「肺がんの手術後の生存率」はどのぐらい?外科治療の対象となるケースも解説!【医師監修】

肺がんは年齢とともに発症率が高くなる病気です。特に、50代以降に診断される割合が増加し、70代以上が特に多く見られます。
喫煙している方の発症例が多く、男性患者さんの68%、女性患者さんの18%が喫煙者です。受動喫煙などの要因のほかにも、遺伝的要因も関係があり、若い女性患者さんも増加しています。
この記事では肺がんの生存率について、症状や種類、ステージ別の治療法などを交えて解説しています。長生きを目指しているあなたも、肺がんについて知識を深めましょう。

監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
肺がんとは
肺がんとは、肺の内部にある肺胞や気管支の細胞が、がん化して起こる病気です。肺がんの種類(組織型)は4つあります。
- 小細胞がん
- 腺がん
- 大細胞がん
- 扁平上皮がん
肺がんは4つの種類のなかでも小細胞がんとそれ以外のがんに分けて扱うため、それぞれ解説します。
小細胞がん
ほかの組織型のがんより転移しやすく病気の進行が早いことが特徴で、肺の入り口(肺門)と肺の奥(肺野)のどちらにも発生するがんです。タバコとの関連性が強いといわれており、肺がんに占める割合は10%程です。
手術可能な時期に発見するのが難しい傾向にあり、発見されたときには病気が進行していることがあります。
非小細胞がん
非小細胞がんには3つの種類があります。
- 腺がん…50〜60%を占めており、肺の奥(肺野)に発症
- 扁平上皮がん…25〜30%を占めており、肺の入り口(肺門)に発症
- 大細胞がん…5%程度で、小細胞がんや非小細胞がんに分類されないもの
小細胞がん以外の肺がんを総称して非小細胞がんと呼びます。もっとも一般的な肺がんで、手術による治療が一般的です。
徐々に進行していく非小細胞がんは、初期症状が現れにくいため発見が遅れる傾向にあり、発覚した時点でほかの臓器に転移していることもあります。
肺がんで手術の対象となるのはどこまでか
肺がんの手術適応は、初期段階の腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんが中心です。
がんの種類や病状によって治療方針が異なり、早期発見が難しいため手術が適応外となる場合には放射線治療や化学療法が選択されます。
小細胞がん
小細胞がんは、進行が早く手術ができる初期に見つかることが少ないため、基本的に手術ではなく化学療法や放射線治療を行います。
小細胞がんには、ほかのがんとは違う2つの病期分類があります。
- 限局型
- 進展型
限局型は、がんの部位が放射線で治療できる範囲にとどまっている状態を指します。限局型では主に抗がん剤による化学療法と放射線治療を中心にして治療が行われます。初期に発見された場合のみ行われる手術があり、化学療法を行う前にがんを取り除く手術です。
進展型の小細胞がんは手術や放射線治療では対応できない範囲にがんが広がっているため、化学療法が行われます。
非小細胞がん
非小細胞がんは、がんの進行度を示すステージ(病期)によって手術が行われるか、ほかの治療となるかが分かれます。一般的に非小細胞がんで手術ができるのは、以下のステージです。
- ステージ1
- ステージ2
- ステージ3の一部
この範囲を超えてがんが進行しているステージ4では、放射線治療や化学療法が用いられます。
また、病状によってはステージに関わらず手術せず別の治療を行うこともあるため、主治医と相談のうえで治療を選択できます。
肺がんの手術後の5年生存率
肺がんの手術および治療後の5年生存率は、肺がん全体でみると40.04%です。5年生存率は治療を開始したときのステージにより、数値が異なります。
ステージ1
ステージ1の5年生存率は74.0%です。
がんが肺の中だけにあり、その他の場所に転移が認められない初期の状態で治療ができるため予後の経過もよく、生存率はほかのステージに比べると高めとなっています。
ステージ2
ステージ2の5年生存率は46.2%です。
