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「肺がん手術の入院期間」はどのくらい?手術の種類や費用も解説【医師監修】

 公開日:2025/06/23
「肺がん手術の入院期間」はどのくらい?手術の種類や費用も解説【医師監修】

肺がんは日本国内において、男女ともに罹患率の多いがんのひとつです。

一般的には男性が罹患するというイメージを持つ方が多い疾患ですが、女性の罹患率も高く2020年の統計では第3位に順位づけされています。

以前は治療が難しいといわれていた肺がんは、手術支援ロボットといった医療技術の進歩により5年生存率がよくなりつつある疾患です。

本記事では肺がんの主な治療法でもある手術療法について、入院期間や手術の種類などを解説します。

山本 康博

監修医師
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)

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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい院長
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医

肺がんとは

肺がんは、肺を構成する気管支や肺胞にできた悪性腫瘍をいいます。腫瘍がはじめから肺に発生した場合は原発性肺がん、他臓器由来の腫瘍が肺に転移した場合は転移性肺がんです。
原発性肺がんの原因はタバコやアスベストといった物質由来が7割ほどを占め、残りは環境や遺伝子、食生活などの要素が原因です。
肺がんの治療は、腫瘍組織の種類や病期でそれぞれ異なる治療法が選択されます。治療法は主に手術療法、化学療法や放射線治療を行います。

肺がん手術の種類

肺がんの手術は、4種類ほどあります。手術には開胸手術と胸腔鏡手術またはロボット手術があり、手術範囲や癒着などを考慮したうえで決定します。
胸腔鏡や手術支援ロボットを用いた手術は、傷が目立ちにくく出血量が少ないなど身体への負担が小さいのが特徴です。
手術を行う際には、複数の医師で術前の全身状態や手術歴などを考慮し、患者さんに見合った術式が選択されます。

片側肺全摘手術

片肺全摘除術は、病巣がある肺を全摘出する術式です。手術範囲が広く、複雑な手技を必要とする場合が多いため、基本的に開胸手術が選択されます。
開胸手術は肋骨に沿って、皮膚を背中側から10〜20cmほど切開します。片肺をすべて切除するという方法から、術後に肺活量などの呼吸機能が顕著に低下するのが特徴です。
可能な限り肺機能の温存を図るため、術前および術後にはしっかりとした呼吸機能訓練を実施します。

肺葉切除

肺葉切除は、肺の上・中・下葉の区域ごとに切除する方法です。リンパ節転移が疑われる症例に対しては、所属リンパ節郭清も実施します。
手術方法は、開胸手術か胸腔鏡補助下手術のどちらかが基本的に選択されるものの、病院の規模によってはロボット支援下での手術も可能です。
肺葉切除は片肺全摘除術よりも切除区域が小さいため、手術時間が短時間に留められる利点があります。

区域切除

区域切除は、胸腔鏡やロボット手術によって肺葉切除よりも小さな範囲を摘出する方法です。区域切除の対象となる症例は、ステージIAなどの早期がんが大半を占めます。
肺は肺葉という2〜3つの部分分けのほかに、右肺で10箇所、左肺で8箇所と細かい区域分けがされています。肺葉切除より、広範囲で臓器の温存が可能です。
身体への負担が少ない術式という特徴から、入院日数や術後のリハビリにかける時間が少ないのも特徴です。

楔状切除

楔状切除は区域切除よりも小さな範囲で、腫瘍がある部分のみを楔形に切除する方法です。区域切除同様に早期がんに対して選択される術式で、胸腔鏡やロボット手術で実施されます。
肺がん手術のなかで切除範囲が小さい楔状切除は、出血量や切除範囲が少ないのが特徴です。肺機能自体の温存も図れるだけでなく、手術時間も短いため身体への負担も少ないのがメリットです。

肺がん手術の入院期間はどのくらい?

肺がんの手術は、数日間の入院が必要です。肺がん手術の際は、多くの施設でクリニカルパスを使用しています。
クリニカルパスは、入院から退院までの検査や手術、リハビリについて大まかにスケジューリングした治療計画です。
ほとんどの患者さんは、クリニカルパスに沿って治療していくため、合併症などがなく順調に経過できた場合の入院期間は長くても1〜2週間ほどです。

片側肺全摘手術の場合

片肺全摘除術でクリニカルパスを使用する場合の入院期間は、術前日から早ければ術後5日ほどで退院が可能です。
ただし術前化学療法をしていたり、抗血小板薬や抗凝固薬など手術に伴って休薬が必要な内服薬を服用したりしている方は入院期間が長くなる可能性もあります。
術後の回復具合には年齢差はもちろん、個人差もあります。クリニカルパスを用いない場合や、術後合併症が起こった際は、患者さん個々の回復具合で退院が決定されるケースがほとんどです。

