「カルシウムの取りすぎ」・不足でどのような症状が起きるのか？管理栄養士が解説！

「カルシウム」とは？

体重における割合1〜2%を占めており(体重50kgの成人において1kg)生体内に最も多くを占めるミネラルです。その99%はリン酸と結合したリン酸カルシウム(ハイドロキシアパタイト)として骨や歯などの硬組織に存在し、残り1%は血液、筋肉、神経などの軟組織にイオンや種々の塩として存在しています。

（男性）カルシウムの一日の摂取量

一日の摂取量について日本人の食事摂取基準(2025年版)では、国民栄養調査の摂取量、腸管からの吸収率、骨代謝(骨吸収と骨形成のバランス)、尿中排泄を考慮し、1日の推奨量を18~29歳男性で800mg、30歳以上男性男性で750mgとしています。

(女性)カルシウムの一日の摂取量

1日の推奨量を18〜74歳女性で650mg、75歳以上の女性で600mgとしています。

カルシウムの効果

構成成分

カルシウムは、骨や歯の主要な構成成分になります。 骨にはヒトの体を支えて姿勢を保つ、内臓を守るなどのはたらきがあるため、その主要な材料となるカルシウムは重要な栄養素です。 筋肉収縮、神経興奮の抑制をします。 アクチンの層に存在する「トロポニン」というたんぱく質はカルシウムイオンと結合することで筋肉を収縮させるスイッチとなります。

血液凝固作用の促進

カルシウムは血漿に含まれる血液凝固因子の一つです。

カルシウムを摂りすぎると起こる副作用

高カルシウム尿症

尿中のカルシウム量が多い状態のことです。泌尿器系に結石ができるリスクを高めます。ビタミン D の過剰摂取は、高カルシウム血症の原因となります。

ミルクアルカリ症候群

大量のアルカリ剤（重炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム）と牛乳を長期に摂取したときに起こる症候群。嘔吐、意識障害といった症状を来します。高カルシウム血症、アルカローシス、転移性石灰化をきたし、腎不全に進展します。

吸収障害

鉄や亜鉛のミネラルの吸収障害の原因となります。サプリメントやカルシウム剤の形での摂取には注意する必要があります。

カルシウムが不足するとどうなる？

骨密度の低下

カルシウムが不足すると、骨密度の上昇が妨げられて丈夫な骨が形成できなくなり、高齢期、特に閉経後の女性では、骨粗鬆症が起こりやすくなります。体調が良くない場合、神経科へ受診してください。

神経系のトラブル

閉経後の女性では、骨粗鬆症になりやすく、また、神経や筋肉の興奮が高まり、テタニー(筋肉の痙攣）やてんかん(全身の痙攣)が起こります。カルシウムを摂取することで症状が改善する可能性があります。症状が悪化した場合、神経科へ受診してください。

循環器の問題

血液中の濃度が高まるとカルシウムは血管壁に取り込まれて血管壁を収縮させてしまいます。その結果血液の流れが悪くなり心臓がさらに強い力で血液を送り出そうとするため高血圧のリスクが高まります。気になる場合、循環器内科へ受診して下さい。

カルシウムを摂りすぎるとどんな病気・疾患になる

吸収不良症候群

カルシウムを摂りすぎると、便秘になったり鉄や亜鉛などのミネラルの吸収が妨げられたりする恐れがあります。消化酵素の投与を行います。心当たりがないのに体重が落ちてきた場合、内科へ受診してください。

腎臓結石

カルシウムの過剰摂取やシュウ酸（野菜に多く含まれる成分）の過剰摂取や、体質などが関係していると考えられています。結石の大きさや患者の状態に応じて、薬物療法や結石を砕く処置が行われます。腰痛、血尿，嘔気が特徴です。泌尿器科へ受診してください。

高カルシウム血症

副甲状腺機能亢進症、ビタミンD過剰、がん(多発性骨髄腫など血液疾患も含む)、寝たき　りなど多岐にわたります。カルシウムを摂りすぎていれば原因を取り除く。水分を十分摂る。多尿、便秘、嘔気の症状が出ます。内科を受診してください。

カルシウムを効率よく摂取する方法

カルシウムを多く含む食品の摂取

効率的にカルシウムを摂取するには牛乳や乳製品が最適です。牛乳・乳製品を中心に、小魚、海藻、豆類、野菜などの食品からバランスよくとりましょう。

カルシウムと一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

カルシウムを効率よく摂取するには、カルシウムの吸収率を高めるビタミンDが欠かせません

• 鮭
• さんま
• まあじ
• しらす干し
• 乾燥キクラゲ
• 干し椎茸
• 鶏卵
カルシウム・ビタミンKが豊富な小松菜と、ビタミンDが摂れる鮭・しめじを合わせるとカルシウムの吸収率を高めることができます。ビタミンKはカルシウムを骨に定着させる働きがあり、骨粗しょう症の治療薬にも使用されていま す。

カルシウムの効果を高める摂取タイミング

夜寝る前、もしくは夕食時に摂取すると効果があります。逆に起き始める時間、朝などに摂取するのは避けましょう。