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「肝臓がんの手術の入院期間」はどのくらい?術後の経過についても解説!【医師監修】

 更新日:2025/07/10
肝臓がん(肝がん)手術の入院期間はどのくらい?手術方法や術後の経過を解説

肝臓がん(肝がん)の治療にはどのような治療法があるのか、入院期間はどのくらいなのか知らない方も多いでしょう。 この記事では、肝臓がんに対する手術の種類や手術後の経過、入院期間を解説します。 ご家族もしくはご自身に肝臓がん(肝がん)を発症されている方は、治療を始める前に目を通し参考にしてみてください。

山本 康博

監修医師
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)

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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい院長
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医

肝臓がん(肝がん)とは

肝臓にできるがんを肝臓がんまたは肝がんと呼びます。肝臓がん(肝がん)は、肝臓を作っている細胞からできる原発性肝がんと、肝臓以外の場所にできたがんが、血流に乗って肝臓に定着する転移性肝がんの2つに分けられます。
原発性肝がんは肝細胞がん・胆管細胞がん(肝内胆管がん)・混合型の3つに分けられますが、そのうちの約95%が肝細胞がん、約4%未満が胆管細胞がんです。
肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、炎症やがんがあっても自覚症状がほとんどないといわれているため、医療機関での検診やほかの病気の検査のときなどに異常を指摘されることも少なくありません。
肝臓がん特有の症状はありませんが、肝臓がんが進行すると腹部にしこりや痛み、圧迫感が現れることがあります。

肝臓がんの手術方法

肝臓がんの手術といっても、実際にどのような方法で行われるのか分からない方が多いでしょう。
肝臓がんの手術には、開腹手術と腹腔鏡下手術の2つの方法があります。また手術の方法は、腫瘍の大きさや患者さんの全身状態を総合的に判断し選択されます。
ここでは肝臓がんの手術の詳しい内容について解説していきますので参考にしてみてください。

肝部分切除

肝部分切除とは、腫瘍の大きさに応じて肝臓の一部を切除する手術を指し、小さな病変や太い血管にかからない病変に対して行われます。肝部分切除を受けるには、腫瘍が肝臓の一部に限定され残存肝機能が正常で、患者さんが手術に耐えれる状態であることが手術適応条件です。
手術には腹腔鏡下手術または開腹手術のどちらかが選択されますが、どちらの術式で行うかは腫瘍の大きさや患者さんの全身状態などを考慮し、安全性と根治性のバランスをよく考えて選択されます。

肝亜区域切除

肝亜区域切除は、腫瘍が肝臓の一部に限局している場合に行われます。肝臓は門脈枝に沿って8つの区域に分けられており、その一つの区域を完全に除去する手術です。
腫瘍が肝臓の一部分のみで他臓器への転移がなく、残存肝臓機能が正常な場合に適応されます。

肝区域切除

肝区域切除は、肝臓の中の血管の走行に基づいて肝臓全体の1/4~1/3程度を切除する手術です。
肝臓は無数の血管が走っており、なかには太い血管があるため肝臓の切除は開腹手術でも困難で、腹腔鏡下手術ではより難易度が高くなります。

肝葉切除

肝葉切除とは、肝臓の右側(右葉)か左側(左葉)を切除する手術です。
右葉切除では肝臓全体の右側約2/3、左葉切除では肝臓全体の左側約1/3を切除します。

腹腔鏡下肝切除術

腹腔鏡下肝切除術は、肝臓にできる腫瘍(肝細胞癌、転移性肝癌など)や、肝臓の病気などを対象として行われます。腹腔鏡下肝切除術は、開腹手術に比べて創(きず)が小さく、体への負担が少ない事がメリットです。
しかし開腹手術よりも難易度が高く、肝臓内の大きな血管と接している場合など、切除が困難な場合は腹腔鏡手術が行えない可能性があります。

肝臓がん手術の入院期間

肝臓がん手術後の入院期間は持病の状況や合併症の発生状況によって異なりますが、特に合併症が無ければ7日間~10日間程度で退院可能です。
腹腔鏡下手術の場合は創(きず)が小さく開腹手術に比べると術後の痛みも少ないため入院期間は5日間~7日間程度と短くなります。

肝臓がん手術後の経過

肝臓がん手術後は退院までどのように経過していくのか、また注意点があるのか疑問に思われる方は多いでしょう。
ここでは手術後から自宅療養期間中の経過や注意点について解説します。日常生活を行ううえでの注意点も記載しているため参考にしてみてください。

