「おなら」がよく出る場合や臭いで「大腸がん」かどうかわかるの?【医師解説】
公開日:2025/11/13


監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。
目次 -INDEX-
「大腸がん」とは?
大腸は、胃、小腸を通過した食べ物が通る最後の通り道です。結腸と直腸を合わせて大腸といいます。この大腸の粘膜から発生するがんを大腸がんと言います。腺腫という良性の腫瘍ががん化して発生したものと、正常な大腸粘膜から直接発生するものがありますが、腺腫から発生したがんが多いです。 がんが進行すると、大腸の内腔が狭くなり、便が通りづらくなります。また、大腸がんの表面が便でこすれることで出血しやすくなり、貧血を起こしたり、腹痛がみられることもあります。おならがよく出る場合大腸がんを疑った方がいい?
おならが多く出たからと言って、すぐに大腸がんを疑うことはありません。しかし、大腸がんが進行すると、腸の内腔が狭くなり、便秘や下痢、便が細くなるなどの症状がみられることがあります。この時に、腸の通過障害が起こることで腸内環境が変化してガスが多く発生し、おならが多くなることもあります。ただし、これは大腸がんだけではなく一般的に便秘が起こる事でも同様の症状がみられるため、大腸がん特有の症状ではありません。お腹が張ったり、便秘や下痢などの消化器症状とともにおならが多くなるようであれば、消化器内科で相談をしてみましょう。おならの臭いで大腸がんかどうかわかる?
おならの臭いでは、大腸がんかどうかはわかりません。一般的におならが臭い場合には、食べ物の影響や腸内環境の乱れ、便秘で便が長く腸管内に留まり発酵がすすむことなどが影響すると考えられます。そのため、おならの臭いのみで病気を区別することはできません。大腸がんの前兆となる初期症状
大腸がんは初期では症状がないことが多いです。がんが進行すると以下のような症状がみられることがあります。血便
大腸がんは粘膜から突出してできた腺腫から発生するものが多いです。大腸がんが大きくなると、内腔に突出し、便が通過しづらくなります。また、内腔に飛び出ているために、便が通過する際に表面がこすれて出血することもあります。便の中に血が混ざり血便を認めることも少なくありません。見た目には問題がなくとも、便潜血検査で陽性となる場合もあります。貧血
大腸がんからの出血が続くと、貧血が進行することがあります。少量ずつの出血の場合には、見た目に出血が分からず、血液検査などで貧血がすすんで初めてわかることも少なくありません。貧血が進行する場合、大腸がんを含めた消化管からの出血の可能性があります。他に貧血を起こしている原因が思い当たらない場合、症状がなくとも精密検査を行った方が良い場合があります。内科・消化器内科で相談をしてみましょう。便秘や下痢など便の性状の変化
大腸がんが大きくなり、内腔が狭くなると便の通過障害がみられるようになります。便が細くなったり、便秘や下痢の症状がみられやすいです。もちろん、大腸がんのみで起こる症状ではありませんが、持続する場合には消化器系の病気がある可能性があります。このような症状が持続する場合には一度消化器内科で相談をするとよいでしょう。大腸がんの原因
遺伝子異常
全大腸がんの約70%は多くの遺伝子の変異が重なって発症する散発性大腸がんと言われています。また、家族性大腸腺腫症といった、生まれながらに持っている遺伝子の異常が原因で起こる遺伝性大腸がんが約5%程度です。残りの20〜30%は明らかな原因は不明ですが、何らかの遺伝的素因の関与が考えられ、血縁者に大腸がんが多い家族集積性大腸がんであると言われます。このように、大腸がんは遺伝子の異常が原因であることが多く、また家族に大腸がんの既往がある方では、注意が必要です。喫煙・飲酒
1日1合以上お酒を飲む人では大腸がんの発生率が高くなることが分かっています。また、喫煙も同様に大腸がんの発生率が上昇します。さらに、喫煙者でアルコールを多く飲むと危険性がより上昇すると言われ、男性では、お酒もたばこも吸わない人と比較すると大腸がんの発生率が3倍と報告されています。肥満
肥満度が上昇すると大腸がんになりやすいことが分かっています。BMI 30kg/m2以上で大腸がんのリスクが上昇すると報告されています。身体活動量が高いほど大腸がんのリスクが低くなることも言われており、適度な運動をしながら適正体重を維持することが大切です。おならがよく出る時に疑う病気・疾患
