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「ビタミンB1が不足すると現れる症状」はご存知ですか?不足しやすい人の特徴も解説!

 公開日:2025/05/14
「ビタミンB1が不足すると現れる症状」はご存知ですか?不足しやすい人の特徴も解説!

ビタミンB1が不足すると現れる症状とは?Medical DOC監修医がビタミンB1が不足すると現れる症状・一日の摂取量・効果・不足する原因とその解消法などを解説します。

前原 尚子

監修管理栄養士
前原 尚子(管理栄養士)

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病院で委託栄養士として給食管理業務や調理業務を担当。その後カフェで菓子製造に携わり製菓衛生師取得。保育園栄養士として従事しながら管理栄養士資格取得し現在15年目。母子栄養指導士(母子栄養協会)取得。

「ビタミンB1」とは?

「ビタミンB1」とは?

水溶性ビタミンの仲間で、化学的にはチアミンという名称の化合物で、ブドウ糖をエネルギーに変換する際に必要な栄養素です。エネルギー代謝(糖代謝)の反応の際の補酵素であり、筋肉、心臓、肝臓、腎臓、脳に高濃度に分布していますが、体内貯蔵量はビタミン類の中で最も少なく成人で25〜30㎎と推定されています。経口摂取されたビタミンB1は十二指腸から空腸.回腸で能動輸送により吸収され、過剰分は尿中へ排泄されます。半減期は9〜18日と短く過剰症はまず起こらないといわれています。つまり、摂取が少ないと欠乏症を生じる危険性の高いビタミンのひとつであり、臨床の現場では欠乏症が問題となります。

ビタミンB1の一日の摂取量

必要なビタミンB1の量は、年齢や性別によって異なります。 推奨量 男性成人(18歳以上)1.0~1.2㎎ 女性成人(18歳以上)0.7~0.9㎎ 妊婦(付加量)+0.2㎎ 授乳婦(付加量)+0.2㎎ 女性は特に妊娠中に消費量が増えるために推奨量が高めに設定されています。

ビタミンB1の効果

ビタミンB1の効果

食事から摂取した栄養素(ブドウ糖)やストレスなどで体内に溜まった乳酸を分解することによりエネルギー代謝を高め疲労回復につながります。糖質を栄養源として使っている脳神経や筋肉の機能を正常に保つ働きがあります。

乳酸の代謝補助

疲労物質である乳酸が作られ、これが体内に蓄積されると、他の代謝を邪魔し疲労の原因になります。この乳酸をエネルギーに変える手助けをし、体内に乳酸がたまらないように助けてくれる効果があります。

アルコールの代謝

アルコールは胃や腸から吸収され、吸収されたアルコールは血管を通って肝臓に到達します。そのほとんどが肝臓で代謝され、アセトアルデヒドという物質になり、このときアルコール脱水素酵素が働きます。アルコールを大量に摂取する際、アルコール脱水素酵素だけでは処理しきれず別の経路が働きます。その際ビタミンB1が使われます。

疲労回復

ビタミンB1は糖(炭水化物)の代謝に関わるため、エネルギー不足による疲労と関係があります。炭水化物(糖)は、体内で消化されてブドウ糖に分解されて血液によって全身の細胞に運ばれ体を動かすエネルギーのもととして使われます。その代謝の過程でビタミンB1が不足すると、完全にエネルギーとして変換できずに乳酸という疲労物質として体内に溜まり疲労感を感じたりします。さらにはエネルギーが足りなくなることによりエネルギーを必要とする臓器で障害が起こります。

脳神経の機能を保つ

中枢神経や末梢神経は脳により調整されているため脳が正常に働くためには、エネルギー源となる炭水化物が必要です。この炭水化物の代謝はビタミンB1が関与しているため、不足すると脳の活動にも影響を与えます。また、神経細胞間で情報を伝える神経伝達物質の合成に必要です。

筋肉の正常化

糖質を筋肉などに、必要なエネルギーとして変える働きがあり、乳酸がたまり硬くなった筋肉の疲労を回復させる働きがあります。

ビタミンB1が不足すると現れる症状

ビタミンB1が不足すると現れる症状

倦怠感や疲労感

ビタミンB1が不足すると、摂取した栄養素が適切に代謝されず、エネルギー生成が滞るため、疲労感や倦怠感の原因となります。また、乳酸が体内に蓄積しやすくなることで、疲労がさらに悪化することがあります。これらの症状は、睡眠不足など他の要因による場合もありますが、原因が特定できない場合は食生活の見直しをおすすめします。倦怠感が強く長期間続く場合は、内科を受診して血液検査などで状態を確認することが重要です。

イライラやうつ症状

ビタミンB1は脳のエネルギー源となる炭水化物の代謝に関与しているため、不足してエネルギー代謝が滞ると脳の活動にも影響し怒りっぽくなったり、集中力の低下などを招きます。 イライラや、うつ症状が続く場合は、心療内科へ症状について相談することをおすすめします。

手足の痺れや感覚麻痺

中枢神経や末梢神経へ影響がでると体中の神経がダメージを受け、足元がおぼつかなくなったりします。そのような症状を感じたら、神経内科へ相談することをおすすめします。

浮腫や動悸

ビタミンB1が不足すると、エネルギーを十分に生み出せなくなることから、血液循環がわるくなるため、むくみや頭痛、肩こりなどの症状も出やすくなったり、動悸などを感じたりします。それが長引くと心不全を引き起こすこともあります。その場合は、循環器内科を受診し心電図や超音波検査などが行われます。

ふらつきや意識障害

ビタミンB1は脳の神経細胞のエネルギー不足につながり、脳へ障害が起こります。症状が出たら内科や精神科を受診し、MRIや血液検査を行います。意識障害となった場合は、生命の危険が生じるため、迅速な対応が必要です。

