「ヒートショックが起きたら」どのように対処したらいい?医師が徹底解説!

ヒートショックが起きたらどうすればいい?Medical DOC監修医がヒートショックになりやすい人の特徴・症状・発症しやすい状況下・対策などを解説します。

監修医師:
大沼 善正(医師)
目次 -INDEX-
「ヒートショック」とは?
ヒートショックとは、急な温度の変化によって血圧や脈拍が大きく変動し、体に負担がかかる現象のことをいいます。冬の入浴時や、暖かいリビングから寒い脱衣所やトイレに移動したときなど、血管が急に収縮して血圧が上がることで、脳出血や心筋梗塞などを引き起こすことがあります。高齢者や高血圧のある方は特に注意が必要です。
ヒートショックを発症した場合の対処法
浴室から引き上げる
浴室内で意識を失っていた人を発見した場合には、溺水防止のため、まずは浴槽の栓を抜いてお湯を抜きます。可能なら、浴室から引き上げるようにします。人手が足りない場合には、無理をせずお湯を抜くだけにし、救急隊が到着するのを待ちます。
救急車を呼ぶ
呼びかけて意識がない場合には、すぐに救急車を要請します。救急車が到着するまで、心肺蘇生ができるなら、救命率が高まります。以下の手順で行うとよいと思われます。
まず、呼吸を確認するため、倒れている人を仰向けに寝かせて、胸やおなかの動きを観察します。観察する時間は10秒以内にとどめます。普段の呼吸をしていない、またはわからない場合には、「呼吸なし」と判断して、胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行います。あえぐような呼吸をしている場合にも「呼吸なし」と判断します。頸動脈の触知は、可能なら行いますが、胸骨圧迫を優先します。
一人暮らしでヒートショックを発症した場合の対処法
しゃがみ込む
めまいや立ちくらみ、ふらつきがあった場合には、無理をせず、その場にゆっくりしゃがみ込みます。座るよりもしゃがみ込んだほうが、脳への血流が保たれやすく、立ちくらみや意識消失の防止に効果的です。
横になる
上記のような症状がある場合には、スペースがあれば横になったほうが意識を失うのを防ぎやすくなります。症状がよくなった場合にも急に起き上がらず、ゆっくりと起きるようにします。
横になってもふらつき、めまいが続いていたり、胸痛が出現したりする場合には、速やかに救急車を要請しましょう。
ヒートショックになりやすい人の特徴
高齢者
年齢が65歳以上の方は、動脈硬化が進んでいることが多く、温度差による血圧の変動をきたしやすい傾向があります。
めまいや立ちくらみがある場合はすぐに浴室を出て、横になり安静を保ちましょう。長湯を控え、脱衣所と浴室内の温度差を少なくすることが重要です。
意識がなくなる、胸痛や動悸が続くなどの場合には、速やかに救急外来を受診しましょう。
糖尿病・高血圧
糖尿病や高血圧などの動脈硬化因子がある人も注意が必要です。動脈硬化とは、血管にプラーク(コレステロールの塊)などが蓄積することで、動脈の内腔が狭くなったり、動脈が石灰化を起こし硬くなったりすることをいいます。動脈硬化により血圧が上下しやすくなることで、ヒートショックを引き起こしやすくなります。
めまい、ふらつきなどあれば、その場でゆっくりとしゃがむことが大切です。
肥満・睡眠時無呼吸症候群
肥満や睡眠時無呼吸症候群の方は高血圧を起こしやすく、血管への負担がかかっている状態といえます。また睡眠時無呼吸症候群では睡眠時に無呼吸を繰り返すことで、交感神経が優位になっている状態です。そのため、急激な温度変化に対する適応力が低下しており、ヒートショックを起こしやすい状態であるといえます。
胸痛や意識消失がある場合には、速やかに救急車を呼びましょう。
ヒートショックの代表的な症状
めまい・ふらつき
寒い脱衣所から熱い湯に入浴したり、暖かいところから寒いところに移動したりすると、頭がくらくらし、ふらついて倒れそうになることがあります。これは急激な温度変化により血圧や脈拍が変動することが原因です。まずは、その場にしゃがみ、可能なら横になりましょう。
休んでも症状が改善しない場合には、救急外来を受診しましょう。
意識消失
急な温度差により血圧が下がり、脳に行く血流が少なくなることで、意識を失うことがあります。一過性のものであっても、不整脈との鑑別が必要のため、日中であれば内科や循環器内科を受診しましょう。症状が落ち着いている場合でも、病院を受診することが必要です。
