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「癌性腹膜炎と腹膜播種の違い」はご存知ですか?初期症状も医師が徹底解説!

 公開日:2025/03/28
「癌性腹膜炎と腹膜播種の違い」はご存知ですか?初期症状も医師が徹底解説!

癌性腹膜炎と腹膜播種の違いとは?Medical DOC監修医が癌性腹膜炎と腹膜播種の違い・初期症状・末期症状・原因・なりやすい人の特徴や検査・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は一般外科、消化管内視鏡検査、生活習慣病を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、高砂内科・消化器科クリニックに勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。

「癌性腹膜炎」とは?

癌性腹膜炎とは、がん細胞が腹膜全体に広がり、炎症を引き起こしている状態を指します。癌性腹膜炎では腹膜が厚くなったり、大量のがん性腹水(がん細胞を含んだ腹水)が出たり、場合によっては腸閉塞や水腎症などの合併症が起こる可能性もあります。癌性腹膜炎は、進行した胃がん、大腸がん、卵巣がんなどが腹膜に広がることによって発生します。

「腹膜播種」とは?

腹膜播種とは、がん細胞が腹膜に散らばり、小さな腫瘍(しゅよう)を形成している状態を指します。播種とはがん細胞が腹膜に広がっている状態を表します。腹膜播種は、初期段階では目に見えない小さながん細胞が散らばっているため、超音波検査やCT検査では発見が難しいことが特徴です。腹膜播種の原因は癌性腹膜炎と同様です。

「癌性腹膜炎」と「腹膜播種」の違いとは?

腹膜播種はがん細胞が腹膜に散らばる初期の状態であり、癌性腹膜炎はその進行形態で、炎症や腹水が伴う状態です。腹膜播種の初期段階では症状がないことが多いですが、癌性腹膜炎では腹部の痛みや腸閉塞、腹水による腹部膨満などの明確な症状が現れます。腹膜播種は手術による切除や化学療法での治療が試みられますが、癌性腹膜炎はより治療が難しく、主に緩和ケアが中心となります。このように、癌性腹膜炎と腹膜播種は、がんの進行状況や症状、治療方針において異なります。

癌性腹膜炎・腹膜播種の前兆となる初期症状

癌性腹膜炎・腹膜播種の初期症状は、腹痛、お腹の張り、吐き気、食欲不振などがあります。これらの症状は、他の病気でも見られるため、初期には癌性腹膜炎・腹膜播種であると気づきにくい場合があります。気になる症状があるときは医療機関を受診してください

腹痛

癌性腹膜炎・腹膜播種の初期症状で腹痛があらわれることがあります。鈍痛や持続痛の可能性があります。市販の痛み止めなどで改善しない場合はお近くの内科・消化器科を受診してください。特に食欲不振や体重減少を伴う場合は注意が必要です。

腹部の張り

癌性腹膜炎では腹水を伴うことが多く、腹水によってお腹が張ることがあります。腹水だけでなく、腸管の動きが悪くなったり、腸閉塞を起こしている場合も腹部の張りが出てくることがあります。腹部の張りが強くなったり、吐き気を伴う場合は注意が必要です。すぐに近くの内科・消化器科を受診してください。

吐き気・食欲不振

吐き気や食欲不振は他の病気でもみられる症状ですが、その原因が癌性腹膜炎や腹膜播種である可能性もあります。特に体重減少などを伴うときは注意が必要です。お近くの内科・消化器科を受診してください。

癌性腹膜炎・腹膜播種が進行すると現れる症状(末期症状)

腹水による症状

腹水とは、お腹の中に異常な量の液体が溜まった状態を指します。癌性腹膜炎や腹膜播種が進行すると、がん細胞が腹膜から液体成分を過剰に分泌したり、リンパ液の流れが滞ったりすることで、腹水が大量に溜まってしまいます。腹水によって、腹部の張り、体重増加、腹部膨満感などが現れることがあります。短期間で腹部の張りや膨満が出てきた場合はすぐに医療機関を受診してください。

腸閉塞による症状

腸閉塞とは、腸の内容物が正常に流れなくなり、腸が詰まってしまう状態を指します。癌性腹膜炎や腹膜播種により腸が圧迫されたり、腸の壁にがんが浸潤したりすることで、腸閉塞を引き起こすことがあります。腸閉塞による症状は吐き気、嘔吐、腹痛、腹部膨満感、便秘、ガスが出ないなどです。特に腸閉塞症状に強い腹痛があるときは注意が必要ですので、早急に医療機関を受診してください。

呼吸困難

呼吸困難とは、息苦しさを感じる状態を指します。癌性腹膜炎や腹膜播種が進行すると、様々な理由で呼吸困難を引き起こすことがあります。腹水が大量に溜まり、横隔膜が圧迫されたり、胸水が溜まって肺が圧迫されたりすることが原因です。いずれにしても、がんによって全身状態が悪くなっていることが想定されます。呼吸困難があれば、すぐに医療機関を受診してください。

癌性腹膜炎・腹膜播種の主な原因

癌性腹膜炎・腹膜播種の主な原因は、消化器がんである胃がん、大腸がん、膵臓がんや婦人科がんである卵巣がんなどが腹膜に広がることです。これらの癌は、早期に発見されれば治療できる可能性が高いですが、進行してしまうと腹膜播種や癌性腹膜炎を引き起こすことがあります。

