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「ADHD(注意欠如・多動症)」とは?診断・症状・治療法も解説!医師が監修!

 更新日:2023/08/21
「ADHD(注意欠如・多動症)」とは?診断・症状・治療法も解説!医師が監修!

多様性の時代といわれる昨今、個性を尊重する風潮が広がっていく中で未だに自身の個性によって生きづらさを感じている人もいます。
特に最近よく耳にするADHDを抱える人たちはその代表ともいえる存在かもしれません。今回はそんなADHDについて解説していきます。
現在ADHDでお悩みの人も「もしかして」と不安を抱えている人も、ぜひ最後までご覧ください。

稲川 優多

監修医師
稲川 優多(医師)

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自治医科大学勤務。医学博士、公認心理師。日本精神神経学会精神科専門医・指導医・認知症診療医、日本老年精神医学会専門医・指導医、日本医師会認定産業医、精神保健指定医。

ADHDの特徴

首をかしげる女性

ADHDはどのような病気ですか?

  • ADHDは注意欠如・多動症とも呼ばれ、子供の3〜7%でみられる発達障害です
  • 最近では大人になってから周囲や家族からの指摘によって自身がADHDであることを自覚する人も増えてきています。
  • 主な症状としては注意力散漫(注意欠如)や落ち着きのなさ(多動)が挙げられ、自身で診断できるラインがあいまいであることから精神科・神経科などによる診断が推奨されています。

発生頻度や男女比を教えてください。

  • ADHDは全世界の5%の子供が発症し、そのうち60%が成人まで症状が続くといわれています。
  • 有病率は男児に多く、男女比は2:1~10:1です。
  • しかし、大人になると1:1~2:1と性差があまりなくなります

ADHDの原因は解明されていますか?

  • ADHDの原因はいまだに解明されていません。
  • しかし生物学的要因によって発症するものであるというのが今のところ有力な説とされ、しつけや育て方などの家庭環境との因果関係は認められていません

しつけや育て方が影響するわけではないのですね。

  • 他の家庭に比べて落ち着きや注意力がかけているわが子に対して、しつけや育て方に不安を抱くご両親は少なくありません。
  • しかし、生物学的要因による障害であるとされているため、しつけや育て方によってADHDになるかどうかを左右されることはないというのが多くの医師による見解です。一方で、ADHDの子供に対する接し方の重要性も指摘されています。昔は成長と共に消えていく病気とされていたADHDですが、大人になってから自身がADHDであると気づくケースが多い昨今、ADHDは慢性的な病気であると認識されてきています。
  • ADHDは自信喪失や精神不安定などに陥ると慢性化してしまう可能性があり、これらを防ぐために大切なのがご両親も含めた周囲のサポートです。確かに発症自体にはしつけや育て方は関係ありませんが、その後慢性化するかどうかはご両親を始めとした周囲の環境が左右することもあります。

大人になってからADHDに気づく人もいると聞きます。

  • 大人と子供ではADHDの症状の出方が変わってきます。
  • 子供の頃は落ち着きのなさが目立ちますが、大人になると仕事でのケアレスミスや何度も同じことを注意されたり、タスク管理ができなかったりといった社会生活に支障をきたすような症状が目立ってくることが特徴です。
  • こうした「他とは違う」という認識からセルフチェックによって気づく人が増えています。

ADHDでみられる症状と診断

ハートと親子の手

ADHDでみられる症状を教えてください。

  • ADHDの症状は以下の3つに大別されます。
  • 多動性
  • 衝動性
  • 注意欠如
  • まず多動性は落ち着きのない状態のことをいい、じっと座っていられずに意味もなく体を動かしてしまうことです。多動性と言葉の響きが似ている衝動性は「考えてから動く」ということができず、その場面での自身の衝動を優先してしまうあまりに相手の話を遮ったり、順番を守れなかったりといった行動をとってしまいます。
  • ADHDではない子供にもこういった衝動的な行動は度々みられるため、この症状だけだと判断しかねるという人も多いです。そして注意欠如は、忘れ物が多かったり、ケアレスミスを頻発したりなどが挙げられます。大人になってからADHDだと気づく人の多くは、こうした仕事中の注意欠如からというケースが多いようです。

何がきっかけでADHDに気づくことが多いですか?

  • 子供の頃のADHDはご両親を含めた周囲の人間の気付きによるものが主です。
  • しかし、大人になって社会に出ると周囲との協力は避けて通れません。周囲と協力する中で仕事中に他のことを考えてしまったり、感情をコントロールできなかったりと自身の注意欠如や衝動性が目立ち始め、自身への不安、または他人からの指摘をきっかけにADHDを自覚することが多いです。
  • 逆にいえば周囲との人間関係が希薄だとADHDは気づきにくい病気であるといえます。

ADHDはどのように診断されますか?

