「心臓発作の主な5つの原因」はご存知ですか？症状や予防法も医師が解説！

「心臓発作」とは？

心臓発作という言葉を聞いたことがある方は多いでしょう。
心臓発作は特定の病気を示す病名ではありません。狭心症や急性心筋梗塞、不整脈による心停止など、命の危険があるような心臓の病気のことを意味する俗称です。
どのような病気が心臓発作の原因となるのか、どのような症状か、どのように対応したらよいのか、といった知っておくべき点について解説します。

心臓発作の主な原因

心臓発作の原因となる代表的な病気には、下記のようなものがあります。

• ・狭心症
• ・急性心筋梗塞
• ・心室細動や心室頻拍などの危険な不整脈
• ・重度の心不全
• ・重度の心臓弁膜症

狭心症

心臓は血液を動かすポンプの働きをしていますが、心臓の筋肉に栄養・酸素を送っている血管を冠動脈と呼びます。その冠動脈の血管の流れが悪くなり、血流が低下することで必要な栄養・酸素が筋肉に供給できずに、血流障害によって痛みなどを生じてしまう状態が狭心症です。
狭心症は生活習慣病などによって引き起こされる動脈硬化が原因となることが多いです。動脈硬化とは、血管が固くなり、内部にプラーク（脂質などが溜まったもの）が付着する状態であり、進行すると血管の内腔が狭くなり、血流が低下します。
狭心症では、締め付けられるような胸の痛みを生じることが多いです。典型的な症状としては、胸の中心～左側の、ギューッと締め付けるような痛み、押しつぶされるような痛みであり、冷や汗や吐気、左肩～顎にかけての苦しさを伴うこともあります。持続時間は5-15分程度のことが多いです。
初期の段階では動いた時に症状が出現する場合も、安静時には症状がないことが多いです。
しかし、動脈硬化が進行した場合や、突然血流が低下すると、安静時にも症状を伴うようになり、より強い症状が長く生じるようになります。
基本的には、これまでなかった胸痛が出現した際には、速やかに循環器科を受診する必要があります。症状が数分で改善し、程度が軽ければ翌日の受診でも問題ないことが多いですが、症状が強い、短時間で繰り返す、安静時にも症状が持続する場合には至急受診を検討しましょう。
また、症状が強く動くのが困難な場合は、迷わず救急要請をしましょう。

急性心筋梗塞

狭心症の状態がさらに悪化した状態であり、冠動脈の血流が途絶し、心臓の筋肉に強いダメージが与えられた状態を急性心筋梗塞と呼びます。
多くの場合、血管内のプラークに傷がつき、血栓が付着することで血管をふさいでしまい（プラークの破綻）、血流が途絶えてしまうことが原因です。
急性心筋梗塞も、狭心症と同様、生活習慣病や喫煙などの生活習慣などによって生じる動脈硬化が原因となることが多いです。
急性心筋梗塞でも胸痛を生じることが多いですが、狭心症よりも症状は強く、長い時間持続します（多くは30分以上）。心筋梗塞では胸痛だけでなく、呼吸困難、意識障害、臓器障害などより重症な症状を生じることも多いです。
また、血管が詰まってしまう場所にもよりますが、心臓の血管の根元に近い部分が詰まってしまうと、より広範囲の心臓の筋肉が障害されるため、より重症となり、突然死の原因となることもあります。
心筋梗塞は緊急での対応が必要であるため、動けないような強い胸痛が出現した場合には、速やかに救急要請を行い、少しでも早く病院で治療を受ける必要があります。

心室細動や心室頻拍などの危険な不整脈

心停止に至ってしまうような、危険な不整脈も突然の心臓発作の原因となることがあります。
特に危険な不整脈としては、心室細動や心室頻拍があります。
心室細動は、血液を送り出すための最も重要な働きをする心室という場所が、異常な電気刺激により痙攣したような状態になってしまうことで、血液を送り出せなくなってしまい、突然の心停止状態となってしまう危険な不整脈です。
心室頻拍も、心室が極端に速く動くことで血液がうまく送り出せなくなってしまった状態で、放置すると心室細動に移行して心停止を来すこともあります。
心室細動や心室頻拍を引き起こす原因としては以下のようなものがあります。

• ・心筋梗塞や狭心症などの、心臓の血流障害（最も多い原因）
• ・心臓の筋肉の障害（心筋症）
• ・心室細動を引き起こす特殊な不整脈（QT延長症候群、Brudaga症候群など）
• ・特別な誘因のない場合（特発性心室細動、特発性心室頻拍）

心室細動は出現してしまうと数秒で意識を失い、心停止となってしまいます。
心室頻拍も治療が遅れると心室細動に移行してしまうこともあります。
しかし、心室細動を起こす前の段階で、短時間の不整脈による動悸などや、心臓の血流障害による胸痛などの自覚症状を伴っていることもあります。
発作が出てからの対応は困難ですが、その前兆となる動悸や胸痛、失神やめまいの段階で循環器科の診察を受けることができれば、心室細動などの発生を防げる可能性はあります。
動悸や胸痛などそれまでない症状が出現した際には、一度循環器科を受診することがとても大切です。

