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「血圧の左右差」がどれくらいあると「大動脈解離」を発症しやすくなる?医師が解説!

 公開日:2025/12/16
「血圧の左右差」がどれくらいあると「大動脈解離」を発症しやすくなる?医師が解説!

血圧の左右差がどれくらいあると大動脈解離を発症しやすくなる?Medical DOC監修医が血圧の左右差があると大動脈解離を発症しやすくなる原因・血圧の左右差があるとを発症しやすい心疾患・予防法などを解説します。

佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

「大動脈解離」とは?

大動脈解離とは、大動脈の壁が裂けて血液が壁の内側へ入り込み、壁が二層に裂けてしまう、命に関わる疾患です。胸や背中の急激な激痛で発症します。血流が遮断されることがあるため、病変場所によって、さまざまな臓器に障害を起こす可能性があります。

血圧の左右差がどれくらいあると大動脈解離を発症しやすくなる?

明確な基準はありません。ただし、実際に大動脈解離が起きた際には、血圧の左右差が20mmHg以上みられることが多く、重要なサインの一つになります。これは、解離によって片側の腕へ向かう血流が障害されるためです。一方で、血圧に左右差があるからといって、それ自体が大動脈解離を直接起こすわけではありません。左右差が大きい場合は、背景に動脈硬化などが存在する可能性が高く、それが結果として大動脈解離のリスクを高めることがある、ということです。

血圧の左右差があると大動脈解離を発症しやすくなる原因

血圧の左右差自体が大動脈解離を直接引き起こすわけではありません。血圧の左右差が大きい場合、その背景に血管の障害が存在することが多く、この状態が大動脈解離を発症しやすくします。具体的な原因を4つあげて解説いたします。

動脈硬化で鎖骨下動脈や上腕動脈が狭窄すると左右の血圧差が生じます。動脈硬化は、これらの血管だけでなく、大動脈にも影響がおよびます。その結果、大動脈壁の弾力性が失われ、大動脈の解離のリスクが高まります。喫煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧などが要因となります。生活習慣を見直すとともに、異常が指摘された場合は、内科や循環器科を受診ください。

大動脈炎症性疾患

動脈に炎症が起こると、血管の狭窄や拡張が生じて血圧差が生じることがあります。高安動脈炎が代表的な疾患です。炎症が継続すると、血管の壁を内側から慢性的に損傷・変性させるため、動脈硬化とは異なる機序で大動脈壁が脆くなり、大動脈解離のリスクを高めます。症状として、発熱や脈の触れにくさを自覚することも多いです。疑われる場合は、膠原病科、リウマチ科、循環器科を受診してください。

先天性結合組織疾患

遺伝的に大動脈壁が弱い状態です。そのため、動脈が脆く変形しやすいため血圧差が起こります。代表的な疾患はマルファン症候群です。自覚症状がほぼ無いため、発見しづらい疾患ですが、身長が高い、関節が柔らかい、家族歴があるなどが診断の手がかりとなります。疑った場合は、循環器科を受診ください。

未治療の高血圧

高血圧は、大動脈壁に慢性的な過負荷を与えるため、血管が脆くなり、大動脈解離の最大リスク因子となります。健診等で血圧高値を指摘された場合は、自覚症状の有無にかかわらず、内科や循環器科を受診してください。また、普段から自発的に血圧を測定する習慣をつけることが大切です

動脈の解剖学的異常

動脈の分岐角度が鋭い、狭窄や蛇行があるなどの解剖学的異常があると、血流が左右不均等になり血圧差が生じます。この状態が継続すると、慢性的に動脈へ負荷がかかり、血管壁ストレスが増大し大動脈解離の要因となります。診断には、血管エコーやCT検査が有効で、循環器科または心臓血管外科が担当しています。

血圧の左右差があるとを発症しやすい心疾患

血圧の左右差はそれ自体が心疾患の原因とはなりませんが、さまざまな心疾患が隠れている可能性を示す重要なサインです。最も警戒すべき疾患は、大動脈解離ですが、それ以外の疾患を3つご紹介いたします。

