「腎臓がんの末期症状」はご存知ですか?末期の治療法も解説!【医師監修】
腎臓がんは、腎臓の細胞ががん細胞に変化する病気です。初期には症状が出にくく、健康診断で偶然発見されることも少なくありません。
進行するとさまざまな末期症状が現れ、完治が難しくなります。よって早期発見と早期治療がとても大切です。
この記事では、腎臓がんの末期症状、診断方法や治療についてわかりやすく解説します。
監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
腎臓がんとは
腎臓がんは、腎臓の細胞ががん細胞に変化する病気です。腎臓は尿を作る腎実質と作られた尿が集まる腎盂に大きく分けられます。
腎実質に生じるがんを腎細胞がん・腎盂にできるがんを腎盂がんと場所により区別して呼び、治療法やがんの性質も異なるのが特徴です。腎臓がんの危険因子は肥満や喫煙、遺伝要因による体質が考えられています。
腎臓がんは、初期に治療を行うと予後がよいといわれるがんです。早期は無症状であることが多く、進行するとさまざまな症状が現れます。健康診断で偶然発見されることも多く、早期発見と早期治療が重要な悪性腫瘍の一つです。
腎臓がんの診断方法
腎臓がんの診断は、超音波検査やCT・MRIなどの画像検査や、必要に応じ侵襲的な生検によりがんを確認する病理組織学的検索も行われます。
腎臓がんで末期と診断されるのは、以下のような診断や状態が確認された場合です。
- 腫瘍が大きく周囲の臓器へ浸潤
- リンパ節への転移
- 他臓器へ転移している状態
具体的にはステージ4に該当します。がんの末期とは、がんが進行して治療が難しく、緩和ケアが中心となる段階をさします。
腎臓がんの末期症状
以下の3つの徴候は古典的三大症状と呼ばれ、腎臓がんが進行した症状として知られています。
- 血尿
- 疼痛
- 腹部腫瘤
そのほかにも、全身にさまざまな症状が現れます。詳しくみていきましょう。
血尿
血尿はがんが大きくなり、尿の通り道を破ることで生じます。血尿は、顕微鏡的血尿と肉眼的血尿に分類されます。
肉眼でも尿が赤いことがわかるくらいの血尿は、肉眼的血尿と呼び、腎臓がんの重要なサインです。
激しい痛み
腎臓がんの痛みは初期には軽度ですが、進行すると激痛に変わります。痛む場所は個人によっても異なりますが、腰や背部です。
特に末期には腫瘍が周囲の組織を圧迫し、持続的な強い痛みが生じます。痛みは医療用麻薬などを用い、和らげることが可能です。がんによる辛さを我慢すると、睡眠不足や気持ちの落ち込みなど、生活に支障が生じます。症状があるときは、早めに医師や看護師に伝えましょう。
下痢
下痢は、腎臓がんそのものや治療の副作用によって引き起こされる症状の一つです。抗がん剤や放射線治療により腸の粘膜が傷つくことや、腎臓の機能が低下することが原因といわれています。
下痢が続くと脱水や栄養障害が生じることがあるため、食事の改善や水分補給など、適切な対策を行うことが重要です。
腹部に腫瘤ができる
腎臓にできる腫瘍が大きくなり、触れるほどになる場合があります。
7cmという大きさはステージを決めるうえでも重要です。初期は腫瘍も小さく症状が少ないですが、大きくなるとほかの臓器を圧迫するなど症状を引き起こします。
手足症候群
手足症候群は、手や足の皮膚に痛みや痺れ、発赤などの症状を引き起こします。抗がん剤治療の副作用として認められる症状です。重症化すると皮膚の剥離や潰瘍を引き起こすことがあり、生活の質を落とす原因になります。
特に腎臓がん治療に用いられる一部の抗がん剤は手足症候群を引き起こしやすいといわれ、早期に医師に相談し適切な対策をとることが重要です。
自身でも、保湿剤や厚手の靴下を履くなどして、重症化を予防しましょう。
高血圧
腎臓のはたらきが悪くなると塩分や水分の排泄が十分にできず、血液量が増し血圧が上がることがあります。さらに、血圧が上がれば腎臓への負担が増し、ますます腎臓の機能が低下します。
塩分を控えた食事やストレスの軽減が有効です。病気の時でも、投げやりにならず生活習慣を見なおしましょう。
