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「デスモイド腫瘍」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

 更新日:2023/03/13
「デスモイド腫瘍」の症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

デスモイド腫瘍という病気をご存じですか。あまり耳馴染みのない病気かもしれません。
ただ腫瘍と聞くと漠然と怖いイメージを抱く方も多いのではないでしょうか。

デスモイド腫瘍は比較的20代~50代くらいの若い世代で多く発症しますが、日本国内でも患者数が少ない希少がんのひとつです。

今回はどんな症状で原因は何なのか・治療法・予後に関しても解説していきます。デスモイド腫瘍について、気になる症状があった方は受診の参考になさってください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

デスモイド腫瘍とはどのような病気?

悩む女性

デスモイド腫瘍とはどんな病気ですか?

デスモイド腫瘍は、全身のあらゆる部位に発生しますが、大腸・結腸や特に四肢や体幹に多くに発生する腫瘍のことです。腫瘍が発生した箇所から血液やリンパ液に乗って別の臓器などに転移することのないことから良性と悪性の中間とされています。
発症する年齢は15歳~60歳ですが、比較的若い世代に多く発生しているようです。40歳が発症のピークだといわれており、男性より女性の方が発症率が高く男性の2~3倍といわれています。
症状は、発生箇所によって異なり、しこり・しびれ・便秘・便の異常・腹痛・腹部膨満感などです。治療は主に手術で切除しますが、術後には化学療法や放射線療法などの追加治療が必要な場合もあります。

デスモイド腫瘍の症状を教えてください。

デスモイド腫瘍は、悪性の可能性が低い腫瘍ですが、発生する箇所により症状は様々です。大腸や結腸に腫瘍が発生した場合は、下痢・便秘・腹部の膨満感・腹痛などです。
腫瘍が増大すると臓器を圧迫するため腹水がたまったり、血圧があがったりすることもあります。四肢や体幹に生じた場合は、しこりが発生したり、腫瘍が神経を圧迫することにより神経障害や痛みを引き起こしたりすることがあります。
また頭頚部と呼ばれる脳と目を除く全ての頭部の領域に腫瘍ができた場合、重要臓器に直接広がったり気管支閉塞などを生じたりして、致死的となることも報告されています。

デスモイド腫瘍の主な原因はなんですか?

デスモイド腫瘍の主な原因は、遺伝子変異が原因と考えられています。ですが、いくつかの報告にも差があり、現時点では、はっきりしたことは分からない状況です。
また、遺伝性の他にも慢性的な炎症や慢性的な腸の疾患・食物繊維の摂りすぎ・アルコールの摂りすぎなどの生活習慣も原因がある可能性があります。
大腸や直腸などの腹腔内にデスモイド腫瘍が発生する場合は、特に高齢者や男性に多く発症し、早期発見が重要です。以下のような要因が考えられています。

  • 遺伝的要因:FAP(遺伝性多発性大腸・結腸腫瘍症)などの遺伝性疾患に関連した要因
  • 慢性的な腸閉塞:大腸や結腸に長期間腫瘍が形成されたことが要因となり、デスモイド腫瘍が発生
  • 炎症性腸疾患:慢性的な炎症性腸疾患(例えばクローン病や潰瘍性大腸炎)が要因
  • 生活習慣:食生活や運動不足、肥満などの生活習慣による要因
  • 環境要因:環境中の汚染物質による要因

デスモイド腫瘍にかかりやすい人の特徴を教えてください。

デスモイド腫瘍は、主に20歳から50歳の成人に多く見られ、発生のピークは40歳といわれ、比較的若い世代が多いです。
腫瘍の発生の仕方でも違いが見られます。大腸などの疾病から腫瘍に変異する場合は、比較的若い世代の男性に多いです。四肢や体幹に腫瘍が発生する場合は、大半が女性で若い世代で、女性は男性より2~3倍の発生頻度だといわれています。
遺伝的な要因もありますので、家族に癌歴がある方や、遺伝性大腸癌を持つ疾患(FAPなど)の方は、デスモイド腫瘍にかかりやすい可能性が高いです。
また、慢性的な便秘や下痢で治療したことがある方もデスモイド腫瘍のリスクが高いことが知られています。

デスモイド腫瘍の診断と治療について

カルテを見る医師

デスモイド腫瘍の診断をするポイントを教えてください。

デスモイド腫瘍の診断で最も有効な診断方法はMRIを用いた検査です。他にもデスモイド腫瘍の診断には、以下のような方法が用いられます。

  • 腹部超音波検査:腹部に腫瘍があるかどうかを確認
  • CTスキャンやMRI:腫瘍の大きさや形状を検査
  • 結腸カメラ検査:大腸や結腸の内部を検査することで、腫瘍があるかどうかを確認
  • 組織検査:腫瘍を摘出し、病理学的に診断
  • 血液検査: 腫瘍マーカーなどの異常値を検出することで診断の可能性。その中で最も確実な診断方法が組織検査。腫瘍が小さい場合は腫瘍部分だけを切除し、大きい場合は結腸全体を切除する場合もある

診断には上記の方法を組み合わせて行い、病気の程度や進行具合を判断していきます。
いろいろな方法がありますが、それぞれ個人の症状やこれまでの既往歴からも検査方法や診断内容も変わってきますので、医師の指示に従ってください。

デスモイド腫瘍の治療は手術が必要でしょうか?