重度の心不全

心不全とは、心臓の機能が低下し、血流がうまく送り出せなくなってしまった状態のことを示します。心臓の血流障害や心筋症、不整脈などのさまざまな心疾患や、高血圧などの生活習慣病が原因で引き起こされることが多い状態ですが、心臓の機能が大きく障害を受けた状態であり、心室細動や心室頻拍などの危険な不整脈を起こしやすくなってしまいます。
心不全では息切れや動悸、胸痛、だるさ、むくみなどの症状が出ることが多く、基本的には進行性の病態であり、進行した状態になると危険な不整脈が出現することがあります。
普段できていた動作で息切れが強くなる、動悸や胸痛、からだのむくみが出現するなどの症状がある際には、速やかに循環器科を受診する必要があります。

重度の弁膜症

心臓の中は4つの部屋に分かれており（上の部屋は右心房と左心房、下の部屋は右心室と左心室）、それぞれの部屋の間と、心臓の出口である大動脈の入り口にはフタ（弁）があります。この弁の閉まりが悪くなる（逆流症）、開きが悪くなる（狭窄症）といった、弁の機能が悪くなった状態を心臓弁膜症と呼びます。
進行してしまうと心不全状態となり、危険な不整脈を引き起こしてしまうこともあります。
多くの場合は徐々に進行してくるため、定期的な健康診断などを受けていれば、早期に発見することができます。
症状としては、息切れや胸痛、動悸やめまいなどが生じることがあります。
それまでなかった症状を自覚するようになった時には、早期に循環器科を受診する必要があります。

心臓発作が起きると現れる症状

胸痛

心臓発作を引き起こす原因として最も多いのは心筋梗塞や狭心症であり、その主な症状は胸痛です。典型的には、胸の中心～左側の締め付けられるような、押しつぶされるような胸痛を生じ、冷や汗や吐気を伴う強い症状が起こります。左肩～顎や奥歯まで苦しくなる放散痛を伴うことも多いです。初期の狭心症では動いた時に症状を生じますが、心筋梗塞や重度の狭心症では安静時にも症状が出現します。
すでに病院からニトロなどの血管拡張剤を処方されていれば速やかに使用しましょう。
数分で改善しないような胸痛の場合は、速やかな救急要請が必要となる、非常に緊急性が高い状態となっている可能性が高いです。
もし短時間で落ち着いたとしても、早期の循環器科受診が必要となります。

動悸

心室頻拍のような頻脈発作が出現した際には、動悸が出現することが多いです（心室細動では数秒で意識が消失するため、動悸を自覚する前に倒れてしまうことも多いです）。
極端な頻脈状態となり血圧が下がるため、めまいや血の気が引く感じ、ひどいと失神を伴うこともあります。
強い動悸や血圧低下症状がある際には無理に動かず、横になって楽な姿勢を取り、速やかに救急要請をする必要があります。

めまい、失神

心室頻拍や心室細動などの不整脈が出現すると、前述のように動悸だけでなく、脳への血流が低下することによって血圧が低下し、強いめまいや気が遠のく、失神するなどの症状を引き起こすことがあります。動悸に伴ってこのような血圧低下症状が出現する際には、速やかに救急要請をする必要があります。
中には、短時間の失神やめまいを前兆として認めることもあります。
これまでにない症状が出現したときには、早期に循環器科受診をすることが大切です。

息切れ

心不全を引き起こした場合に生じやすい症状です。
胸痛や動悸を伴うこともありますが、徐々に出現してくることもあるため、年のせいと思って様子を見られてしまうこともあります。それまでできた動作で息切れが出現するようになった際には、一度病院を受診して相談することが必要です。

心臓発作の予防法

生活習慣に気をつける

多くの心疾患は動脈硬化が原因となるため、最も基本的な点は生活習慣に気をつけることです。気をつけるポイントとしては、以下のような点があります。

• ・塩分をとり過ぎない：1日の塩分量は6g以下を意識する
• ・カロリーをとり過ぎない：通常成人では、年齢や活動量に応じて1800-2600kcal程度のカロリー摂取が推奨されます。さらに、野菜や果物の積極的な摂取、脂分が多い食品をとり過ぎないことが推奨されます。
• ・太り過ぎない：BMI（体重［kg］÷身長［m］2）25未満を心がける
• ・運動習慣：軽く汗ばむ位の有酸素運動を1日60分（歩行なら1日8000歩以上）行う
• ・節酒：エタノールとして1日、男性20-30ml（日本酒1合、ビール中瓶2本、焼酎0.5合、ワイン2杯、ウイスキーダブル1杯に相当）、女性は約半分の10-20ml以下の制限が推奨されます。
• ・禁煙：喫煙は高血圧、心臓・脳血管疾患、肺疾患、悪性腫瘍など、さまざまな疾患リスクとなることが証明されています。

健康診断、定期的な検査を受ける

心臓発作の原因となる疾患の多くは、高血圧などの生活習慣病や、心臓の異常であるため、定期的に健康診断を受けて、身体診察、心電図やレントゲン、採血検査などを受けることで早期の診断、早期治療に繋げることが可能です。
より早い段階で診断・治療を行うことで、危険な状態になるまで病気を放置することがなくなり、心臓発作の予防になります。

治療している病気をしっかりコントロールする

心臓発作の原因となるような病気は生活習慣病や慢性的な心臓病が多く、適切な治療を受けることで病気の進行や心臓への過度の負荷を防止することができます。
高血圧や脂質異常、糖尿病などの生活習慣病や慢性的な心臓病は、治療が不十分であったり、治療を中断してしまうと動脈硬化を進行させ、心臓の負担を増やし、心臓発作の原因となるような病気を引き起こしてしまいます。内服をしっかり継続すること、医師による定期的な病状評価をうけること（診察や検査）、治療が不十分であれば治療強化を検討することが非常に重要です。