胸や背中の痛み
暖かいところから寒いところに移動したときに、血圧が上昇しやすくなります。そのときに心筋梗塞や大動脈解離を発症すると、胸や背中の痛みを感じることがあります。
今までに感じたことのない痛みや、休んでも痛みが改善しない場合は、無理をせず救急車を要請するなど速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
ヒートショックを発症しやすい状況・状態
浴室・脱衣所
浴室と脱衣所の寒暖差が大きい場合には、急激な温度変化により血圧が変動し、めまい、ふらつき、意識消失などを起こしやすくなります。また飲酒後の入浴は、血管が拡張して血圧が下がりやすく、ヒートショックのリスクが高まります。
銭湯・温泉
冬場の露天風呂では、外気温と湯温との温度差により、血圧が変動しやすく、ヒートショックの原因となりえます。またサウナの後の水風呂は、急激に体が冷やされることで血管が収縮し、血圧が上昇することで、脳血管障害や心疾患の発症リスクが高まります。
トイレ
冬場のトイレでは、寒さで血管が収縮し血圧が上がりやすいことに加え、排便時のいきみにより血圧がさらに上昇しやすくなります。
ヒートショックの予防法・対策
脱衣所や浴室を暖める
脱衣所にヒーターを置いたり、浴槽のふたを開けて浴室内を暖めたりすることで、浴室と脱衣所の寒暖差をできるだけ小さくするようにしましょう。
水分補給をする
脱水があると血圧が下がりやすくなるため、入浴前に水分をとり、長湯を避けるようにしましょう。
入浴前に飲酒しない
飲酒後は、血圧が下がりやすくなっています。入浴で体が温まると血管が拡張し、さらなる血圧低下を招くことがあります。飲酒後の入浴を避け、アルコールが抜けてから入浴するようにしましょう。
「ヒートショックが起きたらどうする」についてよくある質問
ここまでヒートショックが起きたらどうするかについて紹介しました。ここでは「ヒートショックが起きたらどうする」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ヒートショックは朝と夜どちらの方が危険ですか?
大沼 善正 医師
朝に血圧が急上昇する「モーニングサージ」という現象が見られる方がいます。睡眠中は交感神経が優位ですが、目覚めとともに交感神経が活発になることで、血圧が急上昇し、早早朝高血圧の原因ともなるモーニングサージを起こすと考えられています。起床してすぐに暖かい寝室から冷えた脱衣所に移動することで、モーニングサージに寒暖差が重なり、血圧が変動しやすくなります。そのため、朝の入浴ではヒートショックのリスクが高まると考えられます。
まとめ
寒い季節になると浴室内でのヒートショックのリスクが高まります。高齢者や高血圧・糖尿病などの動脈硬化のリスクがある方、飲酒後の方はさらにヒートショックを起こしやすくなります。めまい、ふらつき、意識消失であれば一時的なもので済むこともありますが、脳血管障害や心疾患の発症リスクもあるため、脱衣所や浴室内の温度差を少なくするなど、日常のできるところからヒートショックを予防することが大切です。
「ヒートショック」と関連する病気
「ヒートショック」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
ヒートショックは脳血管障害や心疾患を発症する可能性があり、めまい、ふらつき、立ちくらみや胸痛などの症状がある場合には、脳神経内科や循環器内科に相談することをお勧めします。
「ヒートショック」と関連する症状
「ヒートショック」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
ヒートショックでは、症状は一過性のことが多いですが、これらのような症状がある場合には、循環器内科で早めに検査を受けて必要に応じた治療を行うことが推奨されます。
参考文献
- 政府広報オンライン「交通事故死の約 2 倍?!冬の入浴中の事故に要注意!」
- 消費者庁 年末年始に増加する高齢者の事故に注意しましょう!
- 消費者庁 冬場に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!
- 高崎 裕治. ほか. 冬季における高年者の入浴習慣と入浴事故死亡率の地域差に関連する要因. 人間と生活環境. (2011) vol.18, no.2, p.99-106.



