早期発見チェック!子どもが発症しやすい「骨肉腫」と成長痛の見分け方とは?医師が解説!

お子さんが膝や肩などの関節周辺を痛がっている場合、その原因が骨肉腫である可能性があります。
骨肉腫とは骨に発生するがんの一種で、患者さんの多くが思春期のお子さんです。
お子さんに現れている症状は、骨肉腫を疑うべき症状なのでしょうか。以下で紹介するポイントを参考にして、チェックしておきましょう。
症状をチェックして不安がある場合は、早めに医療機関で受診してください。

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
目次 -INDEX-
骨肉腫とは
骨肉腫とは骨軟部に腫瘍が生じるがんの一種です。
四肢、特に膝関節周辺に好発します。骨に発生するがんのなかでは発生頻度の高い骨肉腫ですが、がん全体で見ると大変まれながんです。
日本国内では1年間に約200人の患者さんが骨肉腫と診断されています。若年者に発生しやすい点が特徴であり、患者さんの60%は思春期にあたる10歳代です。
原因は特定されていませんが、骨成長の速さと関連していると提唱されています。またp53遺伝子の異常があるLi-Fraumeni症候群や、網膜芽腫を発症している患者さんに、骨肉腫が好発することも知られています。
骨肉腫と診断された患者さんの5年後生存率は約70%です。
子どもに発症しやすい骨肉腫のチェック項目
以下では骨肉腫の症状を解説します。
お子さんに骨肉腫が疑われる症状がないか、チェックしてみてください。骨肉腫は中学生や高校生くらいの年齢に発生しやすいがんです。
発症部位の約70%は膝関節の周囲(大腿骨遠位端や脛骨近位骨幹端)、約10%は肩関節の周囲(上腕骨近位骨幹端)です。お子さんが思春期にあたり、身体の関節に違和感を覚えている様子であれば気をつけて観察してあげましょう。
注目すべきは、痛みの程度、併発症状、痛みが続く期間です。以下で詳しく解説します。
痛みが数ヵ月続いている
骨肉腫になって始めに現れやすい症状のひとつが痛みです。
痛みの特徴は、特定の骨周辺に痛みが続く点と、数週間から数ヵ月痛みが継続する点です。特に足の骨にがんが生じている場合は痛みが出やすく、足を引きずって歩く跛行(はこう)が見られる場合もあります。
特定の骨に数ヵ月以上痛みが続いている場合は骨肉腫に限らず、何かしらの病気が隠れていると疑って医療機関に相談してください。
安静時にも痛みが続く
骨肉腫の痛みは運動時や歩行時に感じられます。しかし、症状が進行すると、夜間や安静時にも強い痛みが現れるようになります。
夜間に強くなる関節痛の症状は成長痛とよく似ており、検査してみるまで厳密には判断はできません。骨肉腫のほかにも、成長痛と症状がよく似た疾患には以下のようなものがあります。
- 大腿骨頭すべり症
- ペルテス病
- 化膿性関節炎
- 腫瘍性病変
安静時に現れる関節の痛みには、上記のような緊急性のある病気が隠れている場合もあります。これらに該当する場合は早めに医療機関で受診しましょう。
原因不明の膝の腫れ・圧痛が起こっている
膝や肩を強くぶつけるといった原因がないにも関わらず、膝や肩に以下のような症状が出ていないでしょうか。該当する場合は骨肉腫の疑いがあります。
- 腫れ
- 痛み(圧痛)
- 熱感
- 関節が動かしにくい
また骨肉腫はまれに骨盤や背骨に生じるケースもあります。
その場合は表面からは腫れが確認しにくく、病気の発見が遅れやすいことも知っておきましょう。重症化する前に、診察を受けておくことが理想的です。
痛みや腫れが悪化している
骨肉腫と混同されやすい成長痛は、長くても数年間で自然と痛みの症状が出なくなり、後遺障害がない疾患です。
しかし骨肉腫の場合はがんの進行に伴い、痛みや腫れの症状が悪化し、麻痺や骨折が引き起こされるケースもあります。
骨折した
骨肉腫が進行すると、軽い怪我や通常動作の衝撃で骨折してしまうケースがあります。
骨肉腫は骨を破壊しながら増殖するため、骨肉腫が進行する程骨は弱くなるためです。このように病気が原因で起こる骨折を病的骨折と呼びます。
骨肉腫はこの病的骨折がきっかけとなって発見されるケースも少なくありません。
骨肉腫が疑われる場合の受診後の検査
患者さんの症状から骨肉腫が疑われる場合は、主に画像検査で骨の状態を確認します。
骨に特徴的な病変が見られる場合は、さらにがんの大きさや広がりを確認します。同時に血液検査も行いますが、骨肉腫の検査においては血液検査は補佐的な役割です。
がんの種類を特定するのは病理検査です。以下では画像検査・血液検査・病理検査、それぞれの検査内容を具体的に解説します。
画像検査
骨肉腫の検査で行われる画像検査には、以下の検査が該当します。
- レントゲン検査
- MRI・CT検査