食事開始

一般的に術後1日目(手術翌日)のお昼から食事が開始されます。肝臓の切除範囲が大きかった場合は、食事が摂れるようになるまで時間がかかることがあります。食事が摂れるようになるまで点滴で栄養補給を行う場合もありますが、肝臓の機能を回復させるためにも、少しずつ口から栄養を摂取することも大切です。
肝硬変などの肝機能が低下した状態では、栄養管理が重要になります。たんぱく質やビタミン、ミネラルを含む十分な栄養補給を行いましょう。

歩行開始

肝臓がん手術後は、患者さんの全身状態や手術の種類(開腹手術、腹腔鏡下手術)、合併症の有無によって歩行開始のタイミングは異なります。しかし手術後には早期回復に向けて術後1日目から2日目にベットからの離床や歩行が開始されます。
腹腔鏡下手術の場合は侵襲性も低いため術後1日目から歩行開始となる場合がほとんどです。

ドレーン抜去

肝臓がん手術後お腹の中にドレーンという管のようなものを、体内に残った血液や胆汁の排出、感染源にもなる膿の排出のために留置します。
術後の経過が良好で1日の排液量が200ml以下に加え、感染傾向も見られない場合はドレーンが抜去されます。

退院

手術後の経過に個人差はありますが、一般的に翌日から食事・歩行開始となり1週間程度でドレーンが抜けると退院に向けての準備が始まります。
術後に感染など合併症が起こってしまった場合、退院までに時間がかかることがありますが、一般的に肝臓がんの手術後特に異常がなく順調に経過すると、約1週間~2週間以内に退院が可能です。

自宅療養

退院後の自宅療養は特別な食事療法や生活の制限はありません。一般的には1ヶ月程度は無理なくゆっくり過ごし、徐々に日常生活に身体を慣らしていき体力が回復し肝機能が安定すれば通常の生活に戻れます。
特別な食事制限はありませんが、もともと肝硬変があり術前から肝機能がよくなかった場合は、術後に肝機能が低下する場合があります。
肝機能が低下すると腹水や足のむくみが見られるようになるため、普段から塩分に気をつけた食事を心がけるようにしましょう。

肝臓がん手術の入院期間についてよくある質問

ここまで肝臓がん(肝がん)手術の入院期間・手術の方法・手術後の経過などを紹介しました。ここでは「肝臓がん手術の入院期間」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

合併症が出た場合は入院期間が長くなりますか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

一般的に、肝臓がん手術後の入院期間は、1週間から2週間程度が目安とされていますが、合併症が発生した場合入院期間が延長される可能性があります。合併症の種類によって治療期間が異なりますが、入院期間は数日から1週間程度、肝不全などの合併症を発症してしまった場合は治療に時間がかかるため、入院期間はさらに数週間延期になる可能性があります。

退院後はどのくらいで仕事復帰できますか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

肝臓がん手術後の仕事復帰はすぐにできるものではありません。退院後も1ヶ月程度は自宅でゆっくり過ごし徐々に日常生活を取り戻していくようにしましょう。肝臓の切除する範囲によって回復期間は異なりますが、約5週目以降から主治医とともに復職可能かを判断していきます。

編集部まとめ

今回は肝臓がん(肝がん)手術の入院期間を含む手術の方法や術後の経過を解説しました。早期発見・早期治療で以前と変わらない生活を送れる可能性があることがわかり、希望を持てた方もいるでしょう。 肝臓は沈黙の臓器といわれるほど自覚症状を感じにくい臓器です。 早期発見をして適切に治療を進めていくなら、日頃の体調チェックと定期的な健康診断が大切です。 ご自身またはご家族で気になる症状・異変がある方は、一人で悩まずなるべく早く医療機関に相談してください。

肝臓がんと関連する病気

「肝臓がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

肝臓がんと関連する病気には以上のような種類があるため、定期的な検診を行って早期発見・早期治療を行いましょう。

肝臓がんと関連する症状

「肝臓がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 食欲低下
  • 体重減少
  • むくみ
  • 黄疸(皮膚や眼球が黄色く染まる)
  • 腹部にしこりや痛みがある
  • 肝性脳症(異常行動、傾眠、昏睡、見当識障害など)
肝臓がんに関連した症状は初期ではなかなか自覚しにくいため、いつもと違う、またはこれらの症状が長引いていると感じたならぜひ早めに医療機関を受診してください。

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