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【闘病体験】「”卵巣がん”告知が他人事のように聞こえた」余命宣告を受けて気づいた、当たり前への感謝

 更新日:2024/04/18

「卵巣がん」は若い世代から中高年世代まで、幅広い世代の女性に発症する病気です。初期症状がほとんどなく、自覚症状が出て受診した際に進行した状況で診断されるケースが多いです。今回お話を聞いたyukiさんも初期症状がほとんどなく、お腹が妊婦のように腫れて痛みを感じたことで検査を行い、発見されました。yukiさんのお話から卵巣がんの気になる初期症状、具体的な治療方法、生活での注意点などを実体験とともにご紹介します。

※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2023年9月取材。

yukiさん

体験者プロフィール
yukiさん(仮称)

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2人の子どもをもつ母親。2022年春頃から腹部の膨らみを自覚したが、「少し太ったかな」と思う程度で様子を見ていた。夏頃になると腹部が妊婦のようにせりだし、局所的な腹痛も現れたため産婦人科を受診。検査の結果、原発性の卵巣がんが判明し、10月に腹腔鏡手術・病理検査を実施。術後に抗がん剤を開始するも、激しい腹痛で救急搬送され、入院してTC療法4クール実施。2023年1月子宮全摘出術、その後も化学療法を実施して寛解状態になった。

鈴木 幸雄

記事監修医師
鈴木 幸雄(産婦人科専門医・婦人科腫瘍専門医)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。

「医師からの告知は他人事のようだった」まさか自分ががんになるとは

「医師からの告知は他人事のようだった」まさか自分ががんになるとは

編集部編集部

yukiさんが卵巣がんと診断された時の自覚症状はありましたか?

yukiさんyukiさん

わかりやすい自覚症状はなく、最初は「少し太った?」という程度にお腹が膨らみました。ですが、そのわずか数カ月で妊婦のようにお腹が大きくなり、痛みも伴いました。

編集部編集部

すぐに病院を受診されたのですか?

yukiさんyukiさん

はい。おかしいと思い、すぐに産婦人科を受診したところ、「悪性の腫瘍があり、おそらく卵巣がんでしょう」と言われ、大きい病院を受診しました。検査の結果、CA125という血液検査でわかる腫瘍マーカーは475で、胃や大腸などのからの転移も疑われたので、胃カメラや造影CTなどの精密検査を行いました。最終的には原発性卵巣がんと診断され、「ほかの臓器やリンパ節への転移はないものの、腹膜播種があるためステージⅢC、極めて完治が難しいがんである」と告知されました。

編集部編集部

病気の告知は相当なショックだったのではないですか?

yukiさんyukiさん

ショックで頭の中が真っ白、というよりも他人事のように淡々とドクターの声が頭の中を流れていく状態でした。腫瘍マーカーの数値を見て、「この数値でもがんじゃないってこともあるんですか?」と質問するので精一杯でした。告知を受け、退室して最初に頭に浮かんだのは子どもたちのことです。「いつ、どうやって伝えよう」とか「聞いたらショックを受けるだろうな」とか、自分のことよりも子どもたちのことが心配で仕方ありませんでした。病院から帰る時の記憶はなく、自宅の最寄り駅に着いたら「家に帰ったら子どもがいるし、顔を見れば泣いてしまう」と思って、涙があふれるのが落ち着くまでしばらく留まっていたことだけ憶えています。

編集部編集部

告知後はどのような症状、生活の変化があったのでしょうか?

yukiさんyukiさん

すぐに入院生活が始まり、パンパンになった腹水、腹膜炎の激痛にも耐えながら、とにかく病気に負けないための体力をつけようと三食を完食することを意識していました。退院後は、毎月抗がん剤の副作用に耐えていましたが、副作用の出る時期や症状のパターンを把握できてからは、計画的に家事や買い出し、食事の準備などをしました。また、その日の体調次第で「できない時はできない、休む時は休む」という意識を大事に、自分をいたわりながら生活するようになりました。

2回の手術と化学療法で卵巣がんは寛解状態へ

2回の手術と化学療法で卵巣がんは寛解状態へ

編集部編集部

yukiさんの卵巣がん治療はどのような内容だったのでしょうか?

yukiさんyukiさん

2022年10月の1回目の手術で「卵管原発」の可能性を指摘され、同時に両側の卵巣を摘出、さらに術後に抗がん剤治療も開始しました。手術後には腹水も抜いてもらったのですが、2日ほどですぐパンパンになりました。それから同月末に激しい腹痛を感じて救急搬送されて再入院。その後パクリタキセル+カルボプラチン(TC)療法を4サイクル行いました。翌年1月には子宮全摘術を含めた根治手術を行い、手術後にはTC療法に加えてアバスチン(Bev)も開始しました。2023年7月にはTC療法10サイクル+BeV療法5サイクルが終了し、術後6カ月で完全寛解状態と判断されました。ちなみにですが、医師から「余命5年は難しい」と言われています。

編集部編集部

治療を始めてから現在までの体調はどのような状況でしょうか?

yukiさんyukiさん

寛解後の今年8月には、維持療法として経口抗がん剤の「ゼジューラ」を開始しました。7月までは、貧血気味だったのでクエン酸第一鉄ナトリウムを服用しており、TC療法の影響で手足の痺れがひどく、生活への影響を感じていましたね。現在はがん再発のため、抗がん剤治療を再開しています。そのため、日々吐き気・関節痛・倦怠感・疲労感・知覚過敏・歯茎からの出血・皮膚疾患・粘膜が弱っているため鼻水・鼻からの出血・両下肢の疼き・記憶障害といった副作用と戦っています。

