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「心筋梗塞」を発症するとどんな「合併症」を引き起こす?医師が徹底解説!

 公開日:2025/10/18
「心筋梗塞」を発症するとどんな「合併症」を引き起こす?医師が徹底解説!

心筋梗塞の合併症とは?メディカルドック監修医が心筋梗塞の合併症・症状・原因・予防法などを解説します。

佐藤 浩樹

監修医師
佐藤 浩樹(医師)

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北海道大学医学部卒業。北海道大学大学院医学研究科(循環病態内科学)卒業。循環器専門医・総合内科専門医として各地の総合病院にて臨床経験を積み、現在は大学で臨床医学を教えている。大学では保健センター長を兼務。医学博士。日本内科学会総合専門医、日本循環器学会専門医、産業医、労働衛生コンサルタントの資格を有する。

「心筋梗塞」とは?

心筋梗塞とは、心臓の筋肉(心筋)に血液を供給する冠動脈が閉塞し、酸素や栄養が行き渡らなくなることで起こる疾患です。そのため血流が途絶え、心筋が壊死して収縮機能が損なわれます。典型的な症状として、胸の痛みや圧迫感、冷や汗などがあげられます。命に関わる疾患であり、迅速な診断と早期の治療が不可欠です。

心筋梗塞を発症するとどんな合併症を引き起こす?

心筋梗塞は心筋が壊死するため、さまざまな合併症を起こします。以下に代表的な合併症をご紹介いたします。

心不全

心筋の一部が壊死すると、心臓の収縮力が低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなります。その結果、体内に血液や水分が滞留し、呼吸困難や浮腫の原因となります。重症化すると、生命に危険が及ぶことがあるため注意が必要です。

不整脈

心筋梗塞による心筋ダメージは、心臓を動かす電気信号の伝導異常を招き、不整脈を起こします。さまざまな不整脈が起こりますが、中でも、心室細動や心室頻拍は突然死の原因となります。

心破裂

壊死した心筋が脆弱化すると、心臓が破裂することがあります。心筋梗塞の発症早期に多い重篤な合併症で、出血によって心臓周囲に血液が貯留する心タンポナーデを起こし、死に至る危険性が高まります。

心室瘤

壊死した心筋部位が瘢痕化し、心室の一部が膨らむ状態を心室瘤といいます。これにより心臓のポンプ機能が低下し、心不全の進行や血栓形成による塞栓症のリスクが高まります。慢性期の合併症として注意が必要です。

乳頭筋断裂

心臓の弁を支えている乳頭筋が壊死によって断裂すると、僧帽弁閉鎖不全が急速に進行します。その結果、血液が逆流し急性の肺水腫や循環不全を招くことがあり、注意が必要です。迅速な診断と治療が予後に直結します。

心筋梗塞になりやすい人の特徴

高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病を持つ方、喫煙者、肥満、ストレス過多の人は心筋梗塞になりやすいといえるでしょう。具体例を以下に紹介いたします。

喫煙

喫煙は血管を収縮させ、動脈硬化や血栓形成を促進します。そのため、長期的な喫煙者は心筋梗塞の発症リスクが高いです。具体的には、喫煙者は非喫煙者と比較して、心筋梗塞リスクは、男性で4.0倍、女性で8.2倍高くなると報告されています。

過度のストレス

過度のストレスは、自律神経のバランスを乱し、血圧や心拍数を上昇させます。その結果、血管に過剰な負担がかかり、動脈硬化や血栓形成を促進します。さらに、ストレスにより、喫煙、過食、飲酒など不健康な生活習慣を助長することも少なくありません。これらが重なることで、さらに心筋梗塞のリスクが高まります。

多量の飲酒

多量の飲酒は、血圧の上昇や血管内皮機能の悪化を招き、動脈硬化や血栓形成を促進します。結果として、心筋梗塞の発症リスクが高まります。アルコールの摂取量は25g/日以下、あるいはできるだけ減らすことが望ましいです。

心筋梗塞の代表的な症状

心筋梗塞は、治療までの時間が勝負となる重大な疾患です。そのため、症状を理解することは早期発見につながり、命を守るために極めて重要です。代表的な症状を以下に紹介いたします。

胸の強い痛み

心筋梗塞で最も多く現れる症状です。左前胸部を中心に、締め付けられるような感覚、重い物を押しつけられるような圧迫感、灼けるような痛みなど、訴え方は人によって異なります。安静や運動の有無にかかわらず起こり、20分以上続くことが多いです。安静やニトログリセリン舌下でも改善しにくいのが特徴です。直ちに内科や循環器科を受診する必要があります。救急車要請も視野に入れましょう。

冷や汗

突然、冷や汗が出て止まらない場合は注意が必要です。心筋梗塞の発症初期によくみられる症状です。自律神経の過度な緊張により起こります。速やかに内科や循環器科を受診しましょう。

