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『軟部肉腫』ができると現れる症状・原因はご存知ですか?【医師監修】

 更新日:2024/01/09
『軟部肉腫』ができると現れる症状・原因はご存知ですか?【医師監修】

自分や身近な人が軟部肉腫と診断されて、初めてこの名前を聞く方もいらっしゃるのではないでしょうか?
本記事では軟部肉腫について以下の点を中心にご紹介します。

・軟部肉腫の症状や主な原因
・軟部肉腫の診断方法
・軟部肉腫の治療法

軟部肉腫について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

軟部肉腫とは

軟部肉腫とは

軟部肉腫とは何ですか?

軟部肉腫は、体の軟部組織という部位に発生する悪性の腫瘍で、特に若い患者さんに多く見られ、痛みがないために発見が遅れることが多いです。腫瘍の悪性度合はさまざまで、腫瘍が大きくなり、血液の流れに乗って転移していきます。軟部肉腫は30種類以上あり、その中でも発生頻度が高いのが悪性繊維性組織球種と脂肪肉腫です。これらの腫瘍は軟部肉腫の約半数を占めています。また、軟部肉腫は希少がんの一つであり、日本での罹患率は10万人あたり約3人とされています。

軟部肉腫はどこで発症しやすいですか?

軟部肉腫は、筋肉や腱、脂肪、血管、神経、じん帯など、体のやわらかい部位に発生します。この病気は体のどこにでも発生する可能性がありますが、特に四肢に発生する確率が高く、全体の60%が四肢に発生し、そのうち1/3が下肢に発生します。

軟部肉腫は痛みを伴わないことが多く、しこりや違和感があるときに注意が必要です。特に神経の近くに発生すると麻痺などの症状を伴うことがあります。また、深部にできた場合は大きくならないと気付けず、発見が遅れてしまうケースも報告されています。

腫瘍は大きくなると血液の流れにのって転移していきます。肺に転移することが多いので、定期的に胸部CTが行われます。進行すると遠隔転移することもあり、なかでも転移する可能性が高いのが肺です。

30種類以上ある軟部肉腫の中でも発生頻度が高いのが悪性繊維性組織球種で、多くが大腿部にでき、高齢者によく見られます。次に発生頻度が高いのが40~50歳代に多い脂肪肉腫です。これら2種類が軟部肉腫の約半数を占めています。

以上の情報から、軟部肉腫は体の軟部組織、四肢、特に下肢に発生しやすいと言えます。また、痛みを伴わないことが多いため、しこりや違和感があるときには注意が必要です。

軟部肉腫の主な症状は何ですか?

軟部肉腫の主な症状としては、皮下や筋肉の中にできるしこりや腫れが挙げられます。痛みを感じることは少なく、しこりが大きくなって初めて気づくこともあります。特に、深い部位に腫瘍ができた場合、大きくなってから初めて気づくことが多いです。また、大きくなった腫瘍が周囲の神経を圧迫すると、神経障害が起こり、しびれや痛み、感覚が鈍くなるなどの症状が出ることもあります。

軟部肉腫の原因は何ですか?

軟部肉腫の原因は完全には解明されていませんが、遺伝子の異常が多く報告されており、これが原因となっている可能性が高いと考えられています。遺伝子の変異が発生すると、細胞の成長や分裂が異常になり、結果として肉腫が発生する可能性があります。しかし、具体的な遺伝子の変異やそのメカニズムについては、まだ研究が進行中です。

軟部肉腫の診断方法

軟部肉腫の診断方法

軟部肉腫の診断方法は何ですか?