- 骨シンチグラフィ検査・PET検査
- 胸部CT検査
骨肉腫の検査では、レントゲン検査が重要です。骨肉腫を発症している場合、レントゲン検査では骨膜反応や骨皮質の破壊像など、骨の変化が確認できます。
MRI・CT検査では、骨周辺の病変の広がりを詳しく確認します。また、骨シンチグラフィ検査・PET検査では、ほかの骨に転移がないかの確認が可能です。
さらに骨肉腫は肺に転移しやすいため、別に胸部CT検査も行い、転移の有無を確認しておくことも必要です。
血液検査
骨肉腫を発症している場合、アルカリホスファターゼ(ALP)という酵素が増加するケースがあります。
ただし患者さんが小児の場合、もともと骨の成長が早いためアルカリホスファターゼが多い傾向にあります。そのため、血液検査のみで骨肉腫の診断をすることは困難です。
病理検査
骨肉腫の確定診断を行うためには、病理検査が必要です。腫瘍の一部を針や小手術で採取し、顕微鏡で診断を行います。
病理検査の目的はがんの細かな種類を特定することです。がんの種類を特定できれば、より効率的に治療を進めることが可能になります。
骨肉腫の治療法
骨肉腫の治療期間は約10ヵ月〜1年を要するのが一般的です。
断続的、かつ長期間の入院治療も必要になるため、学童・学生の患者さんは学習や発達の遅れが心配になるでしょう。しかし、小児患者さんの治療と成長を両立させるため、医療機関では多方面から支援するシステムが確立されています。
医師や看護師、チャイルド・ライフ・スペシャリストなど、豊富な知識を持ったスタッフが連携して患者さんを支えます。不安がある場合は医療機関や自治体の相談窓口、ソーシャルワーカーに相談しましょう。
外科的治療
骨肉腫の標準的な治療では、まず投薬で腫瘍を小さくして外科手術で摘出した後、さらに投薬して体内に隠れたがんを減らす方法が取られます。
外科手術では腫瘍が露出しないよう、健康な組織で包み込んで摘出する広範切除が選択されます。広範切除では骨はもちろん、血管・神経・骨の成長に関わる骨端線(こつたんせん)まで切除が必要になるケースが少なくありません。
ここで問題となるのが、骨端線を失ったために足の骨が成長しなくなってしまう点です。そのため再建手術では、延長可能な人工関節を使ったり、義足を前提とした患肢離断術を行ったりします。
内部治療
1970年代に化学療法が骨肉腫の治療に取り入れられるようになってから、転移リスクが抑えられるようになり5年生存率も大きく改善しました。骨肉腫で主に使われている薬は以下の4つです。
- メソトレキセート
- アドリアマイシン
- シスプラチン
- イフォスファミド
これらの薬を用いた化学療法はMAP療法と呼ばれます。シスプラチンとイホスファミドは妊孕性に影響する場合があることも知っておきましょう。
子どもの骨肉腫のチェックについてよくある質問
ここまで骨肉腫のチェック項目・症状・検査方法・治療法などを紹介しました。ここでは「骨肉腫のチェック項目」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
膝の痛みは骨肉腫と判断するべきですか?
膝の痛みがあるならば骨肉腫、とすぐに断定することはできません。医師であってもレントゲン検査で骨の状態を確認するまでは、骨肉腫や成長痛の見極めは難しいとされます。1ヵ月以上痛みが引かない、腫れがあるなど不自然な様子があれば、医師の診察を受けることをおすすめします。
受診の目安を教えてください。
- 強い痛みを訴えている
- 皮膚が腫れ上がっている
- 熱を持っている
- 皮膚が変色している
以上の異変が見られる場合は、骨肉腫に限らず緊急性のある病気が隠れている可能性があります。早めに医療機関で受診しましょう。
編集部まとめ
骨肉腫は小児患者さんの割合が多い、骨に発症するがんです。
骨肉腫を発症すると、長期的に続く関節の痛みや腫れが現れます。さらに骨肉腫が進行すると、軽い衝撃で骨折したり、麻痺が出たりします。
小児の患者さんが多いこともあり、関節周辺の異変が成長痛と混同されやすいため注意しましょう。
1ヵ月以上不自然な症状が続く場合は、医療機関に相談してください。
骨肉腫と関連する病気
「骨肉腫」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
骨肉腫とユーイング肉腫は骨に発生するがんです。いずれも初期症状として骨の痛みが生じますが、成長痛と判別が難しく発見が遅れやすくなっています。
骨肉腫と関連する症状
「骨肉腫」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 痛み
- 腫れ
- 骨折
- 麻痺
関節の痛みが長期間続くようであれば、早めに医療機関に相談しましょう。
参考文献