便秘
便秘で腸内に便が長く貯留すると、腸管内で発酵しガスが発生しやすくなります。このため、便秘が続くとガスが多くなりお腹が張ったり、おならが多くなったりすることもあります。慢性便秘症は10〜15%と、比較的よく見かける病気です。慢性便秘症のリスクとして、女性、身体活動性の低下、腹部の手術歴、精神疾患などの特定の基礎疾患、加齢、薬剤性などが挙げられます。 便秘では、発酵性で吸収されにくい短鎖炭水化物であるオリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールの摂取を制限することが改善につながります。これらの摂取が増えると発酵によるガスの増加にもつながると言われています。ガスが多いと感じたら、これらの食材に気を付けると良いでしょう。また、有酸素運動は便秘の改善に効果があると言われています。過敏性腸症候群
過敏性腸症候群は、大腸や小腸などの消化管に異常がないにも関わらず、下痢や便秘などの便通異常、腹痛、腹満感などの消化管症状が数か月以上続く病気です。時に腸管内にガスが溜まり、おならが増えることも考えられます。日本人の約1割程度の人がこの病気であると言われています。命に関わる病気ではありませんが、消化器症状が持続することで日常生活に支障をきたすことも少なくありません。過敏性腸症候群の原因は分かっていませんが、細菌やウイルスによる腸炎の後に発症しやすいと言われています。 過敏性腸症候群の改善にはまず生活習慣の改善が大切です。暴飲暴食を避けて、バランスの良い食事、ストレスをためず、十分な睡眠をとるように心がけましょう。それでも症状が持続する場合には、消化器内科を受診して相談をしましょう。呑気症
呑気症とは、空気嚥下症ともいいたくさん空気を飲み込んでしまうことによって胃や食道、腸に空気が溜まり、げっぷやおなかの膨満感などが起こる病気です。呑気症の原因は、ストレスである事が多いです。飲食の際に、一緒に少量の空気を飲み込みます。少量であれば問題ありませんが、大量に空気を飲み込むことで症状が生じます。飲食の時だけではなく、緊張や不安があると唾液を飲み込むことが多くなりますが、この時に空気も一緒に飲み込んでしまうことが原因となる事も多いです。このような症状が持続する場合、原因となるストレスを解消したり、リラックスできる様にしたりすることも大切です。しかし、それでも症状の改善がない場合には、心療内科で相談をしてみましょう。「大腸がんとおなら」についてよくある質問
ここまで大腸がんとおならについて紹介しました。ここでは「大腸がんとおなら」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんを発症すると便にどのような特徴が現れますか?
和田 蔵人 医師
大腸がんだけでみられる便の特徴というものはありません。しかし、大腸がんが大きくなることで腸管の内腔が狭くなり、便が細くなったり、便秘や下痢が起こることもあります。また、大腸がんの表面を便が通過する際に出血すると便に血が混ざることもあります。ただし、これらの症状は大腸がんに特有の症状ではありません。これらの症状がある場合には、早めに消化器内科を受診して相談をしましょう。
編集部まとめ 腸のガスが増え、おならに困ったら消化器内科で相談を
お腹にガスが溜まり、おならが多くなり困ることもあるでしょう。ガスの発生は便秘や過敏性腸症候群、吞気症、食事の影響などさまざまな原因で起こります。しかし、そのほかにも、大腸がんにより腸管の運動障害や狭窄が生じ、便秘や下痢の症状、ガスの発生によりおならが増える可能性も考えられます。お腹の張りやガスが増えて、おならが増える症状が持続する場合には、何か消化器系の病気がある事が多いです。消化器内科で相談をしてみると良いでしょう。「大腸がん」と関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は3個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。心療内科の病気
「大腸がん」と関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。 大腸がんは初期では症状がないことも多いです。しかし、がんが進行すると、上記の様な症状がみられることもあります。気になる症状がある場合には、消化器内科を受診しましょう。参考文献