  • ADHDの診断基準としては以下のようなものがあります。
  • 忘れ物が多いなどの注意欠如がみられる
  • 一定時間静止していられないなどの多動性がみられる
  • 順番を待っていられないなどの衝動性がみられる
  • 上記3つが同年代、または近い年代の水準よりも顕著である
  • 上記3つのうち、いくつかが12歳未満のときからみられる
  • 学校や職場などの自身を取り巻く環境のうち、2つ以上に障害が出ている
  • 人間関係や仕事などに支障をきたしている
  • 上記の症状が精神疾患などによるものではない
  • このように専門的な診断結果の他にも自身で行ったセルフチェックの結果などと合わせて診察を受けるとより鮮明な診断結果が得られます。

ADHDの治療とサポート

親子

ADHDの治療方法が知りたいです。

  • ADHDの治療方法には以下の3つが有用であるといわれています。
  • 環境への介入
  • 行動への介入
  • 薬物療法
  • 環境への介入は本人が集中しやすい環境づくりや時間配分の調整などを行うことで自己に対する否定的なイメージを抱かせないようにする方法です。本人が集中して周りに合わせられるようにするのではなく、本人が集中できるように周りの環境を工夫するというわけです。行動の介入は、本人が今まで行ってきた周囲とは違う行動を起こさなかった場合に褒めるなどのご褒美を与え、好ましい行動を増やすことを目的としています。これに際して、「ペアレントトレーニング」という保護者に対するトレーニング教室が認知されてきています。環境を変える環境への介入に対して、行動への介入は周囲の人間の接し方を変えるという方法です。
  • 最後に薬物療法はメチルフェニデートやアトモキセチンとグアンファシンという薬が多動性などの症状を抑える薬として知られています。メチルフェニデートは保険適用はされていますが、一部の医師や専門医療機関のみでの取り扱いになるため、服用には受診が必要です。
  • しかし、アトモキセチンとグアンファシンはすべての医師が使用できる薬品として知られています。

薬物療法だけでなく環境も大切なのですね。

  • 周囲の人間と違う行動をとってしまったり、ミスを連発してしまったりなどで自己嫌悪や周囲への劣等感を募らせてしまう人はADHDでは珍しくありません。
  • そういった感情はADHDの予後に非常に悪影響であるため、本人がマイナスの感情を抱かないように環境を整えると効果的です。環境だけではなく周囲の人間の接し方も大切で、ADHDの症状から発生してしまった失敗などを叱りつけることはせず、良い行動をとったときに褒めるということを繰り返していくと良い行動をとるケースが増えていきます。
  • こうした本人に大きな変化を求めない治療がADHDには有用なのです。

周囲の人はどのようにサポートすればよいですか?

  • 前述したようにADHDの症状を咎めるような言動はしてはいけません。周囲と比べず、行動に改善や成長がみられたら褒めることを繰り返してください。抑え込むようにして接してしまうとADHDの症状は良くならず、最悪の場合悪化してしまう可能性もあります。
  • 本人の意思や気持ちを尊重した治療を行えるような周囲のサポートがあれば、ADHDの治療の効果が大いに期待できます。

最後に、読者へメッセージがあればお願いします。

  • ADHDは未だに理解してもらえない部分が多く、治らないまま大人になってしまったADHDの患者さんは社会から孤立してしまうこともあります。
  • 精神疾患との違いもあいまいで分かりづらいため、大人になってもなかなか気づけない人がたくさんいることでしょう。ADHDの治療や気づきには周囲の人間とのコミュニケーションやサポートが大切になってきます。
  • 治療方法や薬なども確立されているので、自身の行動に少しでも周囲とのズレを感じたら今からでも受診して相談することをおすすめします。

編集部まとめ

抱き合う親子現在多くの人が知る発達障害の1つであるADHDに悩む人は多く、成人を迎えてから気づく例が多くあります。
ADHDの多動性や注意力散漫による職場での失敗や失敗に対する周囲からの心無い言葉がきっかけで自身がADHDであることに気づく人や、そこからうつ病などの精神疾患にかかってしまう人も少なくありません。
最近は昔よりもADHDへの理解が深まっているため、医療機関に行く前にセルフチェックを気軽に行うことができます。
「周りと違うかも」と不安に思ったらそのままにはせず、医療機関への相談や治療を検討してみましょう。

この記事の監修医師