「ビタミンAが不足すると現れる症状」はご存知ですか?ビタミンAが多い食品も解説!

ビタミンAが不足すると現れる症状とは?Medical DOC監修医がビタミンAが不足すると現れる症状・一日の摂取量・効果・不足する原因とその解消法などを解説します。

監修管理栄養士:
丸山 聡子(管理栄養士)
目次 -INDEX-
「ビタミンA」とは?
ビタミンAは、私たちの体の多くの機能を支える重要な栄養素です。体の正常な成長や細胞の分化を助け、特に視覚機能の維持において重要な役割を果たします。夜間視力を保つために必要なロドプシンという色素の生成を助け、網膜の正常な働きを支えます。また、免疫細胞の働きを促進し、体の防御システムである免疫機能を強化することで、感染症に対する抵抗力を高める作用もあります。
ビタミンAの一日の摂取量
日本人の食事摂取基準2025では成人の推奨量を次のように示しています。
18~29歳:男性850µgRAE/日 女性650µgRAE/日
30~64歳:男性900µgRAE/日 女性700µgRAE/日
65~74歳:男性850µgRAE/日 女性650µgRAE/日
ビタミンAの効果
ストレスに対する栄養ケア
ストレスが高まると、私たちの体内で様々な生理学的変化が起こり、特に活性酸素が増加します。この活性酸素は脂質と反応して過酸化脂質を生成し、細胞にダメージを与える可能性があります。ビタミンAは、間接的に細胞の健康を保つ役割を果たします。特に、皮膚や粘膜を保護することで、酸化ストレスによるダメージを軽減する働きがあります。
細胞の分化
ビタミンAは、皮膚や粘膜を構成する上皮細胞と免疫系において重要な役割を果たす免疫細胞(B細胞やT細胞)の発生を促進します。また、視細胞においてはロドプシンを合成し、細胞分化の重要なプロセスに関わっています。
夜間視力の維持
ビタミンAは網膜にある色素(ロドプシン)の主要な構成成分です。ロドプシンは光刺激への反応に必要な物質であり、光を感知する能力を提供します。このロドプシンの生成により、特に夜間の視覚において見えにくさを軽減できます。
皮膚の健康維持
ビタミンAは、皮膚や粘膜の細胞分化を助けることで、健康な肌を保つ働きがあります。この作用により、肌のターンオーバーが促進され、シミやたるみの軽減が期待できます。また、肌のバリア機能を整えることで保湿力を高め、乾燥や敏感肌の改善に寄与します。間接的にコラーゲンやヒアルロン酸の働きを支えることで、肌のハリや弾力をサポートします。
免疫の向上
ビタミンAは、皮膚や粘膜の健康を保つために不可欠です。これらの組織は体の最初の防御ラインとして機能し、病原体(細菌やウイルスなど)の侵入を防ぎます。また、免疫系において特に重要な役割を果たすIgA抗体の生成を促進します。IgA抗体は主に粘膜に存在し、外部からの病原体に対する初期防御を提供します。これにより、感染症のリスクが低下します。さらに、白血球、特にリンパ球の増殖と活性化が促進されます。
ビタミンAが不足すると現れる症状
免疫機能の低下
ビタミンAは、免疫細胞の発生や機能を支援するため、その不足は感染症への脆弱性を高めます。特に小児は免疫系が未発達であるため、ビタミンA不足によって感染症のリスクがさらに増大します。
視力への影響
ビタミンAは視覚機能に重要な役割を果たしており、欠乏すると夜盲症や眼球乾燥症などの視覚障害が発生する可能性があります。これらの症状は特に成長期の子どもにとって深刻であり、視覚発達に悪影響を及ぼす可能性があります。
皮膚や粘膜の乾燥
ビタミンA欠乏により、皮膚が乾燥してうろこ状になることがあります。また、皮膚や爪、粘膜が乾燥して脆弱化するため、免疫機能が低下し、ウイルスや細菌に感染しやすくなります。
成長期への影響
ビタミンAは細胞の成長や分化に関与しており、不足すると成長が阻害されることがあります。特に小児の場合、骨の成長プレート(成長軟骨)が正常に機能せず、体の発育や骨の成長に必要な栄養素の不足により、成長遅延が生じることが報告されています。
ビタミンAが不足する原因
食事からの摂取不足
ビタミンAは体内で合成できない栄養素であるため、毎日の食事から摂取することが必要です。好き嫌いや偏った食生活を続けることで、ビタミンAの摂取量が不足する可能性があります。
吸収障害
下痢や胆管閉塞など、腸での栄養吸収が妨げられる疾患や、腸・膵臓の手術後には、脂溶性であるビタミンAの吸収が低下し、欠乏症のリスクが高まることがあります。
肝疾患
ビタミンAは、その大部分が肝臓に貯蔵されています。肝疾患では、この貯蔵機能が障害されることで、ビタミンA欠乏症を引き起こす可能性があります。
ストレスによるビタミンA不足
ストレス状況下では、コルチゾールというホルモンの過剰分泌が起こります。コルチゾールは、体のストレス応答を調整する働きを持ちますが、同時にビタミンAの代謝を阻害し、体内のビタミンAレベルを低下させる可能性があります。また、コルチゾールは酸化ストレスを誘発することで、ビタミンAの分解を促進し、ビタミンA欠乏のリスクを高める可能性があります。
ビタミンA不足によるストレス