ビタミンB1が不足する原因

ビタミンB1が不足する原因

食事のバランス

栄養バランスの良くない食生活が続くことや偏った食品(インスタント食品)を長期に摂取すること。

術後による欠乏症

胃の手術の既往により、ビタミンB1欠乏症による代謝性アシドーシスを発症することがあります。

体調による摂取不足

妊娠中でビタミンB1の需要が増えたり、悪阻で十分な栄養を摂取できないこともあげられます。

アルコールの多飲

アルコールの多飲により、アルコールを分解するために必要なビタミンB1が、消費されるために欠乏状態になります。

薬などによる影響

利尿剤(特にループ利尿薬)は尿量を増やし、ビタミンB1の排泄量が増加するため、長期服用者は欠乏症リスクが高まります。

ビタミンB1が不足しやすい人の特徴

ビタミンB1が不足しやすい人の特徴

偏食がちな方

ファーストフードやインスタント食品が好きな方、外食中心の食生活の人や好き嫌いが多い方は栄養のバランスが悪くなります。

アルコール好きな方

お酒が好きな方や職業柄外食が多い方や、お酒に頼りがちな方は摂取量が増えてしまいます。

体調不良や術後の方

妊娠中の方や、減量を目的とした胃の手術を受けた経験がある方、また利尿剤を長期間服用している方は、ビタミンB1の必要量が増加するため、欠乏症を起こしやすくなります。

ビタミンB1を多く含む食品

ビタミンB1を多く含む食品

豚肉

ビタミンB1は水に溶ける性質があるため、茹で汁も食べられるようなカレーやシチュー、ポトフなどにするとよいです。また、ネギやにんにく、玉ねぎといった香味野菜には、アリシンという成分が豊富でビタミンB1の吸収を促進する働きがあります。

玄米

白米を炊く時に玄米を混ぜて炊くことによりビタミンB1を補うことができます。その場合は浸水時間を長めにとったり、水を少し増やして炊くことで、軟らかい玄米入りご飯が出来ます。

枝豆や豆腐

枝豆を調理する際には、茹でるとビタミンB1は水に溶け出してしまうため、フライパンなどでさっと蒸す事をおすすめします。豆腐も味噌汁や鍋料理などで汁ごと一緒に摂取すると良いです。

ビタミンB1不足を解消する方法

ビタミンB1不足を解消する方法

ビタミンB1を多く含む食品の摂取

豚肉、玄米、絹ごし豆腐、木綿豆腐、そら豆(ゆで)、さつまいも(蒸し)、そば(ゆで)、長芋(生)があります。

ビタミンB1と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

アリシンを含む玉ねぎ、にら、にんにく、ねぎなどの香味野菜は一緒に摂取すると効果が高まります。アリシンは、切ったり潰したり、すりおろしやミジン切りにすると作用効果か高まるため、みじん切りにした玉ねぎなどと一緒に煮込んだり、すりおろしたにんにくに豚肉を漬け込んだ後に焼いたり、または、蒸したりすると良いです。アリシンの主な効果は疲労回復と解毒効果。疲労回復の効果があるビタミンB1と結びつきが強く吸収を促進させます。

ビタミンB1の効果を高める摂取タイミング

ビタミンB1は水溶性のため体に必要量を超えると排出されます。1日中どのタイミングで摂取しても問題はないといわれていますが、炭水化物からエネルギーを放出して、活発に動く助けになるため、1日の中でなるべく早めの摂取をおすすめします。夜間や寝る前の摂取は、目が冴えてしまったり睡りが浅くなるなど睡眠に影響を与えますので注意が必要です。

「ビタミンB1が不足すると現れる症状」についてよくある質問

「ビタミンB1が不足すると現れる症状」についてよくある質問

ここまでビタミンB1が不足すると現れる症状を紹介しました。ここでは「ビタミンB1が不足すると現れる症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ビタミンB1が不足すると、どんな病気を発症しやすいですか?

前原 尚子前原 尚子

ビタミンB1は脳のエネルギー源となる糖質を代謝する上でとても大切な役割をもっています。不足すると中枢神経や末梢神経に影響が生じ血液循環が悪くなります。そのため疲労感や倦怠感を感じ、肩こりなど生じやすくなり、浮腫や心不全を発症することもあります。また、脳への障害を引き起こし、イライラやうつ症状になることもあります。重症化するとウェルニッケ・コルサコフ症候群を発症し、心原性ショックをひき起こし生命に危険を及ぼします。

ビタミンB1が不足すると体はどんなサインを発しますか?

前原 尚子前原 尚子

食欲の低下や吐き気、イライラやめまい、短期の記憶力低下、ふらつきや眼球運動障害、むくみ、頻脈・動悸などがあげられます。

編集部まとめ

偏った食生活やアルコールの多飲など生活習慣によるビタミンB1の欠乏により、脚気や心不全、神経障害、ウェルニッケ・コルサコフ症候群などの深刻な病気を引き起こします。日頃からバランスのとれた食生活を心掛けることで、欠乏症を防ぐことができます。しかし、妊娠による悪阻や減量のために胃の手術の既往などにより、ビタミンB1欠乏症による症状が発症することがあります。その場合はかかりつけ医に相談することをお勧めします。

「ビタミンB1」と関連する病気

「ビタミンB1」と関連する病気は3個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

婦人科の病気

  • 妊娠悪阻

「ビタミンB1」と関連する症状

「ビタミンB1」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 疲労感
  • イライラ
  • 短期の記憶力低下
  • ふらつき
  • 眼球運動障害
  • むくみ
  • 頻脈

この記事の監修管理栄養士