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週2Lの“甘い飲み物”で「不整脈」リスク増加、甘味飲料の飲み過ぎに要注意!

 公開日:2024/03/18

AHA(アメリカ心臓協会)は、「砂糖や人工甘味料が入った飲料を週に2リットル以上飲むと、心房細動の発症リスク増加の可能性がある」という研究結果を学会誌に掲載しました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

掲載された研究内容とは?

今回取り上げる、AHAが学会誌に掲載した研究内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

AHAの学会誌に掲載された内容によると、上海交通大学医学部らによる研究グループが食事に関するアンケートと遺伝子データについての検討を実施しました。2006年から2010年にかけて、UKバイオバンクに登録した時点で心房細動のなかった20万人以上の成人が対象で、約10年間の追跡期間中に9362例の心房細動が発生しています。

解析の結果、アンケートで「人工甘味料入り飲料を週に2リットル以上飲む」と答えた人は、加糖飲料を全く摂取していない人と比較して、心房細動のリスクが20%増加し、「加糖飲料を週に2リットル以上飲む」と答えた人は心房細動のリスクが10%増加しました。「純粋なフルーツジュースを毎週1リットル以下しか飲まない」と答えた人は、心房細動のリスクが8%低い結果となっています。また、研究グループは「喫煙も心房細動のリスクに影響している可能性がある」と指摘しています。砂糖入り飲料を週に2リットル以上飲む喫煙者は心房細動のリスクが31%高かった一方で、元喫煙者や喫煙経験のない人では有意なリスク増加は認められなかったとのことです。

今回の結果について、研究グループは「私たちの食生活は複雑であり、1種類以上の飲料を飲む人もいるため、ある飲料がほかの飲料よりも健康リスクが高いと断定することはできません。しかし、今回得られた知見から、人工甘味料や砂糖入りの飲料は可能な限り減らすか、避けることをおすすめします。低糖・低カロリーの人工甘味料飲料を飲むことが健康的であると鵜呑みにしないでください。それは、潜在的な健康リスクをもたらすかもしれません」とコメントしています。また、「心房細動のリスクと砂糖・人工甘味料入りの飲料・ピュアジュースとの関係に関するこれらの新しい知見は、心臓の健康を改善するために甘味飲料を減らすことを検討することで、新たな予防戦略の開発を促すかもしれません」とも述べています。

心房細動とは?

今回おこなわれた研究のテーマとなった心房細動について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

心房細動は、いわゆる「不整脈」のことです。心房の収縮が十分おこなわれず、痙攣(けいれん)するかのように細かく震えることで、脈が不規則になって起きる病気です。主に、息切れや倦怠感、動悸などの自覚症状があります。

心房細動には、症状が起きる時間で2つのタイプに分けられています。短時間だけ起こる「発作性心房細動」と、長時間続く「持続性心房細動」です。短時間で起こって元に戻る発作性心房細動の人は自覚症状がない場合や、健康診断でおこなわれる心電図などの短時間の検査では見つからない場合もあります。また、心臓の血液を一定方向に流し、逆流を防ぐ役割を持つ「弁」に異常があるかどうかでもタイプが分けられます。弁に異常がみられないものは「非弁膜症性心房細動」、弁の異常が原因となるものは「弁膜症性心房細動」と言います。

心房細動が原因で心房内の血液が淀んでしまうと血栓ができます。そして、血栓が血流に乗って脳に運ばれ、脳の血管を詰まらせると脳梗塞が起こってしまいます。心原性脳塞栓症と呼ばれる病気ですが、一般的な動脈硬化によるアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞と比べて、大きな血管が突然閉塞します。大きな脳梗塞を起こして死亡に至るケースもあるので、注意が必要です。

今回の研究内容への受け止めは?

AHAが学会誌に掲載した研究内容への受け止めを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

これまでの研究結果からは、心房細動の発症リスク因子として肥満、糖尿病、心不全、中~重度のアルコール依存症、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)、慢性腎臓病、虚血性心疾患、高血圧、加齢などが知られていました。

今回の上海交通大学医学部らによる研究結果のみに基づいて、甘味飲料の飲みすぎそのものが心房細動を発症する危険性を上げているかどうかに関しては確固たる断言はできません。ただ、砂糖や人工甘味料入り飲料を好む人たちに共通する何らかの交絡因子が、心房細動の発症リスクを上げている可能性が検討されます。

ただし、将来的に心房細動に起因する重大な脳梗塞を発症して、要介護状態になるリスクを少しでも減少したい場合には、本研究の成果を受けて、人工甘味料や砂糖の入った飲料の摂取をできるだけ減らすか、摂取しないことを勧めるという考え方になるのが自然だと思います。

まとめ

AHAは、「砂糖や人工甘味料が入った飲料を週に2リットル以上飲むことで、心房細動の発症リスク増加の可能性がある」という研究結果を学会誌に掲載しました。脳梗塞を引き起こすリスクもある心房細胞の発症リスクに関する研究は、今後も注目を集めそうです。

この記事の監修医師