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心臓の病気「ファロー四徴症」の顔つきの特徴はご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2024/12/24
心臓の病気「ファロー四徴症」の顔つきの特徴はご存知ですか?医師が解説!

ファロー四徴症(ファローしちょうしょう)とは?Medical DOC監修医がファロー四徴症の症状・原因・なりやすい人の特徴・顔つき(見た目)の特徴・平均寿命・治療法・看護などを解説します。

大沼 善正

監修医師
大沼 善正(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学病院、関東労災病院を経て、現在はイムス富士見総合病院勤務。総合内科専門医、循環器専門医、不整脈専門医、医学博士。

「ファロー四徴症」とは?

19世紀末にフランスの医師ファローによって、病態生理が提唱された先天性心疾患です。
特徴として、①心室中隔欠損(右心室と左心室を仕切る壁が欠けている)、②肺動脈狭窄(右心室から肺に行く血管が狭くなる)、③大動脈騎乗(通常左室の上にある大動脈が、右心室の上にまで乗っている)、④右室肥大の 4 つがあることから、ファロー四徴症と言われます。
母胎の中で胎児の心臓が形成される段階で、肺動脈と大動脈を仕切る壁が体の前方にずれたために起こる心臓の異常です。

ファロー四徴症の代表的な症状

チアノーゼ

血液中の酸素が足りなくなり、皮膚、唇、爪などが青紫色になることを言います。哺乳後、入浴後、啼泣(声を上げて泣く)時などにおきます。安静を保ち、呼吸が落ち着く態勢を取りましょう。安静にしてもチアノーゼがよくならない、意識が悪くなり反応が乏しい、ぐったりしているなどの症状が続く場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。
またチアノーゼの患者さんは血液中の酸素を増やそうとするために、ヘモグロビン濃度が濃くなります(多血症)。そのため血栓(血の塊)が出来やすくなり、脳梗塞などの血栓症を来すことがあります。チアノーゼが疑われたときは、医療機関の受診をお勧めします。

蹲踞(そんきょ)

走るなどの運動後に、息が切れてしゃがみこむ姿勢のことを、蹲踞(そんきょ)と言います。しゃがみこむことで、体よりも肺に血液が流れやすくなり、息切れなどの症状が軽くなります。生体の防御反応であり、そのままで息切れが改善する場合には、とくに処置は必要ありません。しかし、しゃがみこんだ後でも息切れが治まらない場合は、医療機関を受診してください。

ばち指

チアノーゼが起こって6ヶ月以上経つと、爪の根元が盛り上がって、太鼓のばちのような形になることがあり、これをばち指と言います。ばち指のみでは処置は必要としませんが、チアノーゼが続いている証拠であり、医療機関にて心疾患の精査をしてもらうのがよいでしょう。

ファロー四徴症の主な原因

心臓の発生過程での異常

生まれつきの病気であり、母胎内の胎児で心臓が形成されてくるとき(心臓の発生過程)の異常が原因です。多くの因子が関わっているとされ、一つの原因で説明することは難しいとされます。遺伝に関しても、単一遺伝子で遺伝するのではなく、多因子遺伝であるとされます。

環境因子

妊娠中の薬剤として、トリメタジオン(てんかん薬)、性ホルモン、サリドマイドなどがファロー四徴症の原因となり得ると言われています。その他、母体がフェニルケトン尿症であった場合も、ファロー四徴症を引き起こす可能性があります。

ファロー四徴症になりやすい人の特徴

22q11.2欠失症候群

22番の染色体が小さな欠失を起こすことによる病気です。その部分に位置する約30個の遺伝子が欠失するために発症します。ファロー四徴症の15%の患者さんが22q11.2欠失症候群と言われます。心臓や大血管の形を決める遺伝が欠けることで、先天性心血管疾患を引き起こし、その他には発達遅延(知的障害)、口蓋裂(唇が割れている状態)、胸腺低形成、低カルシウム血症などが認められます。

ダウン症

21番目の染色体が1本多く3本あるため、21トリソミーと言われます。特徴としては、筋肉の緊張低下、乳児期の活気のなさ、全体的に平らな顔貌、短頭(頭の前後径が短い)、目頭の皮膚が突っ張っている(内眼角贅皮)、目が細く吊り上がっている(眼瞼裂斜上)、耳介の形成異常、発育・発達の遅れ(知的障害)などがあります。母親の年齢が上がることで、ダウン症の可能性が高くなります。

男女差なし

出生数1万人中にファロー四徴症の割合は2.8〜4.1人(約3600人に1人)とされており、男女比はほぼ1:1のため男女差はありません。

ファロー四徴症の顔つき(見た目)の特徴

唇や爪が青紫になる

チアノーゼを起こすために、唇や爪が青紫色になります。ただし、肺動脈の狭窄が軽い場合は、チアノーゼは起こらないこともあります。

腫れぼったい上まぶた、目の開きが小さい、耳介突出、小さな顎など(22q11.2欠失症候群の場合)