編集部編集部

現在お考えのことや、積極的に取り組まれていることについて教えていただけますか?

yukiさんyukiさん

卵巣がんに罹患してから残された人生について考えるようになり、「自分にできること」や「何かを残そう」という思いから日記をつけはじめました。病院に張り出される掲示板やポスターもチェックして、院内のがん患者会にも時々参加しています。2023年6月に東京で開催された第9回がんサバイバー・スピーキング・セミナーにも応募し、無事選考を通過、受講して受講証明書も受け取りました。ほかにも、7月に第3期京都府がん対策推進計画に向けた要望書の作成についてのワークショップにも、ZOOMで参加させていただきました。あとは、卵巣がんの罹患前に始めたアクセサリー作りを再開するのも目標です。

編集部編集部

非常に精力的に活動されている印象です。日頃の生活で続けていることなどはありますか?

yukiさんyukiさん

心掛けにはなりますが、気持ちよく1日を過ごすために起床後のルーティンを決めてスタートすることです。あとは今日できなかったことを悔やむより、1つでも自分でできたことを褒めることも大切です。直感的に今日行きたい所に出向き、今日会いたい人に会うことも大切だと思います。誰がいつどうなるかわからないので、後悔しないためです。そして、1日の終わりには今日を無事に過ごせたことに感謝し、明日も自分の大切な人を守ってくれること、良い日になることを願って眠ります。

当たり前に感謝して、好きなものや大切な人に囲まれて好きなことを楽しみたい

当たり前に感謝して、好きなものや大切な人に囲まれて好きなことを楽しみたい

編集部編集部

治療後に体調面で変化を感じたこと、生活で気を付けていることはありますか?

yukiさんyukiさん

一番の変化は、TC療法を重ねるごとに強くなった手足の痺れです。両足の脱力感や足の裏の感覚、疲れやすさも本当につらいです。生活面では、体調の良い日に家事などで動くこと、これまでよりも水分摂取も意識しています。味覚障害もひどい時は食べられるものが極端に偏ってしまうので、症状が落ち着いた時は栄養バランスに気を付けて食事をします。

編集部編集部

治療中に心の支えになっていたもの、好きなものはなんでしょうか?

yukiさんyukiさん

大好きなアーティストです。入院中は長年の大ファンのLIVE DVDを持ち込み、オペ前日の緊張する時、不安や不眠の時にも元気をもらっていました。副作用でベッドから動けなくて不安や孤独を感じた時も、歌に涙したり癒されたりしていました。そして、もちろんですが、子どもたちも私にとって一番大きな心の支えになっています。私の人生を変えてくれた大切な人の存在もあり、多くの人に支えられてきたと思います。

編集部編集部

卵巣がんについて、よく知らないという人に向けて伝えたいメッセージをお願いします。

yukiさんyukiさん

卵巣がんは症状が出にくく、気がついたら進行してしまいますし、私自身も症状が出てからの受診で初めて発覚しました。私の母も検診でごく初期の多発性骨髄腫が見つかり、壮絶な闘病生活を送っていました。定期検診で見つかるケースとそうでないケースもあるので、何が正解かはわかりません。しかし、体に不調があって「いつもと違うな」と感じた時は我慢せずに受診してください。

編集部編集部

医療従事者に伝えたいメッセージはありますか。

yukiさんyukiさん

卵巣がんと急に診断された時、患者はとても不安になりどうすれば良いかわからなくなります。人生が大きく変わる場面で、治療内容や病気について理解できるサポート体制や困ったときの窓口(がん相談支援センター)の強化などに力を入れていただきたいです。がんの告知を受けて自殺してしまう方もいますから、告知を受けてから「その先」の連携体制強化が非常に重要だと私自身の体験を通して感じました。

※参考:がん情報サービス, 「がん相談支援センター」とは

編集部編集部

最後に読者向けのメッセージをお願いします。

yukiさんyukiさん

私はがんになりましたが、世の中にはがん以外にもさまざまな病気があります。罹患してから見るものが180度変わり、景色も人間関係も目にするものすべてが大切に思えるようになりました。私の場合、残された余命をどう生きるか、明日が当たり前にやってくるものではなく、いつなくなるかわからないからこそ「残された人生を好きに生きる」ことを大事にしたいと思うようになりました。綺麗ごとに聞こえるかもしれませんが、がんになったことでどんなことにも感謝するようになりました。病気が「もうこれ以上無理して頑張らなくていい」「ゆっくりしなさい」と教えてくれたと思っています。この記事を読んでくださったみなさんも、私の体験を通して少しでも何かを感じ取ってもらえれば幸いです。

編集部まとめ

卵巣がんは女性特有の疾患で、毎年約13000人以上が新たに罹患しています。卵巣はお腹のなかで大きくなっても気づかないことが多いため、進行してから発見されるケースがほとんどです。症状も無自覚に進行することがほとんどで、進行してもがん特有の症状がない点も早期発見を難しくしています。最近太ったな、服が入りづらくなったなど「普段と違うな」「ちょっと気になる」などの違和感があれば、早期に産婦人科の受診を検討しましょう。

なお、Medical DOCでは病気の認知拡大や定期検診の重要性を伝えるため、闘病者の方の声を募集しております。皆さまからのご応募お待ちしております。

この記事の監修医師