「腎臓がん」を発症すると「腰」にどんな痛みを感じる?初期症状も医師が解説!

腎臓がんを発症すると腰にどんな痛みを感じる?Medical DOC監修医が腰のどこに痛みを感じるか部位・初期症状・原因・検査法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
石川 智啓(医師)
目次 -INDEX-
「腎臓がん」とは?
腎臓は、肋骨の下あたりの高さに位置し、背中側にある臓器です。腎臓は左右1つずつあり、そら豆のような形です。血液をろ過して尿を作り出しています。腎臓の「腎実質」には毛細血管が集まり、糸球体というろ過装置で血管から尿がこし出され、尿細管という細い管で必要なものが再吸収されます。ここでできた尿が「腎盂」に集まり、尿管を下って膀胱へと送り出されます。
「腎実質」の細胞ががん化して悪性腫瘍となったものを腎細胞がんといい、腎盂にある細胞ががん化したものが腎盂がんです。一般的に腎臓がんは腎細胞がんのことを言います。
腎臓がんを発症すると腰にどんな痛みを感じる?
腎臓がんは、初期では症状はほとんどありません。しかし、大きくなると血尿、背中・腰の痛み、吐き気、おなかのしこり、腹痛などを認めることがあります。
持続する腰の痛み
腎臓がんが大きくなり、腎臓を覆っている被膜が引き伸ばされた場合や周囲の神経まで進展すると腰の辺りに痛みが生じます。この痛みは、痛みの原因が解消されないと消えにくいため、持続することが多いです。持続する腰痛は膵炎や慢性腰痛症など他の病気でも起こり得ます。痛みがある場合には市販の痛み止めなどで様子を見ても良いですが、痛みが持続する場合には医療機関を受診しましょう。また、見た目が真っ赤な血尿などに伴う腰痛であれば泌尿器科を受診すると良いでしょう。
強い腰の痛み
腎臓がんが神経まで進展したり、腰椎に転移すると強い痛みが起こることがあります。また、骨転移した部分が病的骨折を起こした場合にはさらに激痛が起こります。このように、強い痛みが起こった場合には、何かしら病気がある可能性が高いです。腎臓がんの可能性もありますが、尿路結石や急性腰痛など他の病気の可能性も考えられます。痛み止めの内服や消炎鎮痛剤の湿布を使用しても良いですが、腰に激痛が起こった場合には早めに医療機関を受診しましょう。
腎臓がんを発症すると腰のどこに痛みを感じる?
側腹部の痛み
右や左の腎臓にがんが発生し、大きくなると癌ができた腎臓の側が痛くなることがあります。側腹部やおなかの痛みが持続したり、強い痛みが起こった場合には泌尿器科や内科を受診しましょう。
背部の痛み
腎臓がんが背部に近い場所にある場合には背中側に痛みを感じる場合があります。また、腰椎に転移を起こした場合には骨転移を起こした部位が痛みます。背中を中心に痛みが起こった場合には腎臓がんの可能性もあり注意が必要です。痛みが持続したり、痛みが強く激痛の場合には整形外科や泌尿器科を受診しましょう。
腎臓がんを発症し腰痛も伴う場合のステージ分類とは?
腎臓がんのステージは、腎臓がんの大きさや広がり、転移の有無などの組み合わせにより決まります。腎臓がんを発症し、腰痛を伴っても症状のみでステージ分類を決定することはできません。腎臓がんが大きくなり、被膜が引き伸ばされているような場合や、周囲の神経などに浸潤したり、腰の椎骨に転移が起こった場合には腰痛を自覚する可能性があります。このような場合には、少なくともステージⅡ以上に進行している可能性が考えられます。
治療法としては手術治療が基本となります。また、腎臓がんの進行により薬物療法や放射線治療を併用することもあります。詳しい病期や治療法などはご自身の主治医に確認するのが良いでしょう。
腎臓がんの初期症状
腎臓がんの初期では症状がみられないことが多いです。進行すると以下のような症状がみられることがあります。
血尿
腎臓がんが大きくなると、血尿を認めることがあります。見た目ではわからず、たまたま行った尿検査でわかることもあれば、真っ赤な血尿がみられることもあります。健康診断で血尿がみられた場合、自覚症状がないからと放置せず、泌尿器科を受診して相談しましょう。
腰痛
腎臓は腎被膜という膜に覆われています。この膜が引き伸ばされると痛みが起こります。腎臓がんの初期では痛みは起こりません。しかし、がんが大きくなるとこの被膜が引き伸ばされてしまい痛みが起こることがあります。
腹部の腫れ、しこり
