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「小腸がん」の初期症状や発症しやすい年齢層はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2025/05/15
「小腸がん」の初期症状や発症しやすい年齢層はご存知ですか?医師が徹底解説!

小腸がんとは?Medical DOC監修医が小腸がんの症状・初期症状・原因・進行速度・少ない原因・検査法・治療法などを解説します。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は消化器外科、消化器内科、産業医を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、永仁会病院に勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。労働衛生コンサルタント。

「小腸がん」とは?

小腸がんとは、小腸に発生する悪性腫瘍のことです。小腸は「十二指腸」「空腸」「回腸」という3つの部分からなり、小腸がんはこれらいずれの部位にも生じる可能性があります。発生する部位の割合は、十二指腸が約45%、空腸が約35%、回腸が約20%と報告されています​。 小腸がんにはいくつかの種類がありますが、一般的に、小腸がんというとこれらの中でも小腸にできる「腺がん」を指すことが多く、本記事でも主に腺がんを念頭に解説します。小腸がんの初期症状、原因、進行の速さ、かかりやすい年齢層、発症確率が低い理由、検査方法、治療方法などについて詳しく解説します。

小腸がんの主な症状

小腸がんは早期には自覚症状がほとんどないことが多いです​。腫瘍が小さいうちは症状が出にくく、気づかれないまま経過してしまいます。しかしがんが進行すると様々な症状が現れます。以下に小腸がんでみられる主な症状を解説します。

腹痛・腹部膨満感(お腹の痛みや張り)

小腸がんがある程度大きくなると、腹痛やお腹の膨満感(お腹が張る感じ)が現れることがあります。これは腫瘍が腸の中を部分的に塞いでしまい、腸の内容物の通過が悪くなるためにみられる症状です。腫瘍がさらに大きくなると腸閉塞(腸の詰まり)を起こし、激しい腹痛や吐き気を伴うこともあります​。普段とは違う腹痛や張り感が続く場合は注意が必要です。上記のような症状がある場合には消化器の専門医を受診し、必要な検査を受けることが早期発見につながります。

吐き気・嘔吐(食後のむかつき)

小腸がんが進行して腸管が狭くなると、食べ物が腫瘍部位で滞留しやすくなるため吐き気(悪心)や嘔吐の症状が現れることがあります。とくに食後しばらくしてから胃の内容物が腸に送られる際に、通過障害があると、むかつきや嘔吐を引き起こします。これらは腸閉塞症状とも呼ばれ、腫瘍によって腸が詰まり気味になることで生じる症状です。このような症状がある場合には消化器の専門医を受診し、必要な検査を受けることが早期発見につながります。

血便

小腸がんからの出血も重要な症状です。腫瘍から出血すると、便に血が混じる場合があります。ただし小腸は大腸より奥に位置するため、出血しても赤い鮮血が出ることは少なく、消化液と混ざって黒っぽいタール状の便(黒色便)として出ることがあります。肉眼では血が分からなくても、便潜血検査で陽性反応が出るケースも少なくありません。

貧血

腫瘍からの慢性的な出血が続くと、貧血になります。貧血になると疲れやすさ、めまい、動悸、顔色の蒼白などの症状が現れるため注意が必要です。小腸がんの患者さんは検診の便潜血検査が陽性だったり、原因不明の貧血が進行していたりすることで精密検査を受け、がんが発見されるケースが多くみられます。貧血症状(階段を上がると息切れする、立ちくらみがあるといった症状)が続くときには、胃や腸からの出血を念頭に医療機関で調べてもらうことが大切です。

小腸がんの前兆となる初期症状

症状が出にくい小腸がんですが、初期段階でまったく兆候がないのか?というと、必ずしもそうとは言い切れません。早期には自覚症状が乏しいとはいえ、注意深くみると「前兆」ともいえるサインが現れている場合があります。以下に、小腸がんの初期にみられる兆候について解説します。

便潜血検査の陽性反応

小腸がんのごく初期には目に見える血便が出ないことが多いですが、便潜血検査でわずかな出血を検出できる場合があります。便潜血検査とは便に微量の血液が混じっていないか調べる検査で、大腸がん検診などでも行われている検査です。健康診断で「便潜血陽性」と指摘された場合、大腸カメラだけで異常が見つからなくても、小腸を含めた消化管全体のどこかで出血している可能性があります。安易に放置せず、必要に応じて消化器内科で追加の検査を相談しましょう。