消化器がん

胃がん、大腸がん、膵臓がんなどは腹膜播種・癌性腹膜炎をきたしやすいがんです。特に胃がんの中のスキルス胃がん、膵臓がんなどは発見されたときにはすでに腹膜播種しているケースもあり、早期発見が重要です。まずは健康診断やがん検診を積極的に受けて異常がないか検査をしましょう。異常が見つかった場合はすぐに精密検査を受けることをお勧めします。

卵巣がん

卵巣がんも腹膜播種をきたしやすいがんです。女性で下腹部にしこりが触れたり、下腹部痛や腹部の張りがあったりする人は婦人科を受診しましょう。

癌性腹膜炎・腹膜播種になりやすい人の特徴

体調不良を放置している人

前述の通り、腹膜播種・癌性腹膜炎は消化器がんや婦人科がんが最後まで進行した状態と言えます。初期の体調不良で検査をすれば見つかるはずだったがんが放置されて、放置されて病状が進行してしまったケースもあります。まずは体調不良を放置せずに、早めの精密検査を受けましょう。

すでにがんに罹患している方

がんに対して適切な治療を受けられた方が、再発して腹膜播種や癌性腹膜炎を起こす可能性があります。手術など適切な治療を受けた方も再発がないか経過観察が必要です。前述の通り、腹膜播種は自覚症状がなく、画像検査で初めて発見されるケースもあるため、注意が必要です。

癌性腹膜炎・腹膜播種の検査法

癌性腹膜炎・腹膜播種の検査法としては、画像検査(CT、MRI、PET検査など)、腹水検査、腫瘍マーカー検査などがあります。

画像検査

CT、MRI、PET検査などの画像検査を行い、腹膜播種や癌性腹膜炎、がんの再発、遠隔転移がないかどうか調べます。放射線科の外来で検査を行うため、入院は不要です。

腹水検査

腹水が溜まっている場合に、お腹に針を刺し腹水を吸引して採取します。そして腹水の病理検査を行い、がん細胞の有無などを調べます。画像検査ではわからない細胞レベルの腹膜播種がないかどうか判定や癌性腹膜炎の確定診断に用います。通常、入院で行うことが多い検査です。

腫瘍マーカー

血液中の腫瘍マーカーの値を測定し、がんの活動性や再発の可能性、治療の効果判定の一部などに用いられます。外来の検査科で血液検査を行います。

癌性腹膜炎・腹膜播種の治療法

化学療法

化学療法は、抗がん剤と呼ばれる薬を使用して、がん細胞の増殖を抑える治療法です。
癌性腹膜炎や腹膜播種に対してはがん細胞の増殖を抑制し、症状を緩和する、延命効果を期待するなどの効果が期待できます。点滴による化学療法が最も一般的な化学療法で、抗がん剤を点滴で投与します。一部、腹腔内化学療法:抗がん剤を腹腔内に直接注入する方法もあります。化学療法の導入は入院で行い、その後外来加療に移行することがあります。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫細胞からの攻撃を逃れるために利用する仕組みをブロックし、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようにする薬です。腹膜播種における免疫チェックポイント阻害薬の役割は免疫細胞の活性化や腫瘍の縮小効果、延命効果などです。免疫チェックポイントが効果的かどうか調べて、効果が期待できる場合は加療が始まります。通常は外来加療を行います。

放射線療法

腹膜播種に対して放射線療法を行う場合、化学療法の補助的な役割や症状緩和を目的とした治療です。副作用として、皮膚炎や消化器症状などが起こることがあります。通常、外来通院で加療することが多い治療です。

緩和ケア

緩和ケアは、がんによる痛みやその他の症状を和らげ、患者さんの生活の質(QOL)を向上させることを目的とした治療法です。癌性腹膜炎・腹膜播種における緩和ケアの役割は痛み、吐き気、呼吸困難などの症状の緩和、精神的なサポート、患者さんや家族の不安や悩みの軽減などがあります。緩和ケアは、薬物療法、放射線療法、精神療法、栄養療法など、様々な方法の組み合わせで行います。患者さんの状態に応じて、入院・外来を選択します。

「癌性腹膜炎と腹膜播種の違い」についてよくある質問

ここまで癌性腹膜炎と腹膜播種の違いなどを紹介しました。ここでは「癌性腹膜炎と腹膜播種の違い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腹膜播種は何年生きられるのでしょうか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

腹膜播種の予後(寿命)は、がんの種類や進行度合い、治療法や本人の体調や年齢などによって大きく異なります。がんのステージとしてはステージⅣですので、一般的には予後は良くないことが多いです。ただし、近年では化学療法などの治療法の進歩により、生存期間が延長するケースも増えています。

編集部まとめ 腹部の張りなど腹膜播種を疑ったら、消化器内科へ

癌性腹膜炎と腹膜播種は、進行したがんによって引き起こされる深刻な状態です。早期発見・早期治療が重要ですので、気になる症状がある場合は、迷わず医療機関を受診してください。この記事が、癌性腹膜炎と腹膜播種について理解を深める一助となれば幸いです。

「癌性腹膜炎と腹膜播種」と関連する病気

「癌性腹膜炎と腹膜播種」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

婦人科の病気

上記のがんは腹膜播種が起こりやすいがんです。しかし、そのほかのがんでも腹膜播種は起こることがあります。早期発見早期治療が重要な疾患が多いので、健康診断やがん検診などを活用しましょう。

「癌性腹膜炎と腹膜播種」と関連する症状

「癌性腹膜炎と腹膜播種」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

上記以外にも、様々な病気や症状が癌性腹膜炎・腹膜播種と関連している可能性があります。気になる症状がある場合は、医療機関を受診して適切な診断を受けるようにしましょう。

この記事の監修医師

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