デスモイド腫瘍は、手術で腫瘍を切除することが基本的な治療法です。しかし、近年の研究から手術で切除しなくても、成果観察で腫瘍が縮小されたケースがいくつか報告されています。こういったことから、無症状のデスモイド腫瘍に関しては経過観察が提案されてきています。
これに対し症状を伴うデスモイド腫瘍の治療は、手術が主な治療法です。デスモイド腫瘍は、腫瘍が大きくなると腸を圧迫し血管にも影響を及ぼすため、手術が必要です。手術の種類は、以下のものがあります。

  • 部分切除:腫瘍部分のみを切除する
  • 部分腹腔鏡下手術:腫瘍が発生した部分を含む一部の腸を切除する
  • 大腸全摘除:腫瘍が発生した部分を含む全腸を切除する

また、手術以外の治療法としては放射線療法や化学療法などもありますが、手術が最も効果的です。
手術前後には、医師から予後(進行具合・手術の効果・生・今後の治療方法・生存できる確立など)についても詳しく説明を受け理解しておきましょう。

薬物療法と放射線治療の効果について教えてください。

症状や進行状況により手術が困難な場合や手術後の再発防止のために、薬物療法や放射線療法が用いて治療を行います。薬物療法は、消炎鎮痛剤から様子を見ながらホルモン療法や抗がん剤を使用することで、腫瘍の増大を抑制し症状の進行を防ぎます。
放射線療法は、手術が困難な場合や、手術後の再発防止のための治療法です。また手術と放射線療法の併用は、再発率が低いとされています。
放射線療法では、照射量を調節することで病変を治療するだけでなく、周囲の組織へのダメージを最小限に抑えられるのが最大のメリットです。
ただし、これらの治療は手術に比べて効果は限られているため、手術が困難な場合を除いては、手術を優先します。また、薬物療法や放射線療法には、副作用もあるため医師に相談した上で、ご自身に合った療法の選択や経過をきちんと見て治療を行うことが重要です。

デスモイド腫瘍の予後について

手をつなぐ

デスモイド腫瘍の生存率(余命)はどれくらいですか?

デスモイド腫瘍は悪性のものが少ない腫瘍ですので、生存率は高いです。手術が必要な悪性のものでも、早期発見後に切除などの治療を行うことで5年生存率は90%以上になります。ですが、腫瘍が大きくまわりの臓器にがんが広がっていたり、再発したりすると生存率は低くなります。
これらは、もちろんそれぞれ個人の症状や進行状況により異なりますので、専門の医師の正しい診断と治療が重要です。

治療後、再発する可能性はどれくらいありますか?

デスモイド腫瘍の再発率は、手術や薬物療法など治療法によって異なります。一般的に手術をした後の再発率は低く、約5%〜10%とされています。また手術後は、定期的に検査を行うことが最も重要です。
検査を行うことにより、再発の早期発見から治療を行えますので、万が一再発した場合も予後を改善することができるでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

デスモイド腫瘍は希少がんのため、病院に行き診断名が付くと驚き怖くなってしまう方も多いのはないでしょうか。デスモイド腫瘍は良性の腫瘍も多くあり、致死率もそう高くありません。
ですが、放っておいても大丈夫というものではありませんので、何かいつもと違う体の変化を見つけたらぜひ病院を受診してみてください。

編集部まとめ

手の上にハート
今回は、デスモイド腫瘍について解説を見ていきました。希少がんのデスモイド腫瘍で、病名を知っている方はまだ少ないかもしれません。

それゆえ診断されて不安に思う方へ、少しでも参考になっていれば嬉しいです。

また、デスモイド腫瘍は切除した場合とそうでない場合の再発率はあまり変わらないことが判明しています。

全体的な患者の内、約半数ほどが無治療でも進行しないケースも報告されており、診断された際は治療の前に経過観察を行う場合もあります。

しかしデスモイド腫瘍と診断された際は自分で判断せず、必ず医師の話を聞いて適切な治療を受けるようにしてください。

デスモイド腫瘍もやはり早期発見が何より重要です。
健康診断などの定期健診を忘れず受けるようにし、将来への不安を少しでも取り除きましょう。

この記事の監修医師