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「大動脈解離の原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴・検査法も医師が解説!

 更新日:2023/11/14
「大動脈解離の原因」はご存知ですか?なりやすい人の特徴・検査法も医師が解説!

大動脈解離の原因とは?Medical DOC監修医が大動脈解離の原因・なりやすい人の特徴・検査法・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

武田 美貴

監修医師
武田 美貴(医師)

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平成6年札幌医科大学を卒業し、札幌医科大学放射線科に入局。画像診断専門医となり、読影業務に従事。その後、新たな進路を模索するため、老年医療や訪問医療、リハビリテーションなどを学ぶ。現在は、一周回って画像診断で母校に恩返しをする傍ら、医療事故の裁判では、患者に寄り添う代理人を、画像診断と医学知識の両面でサポートすることをライフワークとしている。

「大動脈解離」とは?

大動脈解離とは、大動脈の内膜が裂ける病気です。内膜が裂けて血液の通り道が、本来のものとは別にできた状態で、放置すると命に関わります。大動脈解離の原因などについて、解説していきます。

大動脈解離の主な原因

大動脈解離とは、血管壁の一部が裂けて別の血液の通り道ができている状態です。大動脈の血管壁は、内膜・中膜・外膜の3層構造になっています。血液が流れる側が内膜で、一番外側が外膜、内膜と外膜の間を中膜といいますが、内膜が裂けて血液が中膜に流れ込み偽腔(ぎくう)を形成します。この偽腔を解離腔といい、本来の血液の通り道を真腔(しんくう)といいます。偽腔の外側には外膜しかないので、血圧に負けて外腔が破れて血管の外に出血すると、命に関わる深刻な状態となります。偽腔に血液が流れ込み、再流入口(リエントリー)より真腔へとふたたび血液が流入していきます。
大動脈解離は、解離が起こった場所で分類されます。現在ではスタンフォード分類がよく使われます。解離が起こった場所が上行大動脈にあるものをA型、上行大動脈に解離がないものをB型と分類します。上行大動脈に解離が起こるA型では、解離が心臓近くまで及んでいるため、大動脈弁閉鎖不全や心臓周囲に血液が溜まる心タンポナーデを合併することがあり、心不全症状が出現します。大動脈解離により大動脈から分岐している血管にも解離がおよび、分岐する血管が閉塞することがあります。脳に向かう血管が閉塞すれば脳梗塞となり、脊髄を養う血管が閉塞すれば下半身麻痺、腹部の血管が閉塞すると腸管壊死となるなど、臓器への血液供給が途絶えることにより、さまざまな症状を示します。特に急性A型解離では、大動脈弁にも影響が及ぶことが多いため基本的に緊急手術となりますが、その手術の準備をしている間に急死してしまうこともあります。

高血圧

慢性的に血圧が高いと、大動脈壁は常にダメージを受け続けることになり、ダメージを受け続けた大動脈壁は脆弱になり、裂けやすくなります。急性大動脈解離を起こした人の70~90%が高血圧とも言われ、高血圧をお持ちの方が突然胸や背中に激痛を感じたとき、大動脈解離が起こっている可能性があります。胸や背中に激痛を感じたら、症状がおさまってもすぐに病院を受診しましょう。循環器内科か胸部外科を受診すると良いでしょう。

交通事故などによる胸部の強打

交通事故などで胸部を強く打ったあと、大動脈解離を起こすことがあります。特にハンドルで胸を強く打った場合などに発生する可能性が高いといわれています。交通事故にあった時は症状がなくても、その後胸や背中に激痛を感じたら、すぐに循環器内科や胸部外科を受診してください。

血管の病気

先天的または後天的に、血管壁が弱くなる病気があります。マルファン症候群のように、先天的に組織が脆弱になる病気の方や、大動脈縮窄症や動脈管改善症の方は大動脈解離のリスクがあります。このような病気がわかっている方は、定期的な受診を欠かさないことと、胸や背中が痛くなったら、すぐにかかりつけ医を受診するようにしてください。

大動脈解離になりやすい人の特徴

大動脈解離は年齢や男女比に特徴があります。また、リスクとなる生活習慣もありますので、解説していきます。

高齢男性

大動脈解離は、女性に比べて男性で約2~3倍多く見られます。60歳以上で高率に起こり、高血圧と密接に関連しています。大動脈解離の発症のピークは、70~80歳代の男性に多く見られます。また動脈硬化との関連が知られています。喫煙や飲酒などの生活習慣は動脈硬化のリスクとして知られています。また季節性があり冬に多く発症し、年齢が上昇するにつれて女性の比率が増加することがわかっています。

