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【体験談】“長引く筋肉痛”の正体は「骨のがん」だった《骨肉腫》

 公開日:2023/03/31
【体験談】“長引く筋肉痛”の正体は「骨のがん」だった《骨肉腫》

28歳で骨肉腫と診断され、現在は松葉杖と車椅子を使用して生活するましゅーてぃーさん(仮称)。「同じところが2週間~1カ月も筋肉痛が続くなら、必ず整形外科を受診して、CTやMRI検査を受けてください」と訴えます。ましゅーてぃーさんが「骨のがん」とも呼ばれる骨肉腫と判明するまでの経緯や現在の様子を知ることで、病気に対する理解を深めていきましょう。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2022年2月取材。

ましゅーてぃーさん

体験者プロフィール
ましゅーてぃーさん(仮称)

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40代。千葉県在住。2010年、当時看護学生だったましゅーてぃーさんは、半年前からお姉さん座りができない痛みを抱えていた。痛みは特定の姿勢でのみ生じるため、体勢を意識するだけで病院には受診していなかった。その3~4カ月後には右腰から太ももに筋肉痛のような痛みが出現し、体重の掛け方次第で歩けない状態となった。病院にてMRIを撮影したところ、がんセンターを受診するよう紹介状をもらい、「骨肉腫」との診断を受けた。
車椅子三銃士Herz: https://www.youtube.com/channel/UCgjldcCMOaFGY_caieK5Iuw

柏木 悠吾

記事監修医師
柏木 悠吾(医療法人社団橘会橘病院)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

骨肉腫は若い年代に発生しやすい病気

骨肉腫は若い年代に発生しやすい病気

編集部編集部

はじめに、骨肉腫とはどのような病気か教えてください。

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

骨肉腫は「骨のがん」とも呼ばれ、骨に悪性腫瘍が発生する病気です。発症の頻度は大体人口100万人あたり1~1.5人ほどで、10~20代の発症が6割ほどを占めます。次に多いのが40代で、3割程度が発症するとされています。発生しやすいのは長管骨という大腿骨、脛骨、上腕骨、分かりやすく言うなら太もも・すね・腕です。中高年で発症する場合は脊椎や骨盤に発生することもありますが、私は20代なのに骨盤に発生しました。

編集部編集部

ましゅーてぃーさんの場合は、どのような症状で発覚したのですか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

私の場合、20代の頃にお姉さん座りができない症状から始まり、数カ月後には筋肉痛のような痛みも起こり、痛くて歩けなくなるほどでした。はじめの内は「筋肉痛が長引くな」と思っていましたが、歩けなくなるほどになると「さすがにおかしい」と感じて病院を受診しました。1件目の病院ではレントゲン検査だけで原因は不明、2件目の病院でMRI検査をおこなったところ、がんセンターを紹介されました。そして、がんセンターを受診したところ、「骨肉腫」との診断を受けたという流れです。

編集部編集部

やはり、骨肉腫の好発年齢である20代で判明したのですね。

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

そうですね。私は当時看護学生で、看護師になるために必死で勉強していました。実はがんセンターを受診したのが国家試験の2日前で、最悪のタイミングで診断を受けたのです。宣告された日は夜まで何も考えられず、ずっと泣いていました。しかし、泣いていても2日後には勉強を続けてきた看護師国家試験だったので、「受かっても落ちてもいいから必ず受験はしよう」という気持ちに切り替えました。

治療は抗がん剤と手術の併用、場合によっては重粒子線治療も

治療は抗がん剤と手術の併用、場合によっては重粒子線治療も

編集部編集部

大変な時期に宣告を受けましたが、治療はどのように進められたのですか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

骨肉腫の場合、標準治療は「術前抗がん剤→手術→術後抗がん剤」です。私も標準治療をおこない、手術では右の骨盤を切除しました。骨肉腫は範囲の広い病なので、場合によっては重粒子線治療も選択肢に入ってくるそうです。ただし、重粒子線治療をおこなうと、ほかの臓器まで脆くなること、今後歩けなくなる可能性もあることを医師から説明されました。私は医師とも相談したうえで、重粒子線治療はおこなわず、標準治療のみを受けました。

編集部編集部

抗がん剤と手術の併用で副作用や困った症状はありますか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

私の場合はとにかく吐き気が辛く、ご飯をまともに食べられませんでした。病院で食事の配膳カートの音がするだけで吐き気を催してしまうので、食べられるものを探すのが大変でした。家族に色々と差し入れしてもらい、「たこ焼き」が唯一食べられたので、ほぼ毎日食べていました。吐き気は退院後1カ月以上続き、常にビニール袋を手放せない生活でした。