貧血による症状(疲れやすい・めまいなど)

先述のとおり、小腸がんは初期から慢性的な出血を伴うことで鉄欠乏性貧血という状態になることがあります。顔色が優れず皮膚や粘膜が白っぽい感じになることもあります。貧血は消化管からの持続的な出血を疑わせるサインの一つです。特に閉経後の女性や男性で貧血がみられる場合、胃や大腸の検査を含め念のため調べておくことが推奨されます。小腸がんでも貧血が初発症状となるケースがあり注意が必要です。

軽い腹痛や消化不良感

小腸がんは初期の段階では、かすかな腹部の違和感を感じる方もいます。特に腫瘍が十二指腸にある場合、胃の症状と区別がつきにくく、胃の不調と誤認されることもあります。胃薬を飲んでも改善しない胃部不快感や腹部の軽い痛みが慢性的に続く場合には、消化器専門医を受診して精密検査を受けることが望ましいでしょう。

体重減少・食欲低下

小腸がんの初期には目立つ症状がない分、体重減少や食欲低下などの全身の症状がでることがあります。がん細胞は増殖する際にエネルギーを消費し、また炎症を起こし、食欲を落とすことがあります。そのため、本人は普通に生活しているつもりでも徐々に体重が減っていく場合も少なくありません。特に中高年以降でこのような変化に気づいたときは、念のため消化器系の検診を受けるのがおすすめです。

小腸がんの主な原因

炎症性腸疾患

クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、小腸がん発症のリスク因子の一つです​。炎症性腸疾患では長年にわたる慢性炎症は細胞の遺伝子にダメージを与え、がんの発生リスクを高めると考えられています。炎症性腸疾患の患者さんは定期的な内視鏡検査が推奨されており、小腸がんも念頭に置いた経過観察が重要です。

遺伝性の疾患

遺伝的な要因として、遺伝性の病気が小腸がんの原因となる場合があります。代表的なものは家族性大腸腺腫症(FAP)、リンチ症候群、ポイツ・ジェガーズ症候群などの遺伝性疾患も小腸がんの危険因子です​。これらの病気では消化管に多数のポリープができやすく、ポリープから小腸がんが発生しやすいとされています。

セリアック病など

小腸がんのリスク要因と考えられている代表的な病気はセリアック病(グルテン過敏症)です。セリアック病は小麦などに含まれるグルテンに対する自己免疫反応で小腸に炎症と萎縮を起こします。欧米に多く日本ではまれですが、この病気の患者では小腸がんや小腸リンパ腫の発生リスクが高いことが報告されています。

小腸がんの進行速度

小腸がんの進行速度は、その腫瘍の種類によって異なる場合があります。小腸腺がんは進行が比較的速い傾向のあるがんです。小腸の腺がんの場合、症状が出る頃にはかなり進行していることが多く、診断時に約半数の患者さんで周囲の臓器やリンパ節への転移がすでに認められたとの報告もあります。腺がんは悪性度が高く増殖も速いため、早期発見ができないと短期間で進行してしまうことがあり、注意が必要です。小腸がんは早期発見・早期治療が非常に重要ながんです。上述したような初期症状を手がかりにできるだけ早い段階で見つけることが、その後の予後を大きく左右します。

小腸がんを発症しやすい年齢層

小腸がんの好発年齢(発症しやすい年齢)は50~60歳代と言われています。中高年以降に多く、若年者に生じるケースはかなり稀です。実際、小腸悪性腫瘍全体で20歳代以下の患者は全体の2~3%程度との報告もあり、若年での発症は極めてまれであることがわかります。加齢とともに細胞の修復・再生能力が落ち、長年積み重なったダメージが顕在化してがん発生につながることがあります。その結果、50代以降で小腸がんが見られるようになり、60~70代が発症のピークです。ただし、遺伝性の素因がある方や、クローン病のように若年発症する持病を持つ方では、40代以前でも小腸がんが発生する可能性があります。そのようなハイリスクの方は年齢に関係なく定期的な検査が推奨されます。