軟部肉腫の診断は主に画像検査と病理組織検査によって行われます。血液検査は軟部肉腫に関わる腫瘍マーカーが存在しないため、現状では有用ではありません。

画像検査としては、単純レントゲン写真やCT、MRI、PET-CTなどがありますが、軟部肉腫の大きさや部位を診断するにはMRI検査が最も有用です。良性と悪性の判断が困難な場合にPET-CT検査が行われる場合もあります。特に手術計画を立てる上でMRI検査が重要です。また、軟部肉腫では、肺への遠隔転移を起こすことがあるため、病期の決定には胸部CTの施行が必要です。

確定診断を得るためには、腫瘍の一部を採取して病理組織診断を行う必要があります。一部の軟部肉腫には遺伝子の異常が報告されているため、遺伝子検査を合わせて行うことで、より正確な診断を得られます。

軟部肉腫はまれな疾患であるため、良性や悪性の鑑別が難しいケースも多く、診断が遅れたり、再発を繰り返して初めて悪性と診断されたりする場合もあります。正しく治療に取り組むためには、専門施設での正確な診断が重要です。また不適切な生検・手術が行われた場合には、より大きな手術が必要になることや、腫瘍周囲の正常な部分まで病気で侵されてしまうこともあるため、専門施設で生検を行うことが望ましいです。

軟部肉腫は子供も発症しますか?

軟部肉腫は、子供も発症する可能性があります。この病気は、しこりや腫れといった症状で現れますが、痛みが伴わないために見逃されることが多く、大きな腫瘤になってから初めて医療機関を受診するケースも少なくありません。

子供の軟部肉腫は、大人とは異なる特性を持つことがあります。そのため、子供に特化した治療法や療養方法が必要となることがあります。治療は手術、薬物療法、放射線治療などがありますが、具体的な治療法は患者の状態や腫瘍の種類によります。

子供が軟部肉腫を発症した場合、その治療は子供自身だけでなく、家族全体に影響を及ぼします。子供の入院生活は、検査や治療に向き合うだけでなく、発達を促すための遊びや学びの場でもあります。そのため、家族や医療チームは、子供が治療を受けながらも可能な限り通常の生活を続けられるようにサポートすることが重要です。

軟部肉腫の治療法

軟部肉腫の治療法

軟部肉腫の放射線療法はどのようなものですか?

軟部肉腫の治療は手術が基本となります。しかし、腫瘍が重要な血管や神経に接しており、十分な切除範囲が担保できない場合や、局所再発のリスクが高い場合、放射線治療が行われます。

放射線治療は、高エネルギーの放射線を用いて腫瘍細胞を破壊し、その成長を抑制する治療法です。手術前に放射線治療を行うことで、腫瘍の大きさを縮小し、手術の範囲を小さくすることが可能となります。また、手術後に放射線を照射することで、残存する可能性のある腫瘍細胞を排除し、再発のリスクを低減することが期待できます。

しかし、放射線治療には副作用も存在します。皮膚の赤みや痛み、疲労感、食欲不振などが一般的です。また、放射線が健康な組織に影響を及ぼす可能性もあります。そのため、治療の適応と副作用の管理には専門的な知識と経験が必要となります。

以上のように、放射線療法は軟部肉腫の治療において重要な役割を果たしますが、その適用は患者の状態や腫瘍の位置、大きさなどにより異なります。したがって、治療方針は医師との詳細な話し合いを経て決定されます。

軟部肉腫の治療にはどのような薬が使用されますか?

軟部肉腫は、成人に発生する肉腫の多くが抗がん剤への感受性が低いとされています。その中でも、ドキソルビシン(DXR)やイフォスファミド(IFM)などが主に使用され、これらは単剤あるいは併用化学療法として行われています。

特定の組織型の肉腫では、上記以外の特定の治療方法を用いる場合もあります。例えば、血管肉腫に対してはパクリタキセルなどのタキサン系薬剤が役立つことが示されています。また、胞巣状軟部肉腫に対しては、スニチニブやセディラニブ、チバンニチブなどが用いられることが報告されています。

一方、炎症性筋繊維芽細胞性腫瘍では、ALK遺伝子再構成のある場合には、クリゾチニブが役立つ可能性が示されています。隆起性皮膚線維肉腫に対しては、イマチニブによる改善の可能性が報告されています。

また、孤立性線維性腫瘍に対しては、スニチニブやソラフェニブ、トーリセルやアバスチンによる症状の改善が報告されており、JAK阻害薬という新薬の研究も進んでいます。

これらの情報は一部の軟部肉腫に対する治療法を示していますが、全ての軟部肉腫に対して同じ治療法が適用できるわけではありません。患者の状態や肉腫の種類により、治療法は異なります。したがって、具体的な治療法については医師との相談が必要です。

軟部肉腫の治療にはどのような手術がありますか?

