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「失神」の3つの原因はご存じですか? 放置リスク・失神外来の受診~治療の流れも医師が解説!

 更新日:2025/07/09

突然意識を失って倒れる「失神」は、決して珍しくない症状なのだそうです。すぐに回復することも多く、「疲れたせいかな」と軽く考えてしまいがちですが、なかには心臓の異常など、命に関わる原因が隠れていることもあります。今回は、失神の原因や対処法、私たちにはあまり馴染みのない「失神外来」について、「高木内科整形外科医院」の高木先生にお話を伺いました。

高木 泰

監修医師
高木 泰(高木内科整形外科医院)

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聖マリアンナ医科大学医学部卒業。その後、聖マリアンナ医科大学病院や関連医療機関にて内科・循環器内科を中心に研鑽を積み、地域医療にも従事。2019年、茨城県水戸市に「高木内科整形外科医院」を開院、院長・理事長となる。医学博士、薬剤師。日本循環器学会認定循環器専門医、日本内科学会認定内科医。

失神とは

失神とは

編集部編集部

まず、失神の原因について教えてください。

高木 泰先生高木先生

大きく「反射性失神」「起立性低血圧」「心原性失神(不整脈や弁膜症など)」の3つに分類されます。この中で、心原性失神は命に関わるリスクの高い失神なので注意が必要です。そのため、医療機関での正確な診断が重要です。

編集部編集部

そもそも失神とは、どういう状態を指すのですか?

高木 泰先生高木先生

失神とは、一時的に脳への血流が不足することによって意識を失う状態を指します。失神の約80%はリスクの低い自律神経系の失神ですが、約10%は命に関わる心原性失神です。いずれの場合も、数十秒~数分で意識が戻ることが多く、後遺症は残らないのが特徴ですが、発生のタイミングや原因によっては大きな事故やけがにつながることもあります。

編集部編集部

立ちくらみとは違うのでしょうか?

高木 泰先生高木先生

立ちくらみは、急に立ち上がった際に起こる軽い血圧低下による起立性低血圧で、失神の原因の約15%と言われています。失神は完全に意識を失うという特徴がある一方、起立性低血圧は意識を失わないことが多く、発症の回数や状況、背景疾患などによって区別が必要となります。高齢者の起立性低血圧は、パーキンソン病などの病気や薬の影響である可能性もあるので、「ただの血圧低下」と思わずに受診をおすすめします。

編集部編集部

失神はどのくらいの頻度で起きるものですか?

高木 泰先生高木先生

「日本では、年間1000人中6人が失神を経験している」というデータがあります。決して珍しい症状ではなく、誰にでも起こり得るものです。特に高齢者では、様々な要因が重なりやすいため、注意が必要です。最近は、当院のように「失神外来」という専門外来もできています。

失神外来とは

失神外来とは

編集部編集部

失神外来という専門外来があるのですか?

高木 泰先生高木先生

はい。失神の原因を的確に見極め、安全に生活できるよう支援することを目的とする専門外来です。繰り返す失神や原因がはっきりしないまま経過している人の評価・対処をおこないます。

編集部編集部

失神外来では、どのような診察や検査をするのでしょうか?

高木 泰先生高木先生

まずは問診で、失神の起きた場面や前兆、持病や服薬状況などを詳しく伺います。そのうえで心電図や血液検査、心エコー、24時間ホルター心電図などを実施し、失神のリスクの高さや頻度などを見極めます。

編集部編集部

受診から治療までの流れを教えてください。

高木 泰先生高木先生

初診では問診と基本的な検査をおこない、必要に応じて精密検査を追加していきます。原因が明らかになれば、それに応じた治療や生活指導をおこないます。また、失神全体の10%は原因不明とも言われていますが、原因が不明の場合でも、危険性の高い失神の可能性を除外しながら、再発予防に向けたアドバイスをおこなっていきます。

失神が不安な人が知っておくべきこと

失神が不安な人が知っておくべきこと

編集部編集部

診断後、失神の治療はどのように進められるのですか?

高木 泰先生高木先生

原因によって異なりますが、例えば自律神経系の失神であれば、失神予防のプリントなどを用いた生活習慣および失神の回避法・対処法の指導が最も有用だと言われています。心臓の病気が原因であればペースメーカーの適応になる場合もあります。必要とされる治療をするだけでなく、例えば「コーヒーの飲み過ぎに注意」など、再発を防ぐための日常生活での注意点まで含めてサポートしていきます。

編集部編集部

失神外来を受診する際、準備しておくといいものはありますか?

高木 泰先生高木先生

発作が起きた時間帯や状況、直前の体調、服薬状況などをメモしておくと診断の手がかりになります。目撃者がいれば、その情報も参考になります。当院のようにホームページから問診票がダウンロードできる医療機関もあるので、活用するのもおすすめです。

編集部編集部

家族が失神を起こしたとき、どのように対応すればいいですか?

高木 泰先生高木先生

まずは安全な場所で、体を横にして安静を保ちます。回復しない場合は、すぐに救急要請をしてください。意識が戻っても、落ち着いたら必ず医療機関を受診しましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

高木 泰先生高木先生

失神は後遺症がないことも多いため、受診を後回しにしてしまいがちですが、きちんと検査と診断を受けることで、適切な対処法が見つかる場合もあります。可能であれば、一度、失神に特化した専門外来を受診してみてください。大きな病院だからといって必ずしも対応できるとは限らないので、まずは一度、失神を専門的に診ている医療機関に相談することをおすすめします。

編集部まとめ

「たった一度の失神だから」と軽く見てしまいがちですが、背後に思わぬ疾患が潜んでいる可能性もあります。原因が明らかになれば適切な治療に進み、再発防止につなげることができます。失神を繰り返している人はもちろんのこと、一度だけでも失神を経験したことのある人は、失神外来に相談してみましょう。

医院情報

高木内科整形外科医院

高木内科整形外科医院
所在地 〒311-4143 茨城県水戸市大塚町1504-1
アクセス JR「赤塚駅」 バスで20分
診療科目 内科、循環器内科、心臓リハビリテーション、失神外来、整形外科

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