肺の中のがんが大きくなっている状態、もしくはがんと同じ肺のリンパ節に転移している状態です。
ステージ3以降
ステージ3の5年生存率は26.6%、ステージ4は7.4%です。
ステージ3ではがんが肺の周囲の心臓や大血管などの臓器やリンパ節にも転移しており、治療範囲が拡大しています。
ステージ4では、肺の別の場所に加えて、骨や脳などの遠い場所にまでがんが転移している状態です。ステージ4では余命宣告される場合も考えられます。
肺がんの手術後の生存率が高くない理由
肺がんの手術を受けたり化学療法や放射線治療を受けたりした後の生存率が高くない理由は、以下の3つです。
- 初期発見が難しい
- ほかの臓器に転移しやすい
- 小細胞がんの悪性度が高い
以下に詳しく解説します。
初期発見が難しい
肺がんの初期には身体症状が出にくく、気付いたときには病気が進行している場合も少なくありません。
まったく気付かないうちに病気が進行していることも、肺がんでは珍しくなく、体調に異変を感じたら医療機関を受診することが大切です。
ほかの臓器に転移しやすい
肺には全身に空気を送るための血管と、全身の免疫機能を支えるリンパが集まっている臓器です。そのため、肺にできたがん細胞が血液やリンパの流れに乗って身体中に広がり、血液を介した血行性転移やリンパを介したリンパ行性転移が起こります。
血行性転移では脳や骨、肝臓や副腎に転移が見られやすく、リンパ行性転移では肺に近いリンパ節から転移が広がります。
小細胞がんの悪性度が高い
肺がんのなかでも、小細胞がんは悪性度が高いといわれています。非小細胞がんに比べて増殖スピードが速く、リンパ節への転移や遠く離れた臓器への転移が早期に起こる病気です。進行が早いことで手術できないこともあります。
肺がんについてよくある質問
ここまで肺がんについて、種類や手術の対象、ステージごとの5年生存率などを紹介しました。ここでは「肺がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ステージ1・2でも手術できないケースはありますか?
山本 康博(医師)
非小細胞がんは一般的にステージ1や2の段階では手術で治療します。ただ、患者さんの年齢や体調が手術に耐えられるか、元の生活に戻ったときに今までと変わらず過ごせるのかなど慎重に考えることが必要です。手術に耐えられないと判断した場合には、放射線治療や化学療法を検討します。また、小細胞がんは手術しないことが多く、まれに手術でがんを取り切った後に化学療法を行うことがあります。
肺がん手術後に放射線・化学療法のどちらも必要ですか?
山本 康博(医師)
早期の非小細胞がんの場合は、手術で治療が行われることが一般的です。手術後に放射線や化学療法を行い、再発しないようにする場合もあります。また、手術では取りきれない部分があるときや、ほかの病気の影響があるときには放射線治療や化学療法が選ばれます。
編集部まとめ
本記事では、肺がんの症状と種類・手術の対象とステージ(病期)ごとの生存率の違い、生存率が高くない理由を解説しました。
早期発見の難しい肺がんに万が一罹患したときには、すぐ対処できるよう、小さな症状も見逃さないことが大切だとわかりました。
肺がんは、近年は若い方や女性の患者数も増加傾向にあるため、少しでも気になる症状が現れたときには医療機関を受診しましょう。
早期発見が生存率向上に直結する肺がんの知識を、あなたやご家族の健康管理に役立てましょう。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんの初期症状は肺炎や気管支炎の症状と似ているため、軽く考えて症状を放置してしまわないように注意が必要です。また、ほかの場所にあるがんが肺に転移している状態の転移性肺腫瘍は、肺がんとは異なる病気のため治療法も異なっていきます。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
病気が進行してから症状が出始めることもある肺炎の症状は、風邪をひいたときや肺炎のときと同じようなものです。少しでも違和感を覚える症状があれば、早めに医療機関を受診することをおすすめします。
参考文献