小腸がんを発症する確率

小腸がんの発症確率(罹患率)は他の主要ながんと比べて非常に低いものです。日本人が小腸がんになる確率は、生涯で見ても1%未満と推定されています。統計データで見ると、人口10万人あたりの年間小腸がん発症数は、男性で2.61人、女性で1.77人程度という推計値があります。この数字は大腸がん(同じ消化器のがんで日本人に年間100人以上/10万人が発症)などと比べても極めて少なく、小腸がんが稀ながんであることを示しています​。全がんの中での割合も前述したとおり0.5%以下で、例えば大腸がんの約1/100程度の頻度しかありません​。言い換えれば、一般の人が小腸がんになる確率はごくわずかです。しかし、上述した特定のリスク因子をお持ちの方では発症確率が高くなるため注意が必要です。

小腸がんの発症が少ない原因

小腸がんが少ない理由として、以下のことが挙げられます。

胃や大腸に比べ外部からの刺激が少ない

小腸は口から入ってくる食べ物や菌に直接触れることが少ない臓器です。食べ物はまず口腔・食道・胃を通り、その過程である程度殺菌・消化されます。胃の先の十二指腸以降に達する段階では、食塊はドロドロの消化液混じりの状態になっており、口から入った細菌やウイルスなどの多くは胃酸で死滅しています。そのため小腸は口腔・咽頭、食道、胃などに比べて有害な刺激を直接受けにくい環境です。こうした理由から、小腸はそもそも外からの刺激によって細胞ががん化するリスクが低いと考えられています。

腸内細菌の数が少ない

腸内細菌の少なさも小腸がん発生が少ない一因とされています。人間の消化管では大腸に非常に多くの細菌が生息していますが、小腸内の細菌数はそれに比べると格段に少ないのです。大腸の細菌は食物中の成分を分解する過程で発がん物質を産生することが知られています。一方、小腸は大腸ほど細菌が多くなく、内容物も滞留せずに先へと送られていくため、発がん物質が長時間留まることがありません​。このような小腸の環境が、がんの発生を抑えていると考えられます。

粘膜細胞の新陳代謝が盛ん

小腸は粘膜の新陳代謝(生まれ変わり)が活発な臓器です。絶えず栄養を吸収している小腸粘膜の細胞は盛んに分裂・再生を繰り返しており、古くなった細胞やダメージを受けた細胞はどんどん剥がれ落ちて新しい細胞に置き換わっています。胃も粘膜のターンオーバーが速い臓器ですが、小腸はさらに活発です。このように粘膜細胞の新陳代謝が盛んであるため、腫瘍が形成されても腸管から排出されてしまう可能性があります。

小腸がんの検査法

便潜血検査

便潜血検査は大腸がん検診などで用いられる簡便な検査ですが、小腸がんのスクリーニング(ふるい分け)にも有用です。小腸がんから出血がある場合、便潜血検査が陽性になることがあります​。便潜血検査自体は小腸がんに特化した検査ではなく、偽陽性(他の要因で陽性になる)もありますが、まずは手軽に受けられる検査として有効です。小腸がんの疑いがなくても、40歳以降であれば年に1度は便潜血検査を受け、陽性の際には精密検査を受けることが勧められます。

血液検査(腫瘍マーカーなど)

小腸がんでは血液検査によって貧血の有無を確認したり、腫瘍マーカー(がんが産生する物質)の測定を行います。腫瘍マーカーとしてはCEAやCA19-9などが上昇することがありますが、これらは小腸がんに特異的ではなく、大腸がんや膵臓がんなど他のがんでも高値を示します。また腫瘍マーカーは良性疾患(炎症など)でも上がることがあり、小腸がんがかなり進行していても正常範囲のことも少なくありません。したがって、腫瘍マーカーだけで小腸がんを診断することはできません。あくまで補助的な情報として位置づけられます。

カプセル内視鏡

一般的な胃カメラでは十二指腸より先の小腸には届きません。そこでカプセル内視鏡検査やダブルバルーン内視鏡検査といった小腸専用の内視鏡が用いられます。カプセル内視鏡検査は小型カメラを内蔵したカプセルを飲み込むだけで、小腸全域の画像記録ができる画期的な検査です。苦痛が少なく小腸を調べられる一方で、画像上で病変が見つかってもカプセルでは生検をして組織を調べることができないという欠点があります。また腫瘍で腸が狭くなっているとカプセルが途中で留まってしまうリスクもあるため、事前にカプセルの通過性テストを行うなど注意が必要です。