腎臓がんは症状が出にくいため、気がついたときには腫瘍が大きくなっていることもあります。このような時には、おなかや背中の辺りのしこりや腫れで気がつくこともあります。横になった時におなかにしこりを触れたり、背中のしこりに気がついたときには腎臓がんの可能性も考えられます。早めに泌尿器科を受診しましょう。
腎臓がんの主な原因
喫煙
喫煙は腎臓がんの危険因子となっています。喫煙指数(1日当たりの箱数(1箱20本)×年数)が40以上の喫煙者は非喫煙者と比較して約1.5倍腎臓がんになりやすいという報告があります。喫煙は多くの他のがんの危険因子でもあります。ご自身の健康のために禁煙することがお勧めです。
高血圧、慢性腎臓病
高血圧や慢性腎臓病は腎臓がんの危険因子です。特に、透析患者では健康な人と比較して悪性腫瘍の発生率が高く、その中でも腎臓がんの発生頻度は特に多いとされています。また、日本の透析患者は生存率が改善しており、透析期間が長いことが特徴です。透析期間が長期となるほど腎臓がんの発生率が増加します。このため、これらの病気を持つ方では定期的に画像診断などで腎臓がんの発生がないか確認をすることが勧められています。
遺伝的要因
今までに、いくつかの遺伝子変異が腎臓がんの発生に関与していることが分かっています。遺伝性腎臓がん家系では若年から腎臓がんが発症するため、早めから画像検査を行うことが推奨されています。家系で多く腎臓がんがいるなど、気になることがあれば泌尿器科で相談をしてみましょう。
腎臓がんの検査法
超音波検査
腹部超音波検査は、体に侵襲なく行えるため健康診断などでもよく施行されます。腎臓がんのスクリーニング検査として、超音波検査は非常に有用です。しかし、超音波検査のみでは腎臓がんの確定診断を行うことは難しく、また小さい腎がんの検出についてもCTやMRIには劣ります。
CT・MRI検査
CT、MRIの画像検査では、より詳細に腫瘍の性状を調べることができます。造影剤を使用する事により、腫瘍の血流の描出を行うことができ、さらに詳細を調べることが可能です。また、腎臓がんの性状のみではなく、他の臓器への浸潤や転移が無いかなど、腎臓がんの進行具合を調べることもできます。
腎生検
腎臓がんは画像検査で良悪性の鑑別をつけることが多いです。しかし、画像のみで鑑別がつかない場合、小さい腎臓腫瘍の場合などでリンパ腫や、膿瘍、転移を疑った場合などに腎生検を行うことがあります。背中側から細い針を刺して腎臓の組織の一部を取り、顕微鏡で詳しく調べます。腎生検は、入院が必要です。多くは1週間程度の入院となることが多いですが、詳細が主治医に確認をしましょう。
「腎臓がんと腰痛」についてよくある質問
ここまで腎臓がんと腰痛の関係性などを紹介しました。ここでは「腎臓がんと腰痛」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腎臓がんの進行スピードについて教えてください。
石川 智啓 医師
一般的に腎臓がんは進行がゆっくりであることが多いと言われています。しかし、中には非常に進行が早いものもあります。進行が速いタイプかは、いろいろな検査で判明することが多いです。ご自身の病状については、主治医に確認をしましょう。
編集部まとめ
腎臓がんの症状として、腰痛、血尿、腹部のしこりや腫れなどが挙げられます。腰痛の症状は、急性腰痛や尿路結石、膵臓がんなど他のいろいろな病気でも認められるため区別が難しいです。しかし、持続する腰痛が認められたり、激しい痛みがある時には何かしらの病気が潜んでいる可能性があります。気になる症状がみられるときには、医療機関を受診しましょう。特に血尿の症状がある場合には、泌尿器科を受診することをお勧めします。
「腎臓がん」と関連する病気
「腎臓がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
- 膵臓がん
- 膵炎
整形外科の病気
- 急性腰痛
- 圧迫骨折
- 骨転移
腎臓がんの症状として、腰痛が認められるとき上記の様な病気の可能性も考えられます。単なる腰痛だからと放置せずに、腰痛が持続したり、激痛の場合には早めに医療機関を受診しましょう。血尿など泌尿器系の疾患が疑われる場合には泌尿器科を受診することをお勧めします。
「腎臓がん」と関連する症状
「腎臓がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腎臓がんの症状として上記の様なものが挙げられます。しかし、これらの症状も腎臓がんに特徴的なものではありません。気になる症状が持続する場合には一度医療機関を受診して相談してみましょう。