マルファン症候群

大動脈解離を引き起こしやすい遺伝性疾患の代表として、マルファン症候群が知られています。マルファン症候群は、遺伝子の異常が原因で組織と組織をつなぐ結合組織が弱くなり、全身で細胞の弾力性が弱くなるという特徴があります。マルファン症候群では、血管壁を脆弱化させて大動脈解離を引き起こします。また血管レベルにおいて中膜壊死や心臓の弁組織に支障を認めることがあります。

生活習慣病

糖尿病や肥満、脂質異常症などの生活習慣病も動脈硬化の原因となるので、大動脈解離のリスクとなります。動脈硬化が進行した血管の内側にコレステロールなどの粥状変化があると血管が狭くなり、血液の流れが悪くなることで大動脈解離の原因となることがあります。

大動脈解離の検査法

胸腹部CT

大動脈解離が疑われる場合、循環器内科または胸部外科を受診します。確定診断には、胸腹部のCT検査が有用です。特に造影剤を使った造影CTが必須であり、造影CTで大動脈に偽腔を確認することで、確定診断となります。しかし、慢性経過で偽腔が血栓で閉塞している場合は、偽腔の描出が見られないことがあります。CT検査は一度に広い範囲を検査できるので、スタンフォードA型解離であるのか、スタンフォードB型解離であるのか、枝分かれした動脈が閉塞しているかどうか、解離が大動脈基部に及んでいるかなど、診断と治療に必要な情報が得られる検査です。

心電図

大動脈解離そのものでは心電図に異常をきたしません。しかし、スタンフォードA型の大動脈解離の場合、心臓の動脈(冠動脈)にまで解離が及ぶと心筋梗塞を起こしたり、心タンポナーデを起こしたりすることで、心電図異常が発生します。心電図検査は数分で終わる簡単な検査であるため、入院の必要はありません。

心エコー

心臓や心臓弁の動きに異常がないか確認する検査です。特にスタンフォードA型の場合、大動脈弁が膨らみ、大動脈弁で血液が逆流するところを心エコーで確認できます。また合併症である心タンポナーデの有無を調べるのにも有効です。この検査も簡単な検査であるため、入院の必要はありません。

大動脈解離を予防する方法

高血圧の予防

高血圧は日常的に大動脈壁にダメージを与えるため、大動脈解離のリスクとなります。したがって、血圧を適切な値にコントロールすることで、大動脈解離の発症予防となります。具体的には減塩や適度な運動などが動脈硬化の進展を防ぎ、高血圧を予防します。

禁煙や飲酒量のコントロール

喫煙は動脈硬化の原因となるため、大動脈解離のリスクとなります。飲酒は少量であれば一時的に血圧が低下しますが、長期的に中等量以上を飲み続けた場合、高血圧の原因となります。喫煙と飲酒は大動脈解離以外にもさまざまな病気の原因となるため、禁煙と適量の飲酒を心がけましょう。

「大動脈解離の原因」についてよくある質問

ここまで大動脈解離の原因などを紹介しました。ここでは「大動脈解離の原因」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

ストレスは大動脈解離を発症する原因と関係はありますか?

武田 美貴医師武田 美貴(医師)

ストレスにより血圧が上がることが知られています。高血圧は大動脈解離のリスク要因となるため、ストレスによる慢性的な血圧上昇は、大動脈解離を発症する原因の一つになる可能性があります。また、大動脈解離が起こる要因が揃っている状態の場合、一時的なストレスであっても一過性の急激な血圧上昇が最後の一押しとなって大動脈解離を起こす可能性があります。
一時的にせよ、慢性的にせよ、強いストレスは身体に悪影響を及ぼすため、日頃からリラックスする時間を設けてストレスケアすることをおすすめします。

編集部まとめ

大動脈解離は、動脈硬化や慢性的な血圧上昇がリスクとなることが知られています。動脈硬化や高血圧は、生活習慣病でも生じる病的状態です。飲酒量のコントロールや禁煙、適度な運動など、普段から規則正しい生活を心がけることで、大動脈解離を防ぐことができる可能性があります。血圧が高い場合は、早めに受診して治療を受けるようにしてください。

「大動脈解離の原因」と関連する病気

「大動脈解離の原因」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器内科/心臓血管外科の病気

  • 大動脈瘤

大動脈解離の症状である胸痛や背部痛は、心筋梗塞などほかの重篤な病気でも生じる自覚症状です。特に大動脈瘤は合併することが多く、大動脈瘤破裂は重篤になります。

「大動脈解離の原因」と関連する症状

「大動脈解離の原因」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

心臓や大動脈の異常は自覚症状が出にくいですが、症状が出現した時には命に関わる状況となることが多いです。強い胸痛や背部痛を自覚した時は、すぐに医療機関への受診を検討してください。

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