や歯肉、頬の内側、口蓋、口腔底などに発生する悪性腫瘍で、多くは粘膜の変化として表れます。初期には、粘膜が赤くなったり、白く変色したり、表面の形が変わったりするのが特徴です。また、硬いしこりや腫れができることもあります。これらの変化は痛みを伴わないことが多く、特に治りにくい口内炎と誤認されるケースが少なくありません。口腔がんと口内炎を見分ける1つの目安として、「2週間以上治らない場合は要注意」とされています。初期であれば簡単な治療で済む可能性が高いため、口の中に違和感や変色、しこりなどの異変を感じた際はご自身で判断せず、そして不用意に触らず、早めに歯科口腔外科などの専門医療機関を受診することが重要です。早期発見・早期治療が、口腔がんの予後を大きく左右します。専門機関の受診が難しい場合は、近くの歯科医院でもかまわないので、早めに受診することをおすすめします。
口腔がんに関する研究内容への受け止めは?
アメリカのワシントン大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
中嶋先生
がん細胞が成長する際にエネルギー源になるのが糖質です。今回の研究発表から、砂糖入り飲料の摂取は口腔がんのリスク増加につながることが判明しました。砂糖の多い飲み物は、むし歯以外にも口腔がんや糖尿病など、様々な健康被害をもたらします。摂取する頻度を減らし、摂取したらしっかりと口腔ケアをするといった習慣をつけて、心身ともにご自身の健康をいま一度しっかりと考えてみてはいかがでしょうか。
編集部まとめ
今回の研究では、砂糖入り飲料の摂取が口腔がんリスクを高める可能性が示されました。とくに、喫煙や飲酒をしない女性でも影響を受けることが報告されており、生活習慣の見直しが重要です。砂糖の多い飲み物を日常的に摂る人は、健康的な飲料に置き換えるなど、小さな意識改革がリスク回避につながります。気になる口内の変化があれば、早めの受診を心がけましょう。