ダブルバルーン内視鏡

ダブルバルーン内視鏡検査は、先端に2つのバルーンが付いた特殊な内視鏡を用いて小腸内を直接進んでいく検査です。これにより小腸の終わりまで到達可能で、腫瘍が見つかればその場で組織検査を行うこともできます。ダブルバルーン内視鏡は実施できる医療機関が限られますが、小腸腫瘍の確定診断に有用な検査です。カプセル内視鏡で病変が疑われた場合などに二段階目の検査として行われます。

小腸がんの治療法

小腸がんと診断された場合、病気の進行度(ステージ)に応じて最適な治療法が選択されます。基本的な治療の柱は手術ですが、早期であれば内視鏡治療、進行がんや再発がんには抗がん剤治療やその他の薬物療法が行われます。以下に主な治療法を解説します。

内視鏡治療

小腸がんがごく早期で粘膜の表層にとどまっている場合、内視鏡による切除が可能なことがあります。特に十二指腸の入口に近い部分で腫瘍が見つかった場合、内視鏡で内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)によって腫瘍を切除できます。これは開腹手術をせずに内視鏡下でがんを取り除く方法で、患者さんの負担が少ない治療です。

手術

手術は、小腸がんの標準的な治療法です。ステージⅠ〜Ⅲのリンパ節転移がないか限定的な範囲であれば、根治手術によって治癒を期待できます。具体的には、腫瘍を含む小腸の患部とその所属するリンパ節もまとめての切除です。十二指腸の腺がんで十二指腸乳頭部に近い場合は、膵臓や胆管を含めた切除を行う場合もあります。ステージⅠ〜Ⅲでは手術が主たる治療となり、可能な限り腫瘍を取り切ることを目指します。

抗がん剤による薬物療法

抗がん剤による薬物療法は、小腸がんが進行して手術では治癒切除が難しい場合や、手術後に再発した場合に行われます。小腸がんは希少ながんのため治療法の確立が遅れていましたが、近年の研究で大腸がんの抗がん剤が有効であることが分かり、現在は大腸がんと同様の治療をすることが一般的です。例えばFOLFOX療法(5-FU系薬+オキサリプラチン)やCAPOX療法(カペシタビン+オキサリプラチン)といった大腸がん標準治療が、小腸がんの進行例にも適用されます。日本でも2018年からステージⅣまたは再発小腸がんに対してFOLFOX療法が保険承認され、使用可能となりました。

免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法

近年は免疫チェックポイント阻害薬が小腸がんの一部に有効な場合があることがわかってきました。手術や抗がん剤治療が行えない方の新たな治療の選択肢となっています。このように、進行・再発小腸がんに対しても徐々に治療の幅が広がってきているのです。希少ながんゆえ治療研究の歴史は浅いですが、国内外で臨床試験が進行中であり、今後さらなる新薬の登場が期待されます。

「小腸がん」についてよくある質問

ここまで小腸がんについて紹介しました。ここでは「小腸がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

小腸がんの生存率はどれくらいなのでしょうか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

小腸がんの5年生存率(診断から5年後に生存している割合)はステージ(病期)によって大きく異なります。国立がん研究センター中央病院でのデータによれば、腺がんの場合でステージⅠは約80~85%、ステージⅡで約78~86%、ステージⅢAで約52%、ステージⅢBでは約21%と報告されています。

小腸がんは希少がんに分類されるのでしょうか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

はい、小腸がんは典型的な希少がん(まれながん)です。希少がんの定義は「患者数が少なく診断や治療の確立が難しいがん」で、国際的には人口10万人あたり年間発症6人未満とされています。小腸がんはまさに該当しており、日本でも発症率が非常に低い希少ながんの一つです。

編集部まとめ 小腸がんは専門機関での検査が必要

小腸がんは小腸に発生する希少ながんで、症状が出にくく早期発見が難しい疾患と言えます。小腸はがんになりにくい臓器であり、発症頻度は非常に低いです。診断にはカプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡など特殊な検査が必要です。治療は手術が中心で、進行例には抗がん剤治療も行われます。小腸がんは40〜60代に多く、症状やリスク因子に注意し、気になることがあれば早めに医療機関を受診してください。日頃から健康管理を心がけ、消化管の健康にも目を向けて過ごしましょう。

「小腸がん」と関連する病気

「小腸がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

良性疾患から悪性疾患まで幅広い疾患と関連がありますので、気になることがあれば医療機関でご相談ください。

「小腸がん」と関連する症状

「小腸がん」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

症状のみではほかの病気との区別がつきづらいです。気になる症状があれば、すぐに医療機関で相談してください。

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