編集部編集部

手術後のリハビリはどのようにおこなったのですか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

私は手術によって骨盤の片方が無い状態で、ほぼ寝たきりに近い状態でした。リハビリの先生が来てくれたのですが、抗がん剤の副作用の影響もあって、起きるだけで精一杯でした。当時は自分の中で「リハビリをしなくてもいいから、毎日リハビリ室には行こう」と目標を立てて過ごしていました。

編集部編集部

発症後に生活はどのように変化したか教えてください。

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

手術で右の骨盤を切除しましたが、右側に体重を掛けなければある程度は松葉杖で動けるようになりました。家の中やコンビニなら松葉杖、ショッピングや電車での遠出には車椅子と使い分けています。障害者手帳のおかげもあって、日常生活は送れていますが、はじめのうちは仕事や外出も1人ではできないもどかしさを感じて過ごしていました。

編集部編集部

治療中のエピソードで印象深い出来事は何でしょうか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

がんセンターに入院していた当時は、東京湾花火大会が開催されていました。病院の窓からその様子が見えるので、入院患者さんや家族だけがその景色を見ることができ、車椅子になんとか座って見た光景が今でも思い出に残っています。

早期発見の大切さ、障害への関心を持ってもらうために活動を続ける

早期発見の大切さ、障害への関心を持ってもらうために活動を続ける

編集部編集部

現在の体調はどうですか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

病気の発覚と治療から10年以上経ちますが、再発・転移もなく過ごせています。現在も痛み止めは使用していますが、体調は安定しているので助かります。退院して間もない頃は、1人で外出もできませんでした。現在は車の運転もできるので、好きなところに行けるありがたさを感じています。

編集部編集部

ましゅーてぃーさんは「Herz(ヘルツ)」というグループで情報発信などの活動をされています。どのようなきっかけで仲間と出会い、活動するようになったのですか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

出会いのきっかけは、車椅子女子のユニット「ビヨンドガールズ」のオーディションでした。ほかにも、それぞれで活動を開始しました。メンバーは医師・看護師・歌手という構成で、車椅子ユーザーへの障害やヘルプマークの認知度を上げるための情報発信をおこなうために「Herz」を結成しました。

編集部編集部

Herzでは、どのような活動をしているのですか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

現在はYouTubeで、私達が愛用する電動車椅子メーカーのWHILL社に関する情報や、バリアフリー情報を動画で投稿しています。ほかにも病気に関連のあるゲストを招いて生配信したり、イベントに出演したりして、自分たちの認知度向上にも力を入れているところです。

編集部編集部

ましゅーてぃーさんがもし昔の自分にアドバイスをするなら何を伝えたいですか?

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

私は現在在宅ワークですが、それまでは介護施設の看護師として勤務してきました。後悔があるとすれば、看護師として臨床を経験できなかったことです。ですから、過去の自分に伝えられるなら「早く看護師になる決断をしなさい」ということです。

編集部編集部

骨肉腫という病気を意識していない人に伝えたいメッセージをお願いします。

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

がんは今や2人に1人がなる病気と言われていますから、私の記事を読んで日々の暮らしを見つめ直し、健康診断を受けるきっかけになれば嬉しい限りです。特に若いお子様を持つ親御さんには、自分のお子様が「筋肉痛がずっと治らない」ような症状がありましたら、病院で詳しい検査を受けるという意識を持ってもえればと思います。

編集部編集部

最後に読者の方にメッセージをお願いします。

ましゅーてぃーさんましゅーてぃーさん

骨肉腫は希少がんに分類されていて、その珍しさから診療できる医師も少ないのが現実です。私のエピソードと似た症状があるときは、様子を見ずに早いうちに検査のできる病院を受診してください。そして、私のように「立てる車椅子ユーザー」もいるということを知ってください。はっきりと見えない障害で車椅子に乗っている人もいます。少しでも障害や病気に興味を持ってくださいましたら、YouTube上で活動している「車椅子三銃士Herz」もご覧いただけますと幸いです。

編集部まとめ

看護学生として夢を叶えようとしたまさにそのタイミングで骨肉腫と診断され、絶望を体験したましゅーてぃーさん。一時は外出も難しい状態でしたが、現在は1人で運転もできるほど安定した体調を維持しています。
骨肉腫は10~20代の若い世代が半数以上を占め、初期症状もわかりにくい疾患です。ましゅーてぃーさんの体験を通して、若い世代の方や子どもを持つ親の方々が病気と障害について関心を持つ機会になることを願います。

この記事の監修医師