肺葉切除の場合

肺葉切除の場合、手術前日の入院から術後4日までの入院期間である場合が多いです。クリニカルパスを使用する場合は、パスに沿った治療が実施されます。
手術後は肺の回復を手助けする目的で挿入されるドレーンが取れなければ、クリニカルパスに沿った日程での退院はできません。
術後の回復過程が想定よりもゆっくりであった場合は、傷を含めた全身の状態を評価したうえで退院が決定されます。

部分切除・楔状切除の場合

肺の部分切除や楔状切除の場合は、肺葉切除より入院期間は短くなります。部分切除は楔状切除よりも広範囲の切除となるため、術後6日〜1週間ほどでレントゲンで手術後の状態確認を行います。
切除部位が小さい楔状切除では、ドレーンを挿入せず経過観察する場合もあるものの、術後のレントゲン撮影は欠かせません。
楔状切除の場合は術後2〜3日ほどでレントゲン撮影で術後の状態を確認し、術後の状態がよければ退院が可能です。

肺がん手術の費用相場

肺がんの手術で請求される一般的な入院費用の相場は、総額で1,000,000〜1,600,000円ほどです。
しかし肺がんの手術は保険適用であるため、総額を支払うわけではありません。診療報酬の点数が高い特別な管理を行った場合は、請求費用も高額です。
差額病床分は保険適用とならないため、使用した分が全額請求される仕組みとなっています。

3割負担の場合

3割負担の請求額は肺葉切除で500,000円ほど区域切除で450,000円ほどです。楔状切除の場合は、切除範囲が小さく在院日数も少ないため、負担金額はさらに少額となります。
肺葉切除や区域切除などは、手術支援ロボットを使用する場合もあります。手術支援ロボットは新しい手術方法であるものの、基本的には保険適用です。
ただし手術支援ロボットでの手術が可能な施設は、多くは設備が整った施設であるため、請求金額が高くなる可能性もあります。

2割負担の場合

2割負担の場合に請求される金額は、250,000〜350,000円ほどです。3割負担のケースと同様に切除範囲が小さく、在院日数が少なければ少ないほど請求額は少なくなります。
区域切除や肺葉切除の場合は300,000〜350,000円ほどで、楔状切除の場合はそれより少ない250,000円ほどです。
しかし費用はあくまでも相場で、集中治療室を利用した場合も診療報酬に加算されます。
そのため、一人ひとりの患者さんの年齢や既往歴などの状態が処置や入院治療に反映された場合、費用は大きく異なる場合があるため注意が必要です。また入院期間中に保険適用外の差額病床を使用し続けた場合、思いがけず請求費用が高額となる可能性もあります。

1割負担の場合

1割負担の場合に請求される費用相場は、120,000〜170,000円ほどです。
肺葉切除では170,000円ほど区域切除では150,000円ほどで楔状切除の場合は130,000円ほどになります。
片肺全摘除を行った場合は手術範囲が広く、在院日数も多いため請求金額は肺葉切除よりも高額です。
しかし請求費用が高額になった場合でも、請求金額がすべて保険適用となっている場合は高額療養費制度が利用できます。

肺がんの入院期間についてよくある質問

ここまで肺がんの入院期間や手術の種類などを紹介しました。ここでは「肺がんの入院期間」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺がん手術後の入院が長引くのはどのようなケースですか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

手術後の入院が長引くのは、合併症に陥ったり術後の回復が遅かったりする場合です。術後合併症は肺炎や無気肺といった呼吸器由来のものや、傷口からの感染症や縫合不全といったものなどがあります。ほかにも糖尿病や心疾患で持病を抱えている方の場合は、内服薬を調整して全身状態をコントロールするために、入院が長くなるケースもあります。

退院後はどのくらいで仕事復帰できますか?

山本 康博医師山本 康博(医師)

退院後から職場に復帰するまでの期間は、個人差があるものの基本的には2週間〜1ヶ月以上です。術後の回復過程は個人差が大きく、患者さんによっては術後に化学療法や放射線療法を必要とするケースもあります。退院後は自己判断で職場復帰せず、しっかりと主治医に相談しましょう。

編集部まとめ

ここまでは肺がんの手術療法について、手術の方法や入院期間、費用についての説明をしてきました。

肺がんの手術療法は医療技術や研究の向上により、手術可能な症例が増えたり身体への負担が軽減されたりと治療は日々進歩しています。

ただし手術療法は依然として高額になるケースがあり、費用についての心配が尽きない方が多いのではないでしょうか。

手術費用が予想より高額だった場合は高額療養費制度の利用が可能なため、心配な場合は医療相談窓口を利用するとよいでしょう。

肺がんと関連する病気

「肺がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

上記の疾患は、後に肺がんに発展する可能性があるものも存在します。また、ただちに治療が必要な疾患もあるため、気になる症状がある場合には躊躇せず医療機関を受診しましょう。

肺がんと関連する症状

「肺がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 乾いた咳
  • 喀痰
  • 血痰
  • 呼吸困難

上記の症状は、肺がんのみならず呼吸器感染症などと共通した症状も存在します。気になる症状がある場合には放置せずに医療機関を受診し、必要な治療を受けるよう心がけましょう。

この記事の監修医師