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【闘病】生まれた翌月に手術。心臓病と共に生まれた赤ちゃん《ファロー四徴症》

 更新日:2024/08/20
~実録・闘病体験記~ 生まれた翌月に手術。心臓病と共に生まれた赤ちゃん《ファロー四徴症》

生まれつきの心臓の病気「ファロー四徴症」。約3600人に1人の確率で起きるとされている指定難病で、生きていくためには心臓の手術が必要です。闘病者の母・豊島さん(仮名)は、妊娠8か月の超音波検査で胎児の心臓の異常を指摘され、息子さんはすでに3回の心臓手術を受けています。現在の状態は落ち着いているものの、入院は続いています。息子さんがファロー四徴症と診断され、その姿を一番近くで見守り続けてきた豊島さんに、病気の発症の経緯とその後の暮らしについて語ってもらいました。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年8月取材。

豊島さん(仮名/闘病者の母)

話者プロフィール
豊島さん(仮名/闘病者の母 ※写真は闘病者)

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大阪府在住。夫と2人の子どもとの4人家族。2020年6月に長男の妊娠が発覚し、同年11月に胎児がファロー四徴症であることが判明。2021年1月19日に帝王切開で出産後、生まれたばかりの息子は半年も経たないうちに3度の手術を受け、手術は無事成功。現在も入院は継続している。

今村 英利

記事監修医師
今村 英利(いずみホームケアクリニック)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

妊娠8か月の超音波検査で胎児の心臓に異常が発覚

妊娠8か月の超音波検査で胎児の心臓に異常が発覚

編集部編集部

ファロー四徴症とは、どのような病気ですか?

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

ファロー四徴症は生まれつきの心臓の病気です。全先天性心疾患の10%前後で、チアノーゼ(血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色すること)を呈する先天性心疾患では、頻度が高いものだそうです。病因には複数の遺伝子がかかわっている(多因子遺伝)と考えられています。

編集部編集部

息子さんの病気が判明した経緯について教えてください。

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

妊娠初期から切迫流産など、危険の多い妊婦生活を送っていました。体調が少し落ち着き始めて迎えた妊娠8か月ごろ、いつものように妊婦健診を受けたとき、検査後に先生が「私は心臓の専門じゃないから詳しくはわからないけど、たぶん心臓の病気がある。今すぐどうこうはしなくても大丈夫だと思うけど、里帰りする病院で詳しく診てもらった方がいい」と言われました。

編集部編集部

予想外の現実を突きつけられて、どのように感じましたか?

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

つわりが長女を生んだときよりもひどかったので、それがやっと落ち着き始めて妊婦生活を楽しみながら過ごそうと思っていた矢先の出来事でしたから、帰り道は不安でたまらなくなって母親に電話したのを覚えています。

編集部編集部

結局、里帰り先で正式に病名が判明したのですね?

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

地元の病院で診察してもらったものの、「ここでは対応できない」と言われて、専門の病院を紹介してもらいました。そこでいろいろな検査をしてもらった結果、「ファロー四徴症」と診断を告げられました。

生まれてすぐに翌月の手術が確定

生まれてすぐに翌月の手術が確定

編集部編集部

息子さんが無事生まれ、ファロー四徴症も確定した?

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

息子は、帝王切開で産みましたが、たくさんの管につながれている息子を見て、初めてことの重大さに気付きました。次の日、改めて先生から出産前の診断と同じでファロー四徴症で間違いないことと、翌月には手術が必要になることを伝えられました。自分自身の入院中は、息子の顔を見るたびに涙が出てきました。退院してからは、同じ境遇のお母さんたちのSNS投稿を見て、だいぶ勇気づけられました。それをきっかけに、比較的落ち着いて息子を見られるようになりました。

編集部編集部

息子さんの病気が判明したときの心境について教えてください。

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

ファロー四徴症と言われてもわけがわからなかったです。先生がしっかり説明してくれていましたが、まったく頭に入ってきませんでした。このお腹にいる子はちゃんと生きられるのか、私がちゃんと育てられるのかという不安が先立ってしまって、涙も出ず、ただ不安しかなかったです。どこか現実逃避していた部分もありました。「もしかしたら、生まれてきたら大したことないかもしれない」と。

編集部編集部

どのように治療を進めていきましたか?

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

生まれてすぐに、肺に血液を流すために動脈管を閉じないようにするプロスタグランジンの点滴をしました。退院するためには、BTシャント手術(肺の血流が少ない病気に対して、肺の血流を増やすために行う手術)が必要だと言われました。息子の場合、右のシャント手術をして、必要であれば左のシャント手術をして、体重10kgを目指して根治手術をするという説明がありました。

編集部編集部

息子さんの治療中の心の支えはなんでしたか?

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

家族ですね。息子を産んでから、実家に半年ぐらい住んでいたのですが、面会から帰るとが飛んで抱きついてきてくれて、それだけで心が癒されました。あと、マイナスなことは言わないにたくさん救われました。

健康な赤ちゃんを産めるのは当たり前ではない

健康な赤ちゃんを産めるのは当たり前ではない

編集部編集部

息子さんの現在の体調や生活などの様子について教えてください。

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

息子は現在も入院していますが、頑張って生きています。術後の感染症、右心不全などで治療中ではあるものの、離乳食も始まり、少しずつですが、回復してくれているみたいです。

編集部編集部

病気の子を持つ母として、もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

医療従事者の方々には感謝の言葉しかないぐらいに、よくしてもらえたので、あなたはマイナスな要素ばかり探すのではなくて、いいところを探しなさいと声をかけたいですね。

編集部編集部

最後に、読者に向けてのメッセージをお願いします。

豊島さん(仮名/闘病者の母)豊島さん

現在、コロナ禍で大変な世の中になり、たくさんの方々が苦しい状況で戦っていると思います。私は息子の出産で、健康な赤ちゃんを産めること、一緒に生活できることが、当たり前のようで当たり前ではないということに、気付かされました。この子がファロー四徴症でなければ、今頃普通に子育てをして、子どもの毎日の成長を楽しみにすごしていたでしょう。現在は成長を楽しむことよりも、今日も生きていてくれてありがとうという感謝の日々を送っています。「命があってこそだ」と息子を産んでからよく思います。

編集部まとめ

ファロー四徴症は一定の確率で起きる病気なので、誰にでも起きる可能性があります。生きていくためには手術が必要ですが、豊島さんの息子さんのように手術後にも感染や右心不全などの症状が起きることもあります。まだ生まれて間もないのに、手術や治療を頑張っている豊島さんの息子さんのことを思うと、胸がいっぱいになります。豊島さんと息子さんから、生きることは当たり前ではなく、感謝すべきことだと教えていただきました。

この記事の監修医師