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「骨肉腫の生存率」はご存知ですか?検査や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2023/12/19
「骨肉腫の生存率」はご存知ですか?検査や治療法も解説!【医師監修】

骨肉腫は悪性腫瘍の1つで、以前は不治の病と呼ばれることもありました。現在は新しい術式や化学療法により、5年生存率は格段に上昇しています。

しかし発症する年齢や自覚症状から早期発見が遅れることが珍しくなく、結果として広範囲の切除が必要となってしまう可能性があります。そのため痛み・腫れなどの症状を訴えた場合は、原因を探ることが必要です。

今回は骨肉腫の5年生存率や、症状検査方法について解説していきます。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

骨肉腫とは?

骨肉腫とは骨にできる悪性腫瘍(がん)の1種です。発症は10~20代が中心ですが、30代以降でも発症する場合があります。骨肉腫は骨腫瘍の1種ですが、骨腫瘍と呼ばれる疾患は約50種類存在するため、治療の際は早期の特定が重要です。また以前は発症した場合、発症箇所を切除する必要がありましたが、現在は切断を行わない術式が一般的です。

骨肉腫の5年生存率

骨肉腫は不治の病として、発症後の生存率が低い疾患でした。現在は有効な化学療法の発見や新しい術式により、5年生存率は70%を越えています。この70%という数値は、初診のタイミングで転移が確認されていない症例の場合です。
発症の確認が遅くなると転移の可能性が高まるため、生存率を高めるためには検査を少しでも早く受けることが重要です。

骨肉腫の症状は?

骨肉腫を発症するとさまざまな症状が現れます。骨肉腫は上記で解説した通り10~20代に多く発症が確認されるため、その症状を成長痛と勘違いされ発見が遅れることも少なくありません。骨肉腫の症状と他の症状を見分けるには、専門家の検査が必要不可欠です。
身に覚えのない痛み・腫れが続いた場合は、一度医療機関を受診してみましょう。ここからは骨肉腫の症状について解説していきます。

痛み

骨肉腫が発症している箇所は痛みを伴います。この痛みは進行するに応じて増加し、最初は筋肉痛や張りのような痛みで、気にならない場合も多いです。しかし進行すると腫れを伴いながら安静時でも痛みを訴えるようになり、この段階に入ってから治療を受けることも珍しくありません。
スポーツでの接触や転倒といった外傷に覚えがなく、痛みが継続する場合はかかりつけ医やペインクリニックなどの受診を検討してみましょう。

腫れ

骨肉腫の症状の中で、痛みに続いて多く確認されているのは患部の腫れです。骨肉腫は大腿骨・上腕骨・股関節に多く発症する傾向にあります。発生個所に偏りが現れる理由は、上記の部分は成長期の間に新しい骨組織を作り出しているためだと考えられています。この腫れも痛みと同様に成長痛・スポーツ痛と混同され、初期症状の見落としに繋がるため注意が必要です。

骨折

骨肉腫が発生した箇所は、通常硬い骨に当たる部分が腫瘍に置き換わるため、骨折が発生しやすくなります。疾患が原因で骨折しやすくなる症状は病的骨折と呼ばれ、治療の妨げになる場合があります。骨腫瘍の確定診断でCT・MRIなどの画像診断が含まれている理由も、骨に腫瘍が発生していないかを確認するためです。
些細な接触や転倒で骨折した場合、何らかの原因で骨がもろくなっている可能性があります。速やかに専門機関を受診し、精密検査を受けましょう。

発熱

悪性腫瘍が発生した場合、免疫細胞によってサイトカインと呼ばれるタンパク質が分泌され、免疫細胞の増加を促します。その結果として炎症・発熱が発生し、自律神経の乱れにも繋がる場合があります。長期的な発熱は体力を奪うだけでなく、疼痛にも繋がるため医薬品でコントロールすることが重要です。
発熱の発生原因によって適切な医薬品が異なるため、自己判断で服用せずに処方された医薬品で症状の緩和を図りましょう。

骨肉腫の検査

上記で解説した通り骨肉腫は悪性腫瘍の1つであり、特定には複数の検査を行う必要があります。そのため問診・画像診断に加え、血液検査や生検も重要です。ここからは骨肉腫の確定診断に必要な検査と、その内容について解説していきます。

問診

問診は患者さんがどのような症状を自覚しているか、受診に至るまでの流れを確認するために重要です。それ以外にもこれまでの病歴なども確認し、疾患の絞り込みを行います。これまでの病歴・アレルギー・症状を自覚している部位を問診で伝えることは、検査の精度を上げるために重要です。
正確に伝えられなくても、伝えたい要点をあらかじめ考えておくと症状が伝わりやすくなるため、あらかじめ準備しておきましょう。

血液検査

血液検査は発症した疾患によって、血液中に酵素・抗体などが増加していないか調べるために行われます。骨肉腫の場合、アルカリフォスファターゼ(ALP)と呼ばれる数値の上昇が確定診断を行う際に重要です。このALPの上昇は骨肉腫だけでなく、骨軟化症・甲状腺機能亢進症などでも発生する場合があります。そのためALP高値が確認された場合、画像診断・生検などから症状を絞り込むことが重要です。