左腕のしびれや肩の痛み

胸痛と同時に、左腕のしびれや肩の痛みが起きることがあります。これらは「放散痛」と呼ばれます。筋肉痛や関節痛と誤解されることも少なくありません。しかしながら、長く続く場合は心筋梗塞が原因である可能性があるため、できるだけ早く医療機関を受診してください。

心筋梗塞の主な原因

心臓は冠動脈という血管から酸素や栄養を取り入れています。この血管がつまって発症したものが心筋梗塞です。冠動脈がつまる原因は、生活習慣病が深く関わっており、特に高血圧、脂質異常症、糖尿病がよく知られています。以下にそれぞれの要点を解説します。

高血圧

血圧の高い状態が長期間続くと、冠動脈の壁には常に大きな負荷がかかるので、動脈硬化が進行しやすくなります。さらに、血管内にプラークが形成されやすくなり、冠動脈がつまる危険性を高めます。初期の高血圧は、自覚症状が乏しいため、放置する人が多く、気づかぬうちに血管を傷めてしまうため注意が必要です。そのため、自覚症状の有無に関わらず、血圧高値を指摘された場合は、医師の指導に基づいた血圧管理が重要となります。

脂質異常症

LDLコレステロールや中性脂肪が高い状態が脂質異常症です。過剰なLDLコレステロールは血管内に沈着し、プラークを形成します。プラークは血管を狭めるだけでなく、破裂することにより血栓を生じます。この血栓により冠動脈がつまることで、心筋梗塞が起こります。脂質異常の有無は血液検査で確認でき、異常があれば医療機関での指導が必要です。

糖尿病

高血糖が続くと、血管内皮細胞に障害が生じ、動脈の壁が固くなりやすくなります。その結果、動脈硬化が加速し、冠動脈の閉塞が起こりやすくなります。初期の糖尿病は自覚症状が乏しいため、異常を指摘されても放置してしまうケースが少なくありません。血糖値が高いと指摘された時は、早めに内科を受診し、適切な治療や生活指導を受けましょう。

心筋梗塞の予防法

予防には、禁煙・適度な運動・バランスの良い食事が基本です。高血圧・糖尿病・脂質異常症の管理を徹底し、ストレス軽減や十分な睡眠を心がけることも重要です。代表的な予防法を以下にご紹介いたします。

摂取エネルギーを適正にする

摂取エネルギーに留意して、適正な体重を維持することが重要です。体重の基準として、BMI25未満(25×(m換算での身長)2未満)をめざすと良いでしょう。また、総摂取エネルギーに対して、脂肪の割合は20~25%,炭水化物の割合は50~60%が理想とされています。

減塩

過度の食塩摂取は高血圧を招き、心筋梗塞の発症リスクをあげますので、減塩は重要です。1日の摂取量6g未満を目標としてください。食塩を多く含む食品として、梅干、漬物、味噌汁、加工肉(ハム、ベーコン、ソーセージ、フライドチキンなど)などがあります。これらの食品の過度の摂取には気をつけましょう。

運動

有酸素運動(ウオーキング、ジョギング、自転車など)がお勧めです。内容として、ややきつめの中等度以上の有酸素運動を、1日30分以上、週に3日以上(可能であれば毎日)、または週あたり150分以上行うことを目標としましょう。

「心筋梗塞の合併症」についてよくある質問

ここまで心筋梗塞の合併症などを紹介しました。ここでは「心筋梗塞の合併症」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

心筋梗塞の致命的な合併症について教えてください。

佐藤 浩樹佐藤 浩樹 医師

心筋梗塞は致命的な合併症が起きやすい疾患です。代表的なものとして、心不全、致死性不整脈、心破裂、心室瘤、乳頭筋断裂などがあり、いずれも迅速な治療が不可欠です。

編集部まとめ 心筋梗塞は予防可能な疾患です。早めのリスク管理を行いましょう。

心筋梗塞は、治療が進歩した現在でも、命を落とす可能性がある重篤な疾患です。しかしながら、予防可能な疾患です。発症には生活習慣病因子が大きく関与しているので、日常生活を見直すようにしましょう。また、異常を指摘された場合は、早期に医療機関を受診し、適切な指導や治療を受けることが重要です。

「心筋梗塞」と関連する病気

「心筋梗塞」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

呼吸器科の病気

整形外科の病気

急性心筋梗塞と似た症状が起こる疾患は多いです。その中には、生命にかかわる疾患もあります。早期の診断と治療は極めて重要なので、医療機関を早めに受診することをお勧めします。

「心筋梗塞」と関連する症状

「心筋梗塞」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胸部圧迫感
  • 冷や汗
  • 左腕のしびれ
  • 左肩の痛み
  • 心窩部痛

これらの症状は心筋梗塞以外でも認められます。症状が強い、持続する場合は、命にかかわる疾患が隠れている可能性もありますので、放置せず医療機関を受診してください。

この記事の監修医師