22q11.2欠失症候群を合併している場合には、腫れぼったい上まぶた、目の開きが小さい、耳介突出、小さな顎などの特徴を認めることがあります。

平らな顔貌、頭の前後径が短い、目頭の皮膚が突っ張っている、目が細く吊り上がっている(ダウン症の場合)

ダウン症を合併している場合には平らな顔貌、頭の前後径が短い、目頭の皮膚が突っ張っている、目が細く吊り上がっているなどの特徴を認めることがあります。

ファロー四徴症の平均寿命

手術を行わなかった場合は、1 年生存率は 64%、10 年生存率は 23% と報告されています。しかし、ほとんどが新生児期から乳児期の心雑音や、泣いたときのチアノーゼによって発見、診断され、適切な治療が行われます。一般的には1歳前後の間に手術が行われます。手術(心内修復術後)の長期予後は良好で、生存率は術後 40 年で 72% と報告されています。

ファロー四徴症の治療法

内科的治療

重度の肺動脈狭窄や肺動脈閉塞があり、肺への血流が動脈管(大動脈と肺動脈をつなぐ血管)によってまかなわれている場合は、プロスタグランジンE1製剤を投与することで、動脈管を開いた状態にし、血液循環を維持します。
チアノーゼに対しては、β遮断薬を投与し、心臓の負荷を軽減させます。
いずれの薬も呼吸管理が出来る小児科の専門病院で行われます。呼吸の状態に応じて、入院が必要となります。

外科手術

チアノーゼが強いときには、一時的な治療(姑息手術)として、鎖骨下動脈と肺動脈に新たな通り道を作る(バイパスする)ブラロック・トーシッヒ短絡(シャント)手術を乳児期(0~1歳未満)に行います。その後体の成長に合わせて、心内修復術を実施します。
心内修復術は、心室中隔欠損(右室と左室の間にある壁の穴)を閉鎖し、右室流出路(右心室から肺動脈へ行く通り道)を形成することが目的です。この手術は、通常生後1歳前後に行われます。自分の肺動脈弁を残す方法(自己弁温存法)、右室流出路に当て布(パッチ)を用いて拡大形成する方法(右室流出路パッチ拡大術)、人工血管などを使って右室から肺動脈へ通路を作成する方法(ラステリ手術)の3通りがあります。特に肺動脈閉鎖をともなう場合にはラステリ手術が行われます。この場合はある程度成長した1歳半から2歳前頃に手術が実施されます。

家族がファロー四徴症を発症したらどのように看護したらよい?

食事・体重

体重が徐々に減っていないかを見ることで、食事量が少なくなっていないかを確認することが出来ます。また食事量が減っている、食欲がないときには心臓の病気が悪化している可能性も考えられるため、はやめに病院を受診しましょう。

排便

便秘があると、排便の時にいきむことが多くなり、心臓の負担となります。そのため定期的な排便があるかチェックしましょう。整腸剤や緩下剤などで、コントロールすることも必要となります。

睡眠

睡眠環境を整えたり、睡眠時間を確保したりすることで、ストレスによる啼泣(声を上げて泣く)を避けられます。啼泣が続くとチアノーゼの原因にもなり得るため、出来れば睡眠の状態も確認できたらよいでしょう。

「ファロー四徴症」についてよくある質問

ここまでファロー四徴症について紹介しました。ここでは「ファロー四徴症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ファロー四徴症に効果的な薬について教えてください。

大沼 善正大沼 善正 医師

ファロー四徴症のチアノーゼに対しては、β遮断薬が効果的です。また乳児期には動脈管を開存させる目的で、プロスタグランジンE1製剤が使用されることがあります。
ただし、ファロー四徴症の根本治療は手術であり、薬物投与では改善・治癒が出来ないことには注意が必要です。

編集部まとめ

ファロー四徴症はチアノーゼを伴う先天性心疾患では最も頻度が高いとされます。
通常は定期健診での心雑音で指摘されることが多い疾患ですが、それ以外にチアノーゼ、運動時のしゃがみこみがある場合は、医療機関を受診するようにしましょう。
治療法は外科的な手術であり、適切な治療にて良好な予後が期待できるため、早期発見・早期治療が重要です。
ただし、手術が終了した後、成年になってから心臓の弁の不具合が出たり、不整脈が起こったりすることがあります。そのため年1回程度の定期的な心エコー検査等が推奨されます。また抜歯や出血を伴う歯科治療の際には、感染性心膜炎予防のため抗生剤が必要となります。成人した後も、医療機関には定期的に受診するようにしましょう。

「ファロー四徴症」と関連する病気

「ファロー四徴症」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

小児科の病気

ファロー四徴症は22q11.2欠失症候群、ダウン症と合併することがあるため、そのような遺伝疾患があるようでしたら、心疾患にも注意が必要です。

「ファロー四徴症」と関連する症状

「ファロー四徴症」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 息切れ
  • チアノーゼ

ファロー四徴症はほとんどが生後すぐから1歳の間に見つかることが多いと思われます。とくにチアノーゼ、運動時のしゃがみこみ(蹲踞)などあれば、早期に医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師