ビタミンAは、神経細胞や免疫細胞の健康を維持するために重要な栄養素です。ビタミンAが不足すると、神経系の機能が低下し、不安感や抑うつ傾向などの精神的な問題を悪化させる可能性が示唆されています。また、ビタミンA不足は慢性的な炎症反応を引き起こし、身体的な不快感や痛みを伴う場合があります。こうした身体的な不調が、さらに精神的なストレスを増幅させることがあります。さらに、ビタミンAは免疫機能の維持にも重要であり、不足することで感染症への抵抗力が低下し、健康状態の悪化につながる可能性があります。
ビタミンAを多く含む食品
レバー
鶏レバー100gには、成人の1日の推奨量を大きく上回るビタミンAが含まれています。独特の風味があるため苦手な方もいらっしゃいますが、工夫次第で美味しく食べられるレシピもたくさんあります。下処理や調理が苦手な場合は、スーパーなどで販売されているレバー惣菜を利用するのも一つの方法です。
うなぎ
うなぎは、土用の丑の日などの特別な日に食され、古くから親しまれてきた栄養価の高い食材です。うな重やうな丼といった料理では主役として食卓を彩ります。うなぎのかば焼き100gには、成人1日の推奨量を大きく上回るビタミンAが含まれています。
緑黄色野菜
ほうれん草、にんじん、春菊、小松菜、モロヘイヤ、ブロッコリーなどの緑黄色野菜は、体内でビタミンAに変換されるβ-カロテンを豊富に含む食品です。これらの野菜の中でも、ほうれん草やにんじんは特にβ-カロテンが豊富で、100gあたり600μg以上を含んでいます。そのため、緑黄色野菜は私たちの食事において、ビタミンAの重要な供給源となっています。
ビタミンA不足を解消する方法
ビタミンAを多く含む食品の摂取
ビタミンAは、動物性食品に含まれるレチノールと、植物性食品に含まれるβ-カロテンという2つの形で摂取できます。レバーやうなぎ、ぎんだら、卵黄などはレチノールを豊富に含む食品であり、過剰摂取には注意が必要です。特に、レバーは週に1~2回程度の摂取にとどめましょう。一方、ほうれん草、かぼちゃ、にんじんなどの緑黄色野菜は、β-カロテンを豊富に含んでいます。β-カロテンは体内で必要な分だけビタミンAに変換されるため、過剰摂取のリスクが低く、安心して摂取できる栄養素です。
ビタミンAと一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品
ビタミンAは、油と一緒に摂ると吸収率がアップします。油を使った料理や、アボカドなどの脂質を含む食品と一緒に食べると効果的です。また、ビタミンEはビタミンAの働きを助けるため、ナッツ類や種子類と一緒に摂ると、より効果的にビタミンAを体内に取り込むことができます。さらに、亜鉛はビタミンAの代謝を助けるミネラルです。牡蠣や牛肉など、亜鉛を含む食品と一緒に摂ることで、ビタミンAの効果を最大限に引き出すことができます。
ビタミンAの効果を高める摂取タイミング
ビタミンAは体内に蓄積される脂溶性ビタミンです。そのため、過剰摂取は避け、バランスの取れた食事を心がけることが大切です。様々な食品からビタミンAを摂取し、栄養バランスのよい食事を心がけましょう。
「ビタミンAが不足すると現れる症状」についてよくある質問
ここまでビタミンAが不足すると現れる症状を紹介しました。ここでは「ビタミンAが不足すると現れる症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ビタミンAが不足すると体はどんなサインを発しますか?
丸山 聡子
暗い場所での見えにくさやドライアイ、目の充血や結膜炎、視力の低下などがあります。
ビタミンAが不足すると肌はどのように変化しますか?
丸山 聡子
皮膚の乾燥でかさついたり、かかとがガサガサしたりします。
編集部まとめ
ビタミンA不足は、健康に多くの悪影響を及ぼすことをお伝えしました。好き嫌いや偏った食生活を続けることで、ビタミンA不足の可能性が高まります。
しかし、ご安心ください。ビタミンAを含んでいる食品は、レバーや卵、にんじん、ほうれん草など、私たちの食卓に並ぶ馴染み深いものばかりです。夏にはうなぎやモロヘイヤ、冬には鍋料理で美味しいぎんだらや春菊、まぐろの赤身など、一年を通して様々な食材からビタミンAを摂ることができます。
これらの食材を、主食、主菜、副菜がバランスよく揃った食事を心掛けることで、無理なくビタミンAを摂取できます。1日3食のうち、2回以上このような食事を摂ることを目指しましょう。
日常的に意識して様々な食品を食べることで、健康的な食事に繋がります。
「ビタミンAが不足すると現れる症状」と関連する病気
「ビタミンAが不足すると現れる症状」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
眼科の病気
- 夜盲症
- 眼球乾燥症
皮膚科の病気
- 皮膚の乾燥と角化
「ビタミンAが不足すると現れる症状」と関連する症状
「ビタミンAが不足すると現れる症状」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 目の症状(夜盲症、ドライアイ):糖尿病性網膜症 白内障 緑内障
- 皮膚の乾燥、かさつき:アトピー性皮膚炎 乾癬 甲状腺機能低下症
- 免疫機能の低下、感染症にかかりやすい:HIV/AIDS 慢性ストレス 睡眠不足
- 粘膜の乾燥(口、のど):シェーグレン症候群・脱水症状に類似した症状
- 成長や発達の遅れ(子供の場合):栄養不良 ホルモン異常 慢性疾患
- 疲労感:貧血 慢性疲労症候群 うつ病
- 髪の艶の喪失:鉄分不足 タンパク質不足 ホルモンバランスの乱れ