軟部肉腫の治療には、主に手術が用いられますが患者の年齢や肉腫の種類によって異なります。若年者に好発する横紋筋肉腫や軟部発生ユーイング肉腫などの円形細胞肉腫に対しては、化学療法と手術を組み合わせた集学的治療が行われます。一方、中年から高齢者に発生する非円形細胞肉腫の治療は手術が基本となります。

手術は、腫瘍のまわりの健常な組織を含めて広範に切除することが必要で、そのためには術前にMRIなどの画像検査による十分な評価が行われます。腫瘍が重要な血管や神経に接しており、十分な切除範囲が担保できない場合には、手術前に化学療法や放射線治療を行い、切除範囲を小さくしてから手術に移る場合もあります。また、局所再発のリスクが高いと判断した場合には、術後に放射線照射を追加して行うこともあります。

手術による皮膚や筋肉の欠損が大きい場合は、形成外科による再建術を行うこともあります。また、腫瘍が骨や関節に接していれば、骨や関節を切除し、骨の再建や人工関節による関節再建を行うこともあります。

治療終了後に腫瘍の再発や転移を生じる可能性もあるため、治療後も定期的に通院し、検査を行うことが必要です。初診時あるいは治療経過中に遠隔転移を生じた場合、化学療法による全身治療を行う可能性があります。

軟部肉腫は再発する可能性がありますか?

軟部肉腫の再発については、診断の難しさから、正しく診断されずに再発を繰り返す可能性があるとされています。そのため、早期の検査と治療が重要で、可能な限り専門施設での診断と治療が推奨されています。

また、軟部肉腫の治療は、腫瘍の種類や悪性度合いにより異なりますが、一般的には腫瘍を完全に切除する手術が主となります。しかし、腫瘍が肺など他の臓器に転移してしまった場合、その治療はより複雑となります。転移した箇所が多く、切除手術が困難な場合には、化学療法によって転移箇所を減らしてから手術を行うこともあります。

軟部肉腫の予後は、腫瘍の転移の可能性や治療の進行具合によりますが、転移の可能性が低い場合、手術によって90%が寛解を期待できます。また、転移しやすい軟部腫瘍でも60%が寛解を期待できるとされています。

以上の情報から、軟部肉腫は再発する可能性があると言えます。しかし、早期の発見と適切な治療により、そのリスクは大幅に減少することが可能です。そのため、体の異常を感じた場合は、すぐに医療機関に相談することが重要です。

軟部肉腫の予後を教えてください

軟部肉腫の予後は、腫瘍を切除する手術が可能で、転移の可能性が低い場合、90%が寛解を期待できます。また、転移しやすい軟部腫瘍でも60%が寛解を期待できます。しかし、再発や転移の可能性は常に存在します。
以上の情報を基に、軟部肉腫は早期発見と適切な治療が重要であると言えます。また、再発や転移の予防には、医療だけでなく、自己管理や代替医療も重要な役割を果たすと理解できます。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

軟部肉腫は稀ながんで、早期発見と適切な治療が重要です。まず、異常な腫れや痛みを感じたらすぐに医師に相談してください。診断は通常、画像診断と生検により行われます。確認されたら、専門的な医療施設で治療を受けることを検討してください。治療は手術、放射線療法、化学療法などがあり、病状により適切な治療法が選ばれます。また、心理的なサポートも重要で、心理カウンセラーやサポートグループと接触することも考えてみてください。

編集部まとめ

軟部肉腫
ここまで軟部肉腫についてお伝えしてきました。軟部肉腫の要点をまとめると以下の通りです。

・軟部肉腫は軟部組織に発生するがんの一種で原因は明らかになっておらず、症状は初期段階では症状が現れないことも多いが、痛みや腫れ、体重減少、疲労感などがある。
・軟部肉腫の診断は主に画像診断、生体組織検査、病理学的検査により行われる。
・軟部肉腫の治療法は肉腫を取り除く手術、手術前後の放射線療法、腫瘍の大きさを縮小したり再発を防いだりするための化学療法がある。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師