画像診断

X線・CT画像などで患部の確認を行う検査は画像検査と呼ばれ、現在の状況や腫瘍が広がっているかの確認のために重要です。転移の確認を行う際は、シンチグラフィー・PET検査を用います。MRI検査は確定診断が完了し、手術を行う際に施術範囲を決定する際に用いられます。内部構造の確認にも有効なため、手術前に腫瘍の構造を確認するためにも有効です。

生検

生検は採取した細胞を検査し、特徴を調べる検査です。確定診断にはこの検査が欠かせません。細胞の採取法は現在2種類存在し、医療用の針を用いて細胞を採取する方法と、全身麻酔をかけてから患部の切除し採取する方法です。検査を確実に成功できるのは後者ですが、患者さんのストレスや発生個所を考慮して針を用いた採取が採用されることもあります。
医師によって判断が異なるため、生検を行う際は医師の指示に従いましょう。

骨肉腫の治療方法

これまでは骨肉腫の症状・検査方法について解説してきました。ここからは骨肉腫の治療方法について解説していきます。以前は骨肉腫の発症が確認されると、転移を防ぐために発生個所を含めた四肢を切断する術式が多く採用されていました。それでも生存率が低かったため不治の病と呼ばれていましたが、広範切除術の登場により切断術の使用は大きく減少しています。
発生個所によっては手術自体が難しく、化学療法・放射線治療が中心となる場合があるため、そちらについても合わせて解説していきます。

手術

骨腫瘍の完治が期待できる治療法は、現在は外科手術のみです。広範切除術と呼ばれる、肉腫を周囲の健康な組織で包み、まとめて切除する術式が主に採用されています。発生個所によっては人工関節を使用する必要もありますが、成長や経年劣化により再置換手術が必要となります。
広範切除・切断術式以外にも、患部周囲の骨を摘出して処理を行った後、患者さんの骨を移植する術式も存在するため医師に相談してみましょう。

抗がん剤治療

抗がん剤治療を手術と組み合わせることで、生存率の大幅な引き上げが可能となりました。しかし抗がん剤をはじめとした化学療法のみで、骨肉腫の完治・寛解までには至っていません。発生個所によっては手術が困難な場合もあるため、その場合は放射線治療と併用し転移・拡大を抑える治療を行います。

放射線治療

放射線治療は、手術を行わずがん細胞の死滅・患部周囲の機能を温存できるのが特徴です。手術の体力に不安を持つ患者さんや、高齢者の治療として利用されることもあります。治療は週5回平日に行うことが多く、治療にかかる時間は長くても1時間程度です。
また照射箇所の調整によって治療時間が長い場合もありますが、放射線の照射時間は数分程度となるでしょう。

骨肉腫についてよくある質問

ここまで骨肉腫の原因・治療法などを紹介しました。ここでは「骨肉腫」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

骨肉腫の予後について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

骨肉腫は5年生存率が70%以上となっていますが、これは転移が確認されなかった場合の数値となっています。予後を良くするためには、できるだけ早く治療を開始することが重要です。
転移が確認された場合の5年生存率は20~30%となっており、70%から大幅に低下します。腫れ・痛みといった症状が長引いている場合は、受診を検討しましょう。

骨肉腫を発症しやすい年齢を教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

骨肉腫が最も発生しやすい年齢は10~20代の若年層で、約60%と集中しています。ついで多いのは40歳以上で、約30%です。40代以上の発症が多い理由として、二次性骨肉腫や過去の放射線治療が原因の骨肉腫発症が集中しているからだと考えられています。
また過去に良性腫瘍を切除した場合、30代以降で悪性腫瘍を発症する可能性が高まるため、治療が完了した場合も注意が必要です。

編集部まとめ

今回は骨肉腫について解説してきました。骨肉腫の生存率は以前と比べ格段に上昇しており、切断術が選択される頻度も減少しています。

しかし発症しやすい年齢は若年層が中心のため、成長痛やスポーツ痛と混同されることが多く、早期に発見できないケースは珍しくありません。

腫れ・痛みを訴えた場合、どのような痛みか・思い当たる外傷がないかを確認し、症状が継続する場合はかかりつけ医や整形外科を受診しましょう。

骨肉腫と関連する病気

「骨肉腫」と関連する病気は3つあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

皮膚科の病気

  • 悪性黒色腫(メラノーマ)

成長痛と骨肉腫は混合されやすく、早期治療が遅れる原因に繋がります。また肉腫はさまざまな種類が存在するものの、その大部分は良性腫瘍です。
検査中は不安を覚えますが、過度な不安はストレスによる症状の悪化に繋がります。診断が確定するまでは、医師の指示に従いこれまで通りの生活を行いましょう。

骨肉腫と関連する症状

「骨肉腫」と関連する症状は3つあります。
各症状の原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

骨肉腫は骨折・腫れといった症状を引き起こします。特に病的骨折と呼ばれる疾患が原因の骨折は、治療の妨げになる可能性もある危険な症状です。
骨折に繋がるとは思えない外傷から骨折が起こった場合、医師に相談してみましょう。

この記事の監修医師