大動脈弁閉鎖不全症

大動脈起始部の拡張やマルファン症候群などの血管壁の異常があると、不均等な血流や狭窄が起こり、血圧の左右差を伴うことが多いです。これらの病態があると、大動脈弁の開閉に障害を来し、血液が逆流する「大動脈弁閉鎖不全症」を起こすことがあります。逆流が進行すると、動悸、胸部違和感、息切れなどの症状が起こります。このような症状がある場合は、循環器科を受診し心エコーなどの検査を受けてください。

狭心症

血圧の左右差は、全身の動脈硬化を示唆する指標の1つです。そのため、冠動脈の動脈硬化により狭窄リスクが高まります。冠動脈が狭窄する代表疾患は狭心症です。労作時に、胸痛、胸部圧迫感などの胸部症状が起こることが多いです。これらの症状を認めた場合は、循環器科の受診をお勧めします。

心筋梗塞

血圧の左右差は、全身の動脈硬化が進行している重要なサインです。そのため、冠動脈にも動脈硬化が進行しているため、閉塞リスクが高まります。冠動脈が閉塞する代表疾患は心筋梗塞です。安静や労作に関わらず、胸痛、胸部圧迫感、冷や汗などの症状が起きた場合、心筋梗塞の可能性が高いです。早急な対応が必要ですので、救急車を要請するなどして循環器科や救急科を受診してください。

大動脈解離を予防するには血圧の数値をどれくらいに保つべきか?

血圧高値は大動脈解離の最大のリスク因子となるので適切な血圧管理が重要です。具体的には、130/80 mmHg未満を目標に厳格な血圧管理が望まれます。

大動脈解離の予防法

血圧の管理

大動脈解離の最大の原因は高血圧です。血圧が高値の状態が継続すると、大動脈に負荷がかかり、血管壁が脆くなり裂けやすくなります。適切な血圧管理が重要です。目標血圧は130/80 mmHg未満です。そのためには、減塩(1日6g未満)や有酸素運動が重要です、生活習慣を見直してみましょう。

禁煙

喫煙も最も重要な危険因子の一つです。タバコに含まれる有害物質は、血管壁の弾力を失わせ、脆い状態にしてしまいます。また、喫煙は交感神経を活性化するため、血圧が急上昇し、急激な血圧変動が大動脈解離の引き金となり得ます。禁煙が難しい方は、禁煙外来の利用もお勧めです。

適切なアルコール摂取

長期的な過度のアルコール摂取は高血圧や動脈硬化を進行させ、血管自体が脆くなるため、大動脈解離のリスクとなります。予防には適量を守ることが不可欠で、ビール中瓶1本、または日本酒1合程度が目安となります。

「大動脈解離と血圧の左右差」についてよくある質問

ここまで大動脈解離と血圧の左右差について紹介しました。ここでは「大動脈解離と血圧の左右差」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

血圧に左右差が生じる原因について教えてください。

佐藤 浩樹佐藤 浩樹 医師

代表的な原因は、動脈硬化による鎖骨下動脈や腕頭動脈の狭窄、血管炎による炎症性の狭窄、先天的な血管の曲がりや細さ、胸郭出口症候群による動脈圧迫などがあげられます。血圧の左右差が持続する場合は、血管の異常がある可能性があるため、循環器科を受診ください。

まとめ

血圧の左右差はそれ自体が大動脈解離を直接起こすわけではありませんが、動脈硬化、血管炎、先天的血管異常、高血圧など、血管を弱くする疾患のサインです。加えて、大動脈解離のリスク上昇につながる重要な手がかりともいえるでしょう。日頃から血圧管理、禁煙、適度な飲酒、無理のない運動を心がけ、左右差に気づいたら循環器科での診察を受けることが重要です。

「大動脈解離」と関連する病気

「大動脈解離」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

脳神経系

大動脈解離に関連する疾患は多く、いずれも重症化すると命に関わる危険性が高いものです。しかしながら、高血圧をはじめとする生活習慣病の予防や適切な管理によって、大動脈解離の発症リスクを大きく下げることができます。日頃から血圧管理や生活習慣改善に取り組むことが重要です。

「大動脈解離」と関連する症状

「大動脈解離」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

大動脈解離が発症すると、全身にさまざまな症状が起こります。鑑別が難しいこともたびたびあります。これらの症状が継続する場合は、ためらわずに病院を受診しましょう。

この記事の監修医師