甲状腺機能低下症
甲状腺から放出されるホルモンは、身体のガソリンに例えられる重要な物質です。
治療薬の副作用で甲状腺機能の低下が起こることがあります。症状は無力感や発汗減少などです。甲状腺ホルモンの値を測定し、必要があれば補充をすることで対策します。
高カルシウム血症
高カルシウム血症は血中のカルシウム値が通常より高くなった状態をいいます。
がん患者さんの20~30%に認められ、早急な治療介入が必要です。放置すると腎不全や不整脈など命に関わる症状が起きる可能性があります。
腎臓がん末期の治療方法
腎臓がんを治すための一般的な方法は、手術による完全切除です。しかし末期がんは、ほかの臓器に転移がおよび手術が難しい段階がほとんどです。
腎臓がん末期の治療法は薬物療法や免疫療法が中心となります。 痛みや症状を和らげ、生活の質を向上させる対症療法や緩和ケアも重要です。
腎臓がんに有効な2つの治療法を解説します。自身が発症した場合、どのような治療法を行うのか、確認してみましょう。
光免疫療法
光免疫療法は、腎臓がん末期に検討される積極的な治療法です。がん細胞のみにくっつく薬を使い、光をあててがん細胞を壊します。身体への負担が少なく、副作用も抑えられるのが特徴です。
治療の選択には専門の医師との十分な相談が必要とされ、患者さんの希望や生活状況も考慮されます。
対症療法
対症療法は患者さんの苦痛や症状の緩和に役立ちます。腎臓の原発巣や転移した臓器に対して、QOLの改善を目的とした手術が行われることもあり、がんがあっても自分らしく生活できるサポートを活用することが重要です。
具体的には、以下のような心構えが大切になります。
- 辛さを我慢しない
- 自分らしい過ごし方を話し合う
- 患者さんのみならず家族のケアも重要
また、自宅での訪問診療や公的サービスの利用も可能です。
腎臓がんについてよくある質問
ここまで腎臓がんの末期症状・診断方法・治療方法などを紹介しました。ここでは「腎臓がんの末期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腎臓がんの末期症状が出現してからの予後はどのくらいですか?
山本 康博(医師)
患者さんの全身状態やがんの広がり、治療の有無によっても異なります。一般的に末期といわれるがんは、ほかの臓器に転移していることがあり、ステージ4に該当します。個人差はありますがステージ4のがんの予後は、 6ヶ月から2年で、5年生存率は約20%です。
腎臓がんの末期からも完治することはありますか?
山本 康博(医師)
完治は難しいといわざるを得ません。しかし、免疫チェックポイント阻害剤や分子標的薬といった副作用が少なく効果的な治療法の導入により、生存期間が延びることも期待されています。早期から緩和ケアを取り入れることで、患者さんの 生活の質を高めながら、がんとつきあっていくことが大切です。
編集部まとめ
今回は、腎臓がんの末期症状や診断方法、治療方法などを解説しました。
末期には完治が難しく、さまざまな症状が現れるため早期発見と早期治療が大切な悪性腫瘍です。
末期がんと診断されても健康な方と同様に、適度な運動や規則正しい生活・食習慣を送ることで、生存期間が延びることも期待できます。
早期から緩和ケアを導入することで、 苦痛を緩和し生活の質を高めながら、がんとうまくつきあっていくことも重要です。
肝臓がんと関連する病気
「腎臓がん」と関連する病気は9個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肝臓がんと関連する病気には以上のような種類があるため、定期的な検診を行って早期発見・早期治療を行いましょう。
肝臓がんと関連する症状
「腎臓がん」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の症状は初期の段階でほとんどみられず、腫瘍が大きくなってくると現れる可能性があります。いずれも腎臓がん特有の症状ではないため、定期的に検査を受けることが重要です。