「骨肉腫」とは?症状・原因・治療についても解説【医師が監修】
骨肉腫とは骨にできるがんで、非常に稀な希少がんです。10〜20代の肩や膝回りに発生することが多く、骨に変化が出るまで症状が出なかったり、成長痛と間違えてしまったりすることもあります。骨肉腫が疑われる場合はすぐに整形外科を受診しましょう。
今回は骨肉腫の症状と原因、検査や治療方法、年齢差・性差、治療後について解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
骨肉腫とは
骨肉腫とは、どのような病気でしょうか?
骨に発生するがんには2種類あります。がんが骨から発生する原発性骨悪性腫瘍と、ほかの臓器などで発生したがんが骨に転移する転移性骨腫瘍です。このうち、原発性悪性腫瘍のほとんどが骨肉腫です。
骨肉腫の「肉腫」は身体のどこにでもできる可能性のあるがんですが、骨の肉腫は肉腫全体のうち約25%です。発症頻度は50万人に1人と稀で、数の少なさにおいては代表的な希少がんといえます。
骨肉腫がよく発生する場所を教えてください。
骨肉腫以外の、骨にできる肉腫について教えてください。
軟骨肉腫は大腿骨、骨盤、上腕骨に多く発生する肉腫です。特に40歳以上の人に多く発生します。治療は、抗がん剤や放射線治療は効果が見込めないため、手術が中心です。
ユーイング肉腫は骨だけでなく、身体中の軟部組織のどこにでも発生します。主に大腿骨、骨盤骨、脊椎などに発生する、20歳以下の人に多い肉腫です。治療は手術と抗がん剤治療、放射線照射などを行います。
骨巨細胞腫は、厳密には悪性腫瘍ではありません。肺転移や再発する可能性が高いことから中間悪性腫瘍とされています。20代前後に発生することが多い腫瘍です。症状が少なく、骨折するまで無症状のこともあります。治療は薬物療法と手術を使い分けます。
骨肉腫の症状
骨肉腫の症状を教えてください。
また、痛みや腫れは成長痛やスポーツ傷害でも発生します。骨肉腫は成長が活発な10代に発生することが多いため、症状から成長痛と自己判断してしまう場合も多いのです。
ほかに変形性疾患でも同様の症状があるため、症状だけで診断するのは困難です。
骨肉腫があるのに症状が出ない場合や、成長痛と自己判断した場合、肉腫が進行することで骨が弱くなり、病的骨折をしてから見つかることもあります。
骨折してしまうと治療が困難になる場合があるので、骨肉腫の疑いがあると医師に言われたら、松葉杖などを使って疑いがある部位に体重をかけないようにしましょう。
痛みや腫れは数ヵ月から半年以上持続することもあるので、怪我をしていないにも関わらず1ヵ月以上痛みや腫れが引かない場合は、すぐに受診しましょう。
骨肉腫の原因
骨肉腫の原因を教えてください。
骨肉腫の受診科目
骨肉腫が疑われる場合、何科を受診すればいいでしょうか?
また、稀な病気なので、治療経験が豊富な施設や医師の元で治療を行いましょう。
骨肉腫の検査
骨肉腫が疑われる場合の検査について教えてください。
確定診断のためには腫瘍組織を手術で採取して生検を行い、良性なのか悪性なのかなどの病理医の診断が必要です。
また、生検が不適切だと、腫瘍周辺の組織を汚染してしまう場合もあるため、専門的な施設で生検を行うことが望ましいです。
骨肉腫の年齢差・性差
骨肉腫に年齢差・性差はありますか?
骨肉腫の治療方法
骨肉腫の治療方法を教えてください。
手術前後に化学療法が必要なため、治療期間は半年から1年ほどです。手術では、広範切除を行います。腫瘍細胞を残さないため、腫瘍を周りの健常な組織で包んで切除する方法です。腫瘍の周りにある正常な骨や筋肉の一部も一緒に切除します。
できる限り四肢を切断しない患肢温存を目指しますが、病的骨折の場合や腫瘍が重要な血管や神経を巻き込んでいる場合、切断しなければならないこともあるのです。
また、温存できたとしても、自分の骨を利用する再建術や人工関節を用いなければならない場合もあります。小児向けの人工関節では、オーダーメイドの伸長型人工関節が多く使用されています。
骨肉腫は、昔は不治の病と呼ばれていました。しかし、化学療法によって生命予後が改善し、四肢に発生したもので初診時に転移がなければ、5年生存率は70%ほどです。
骨肉腫の治療後
骨肉腫の治療後に気をつけることはありますか?
特に小児は、成長に伴う再手術が必要な場合があること、抗がん剤治療の副作用に伴う白血病などのリスクがあることから、定期的な通院と検査がより必要です。
治療後10年は定期的に通院しましょう。10年が経過してから再発や転移が起こったケースもあるので、その後も1年に1回などの期間で医師に診てもらいましょう。
編集部まとめ
骨肉腫は、骨にできる悪性腫瘍の中でもっとも有名な悪性腫瘍で、数の少なさでは代表的といえる希少がんです。
10〜20代に発生することが多く、よく発生する部位は、大腿骨の膝側や脛骨の膝側などの膝関節の周りや、上腕骨の肩側です。主な症状は痛みや腫れですが、レントゲンで骨に異変が見つかるまで、症状が現れないこともあります。
原因は不明です。疑われる場合は血液検査やレントゲン、CT、MRIなどの画像検査を行いますが、確定診断には生検が必要です。
治療では、主に抗がん剤治療と手術が行われます。再発や転移が起こることも少なくないため、治療後も定期的な通院と検査が必要です。
成長痛と自己判断して発見と治療が遅れてしまうこともあるので、明らかな怪我がないのに痛みが1ヵ月以上続く場合は、整形外科を受診しましょう。