「胃がん・スキルス胃がんになりやすい人」の特徴はご存知ですか?医師が徹底解説!
胃がん・スキルス胃がんになりやすい人の特徴とは?Medical DOC監修医が胃がん・スキルス胃がんになりやすい人の特徴・症状・原因・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんとは、胃の粘膜にがん細胞ができ、増殖する病気です。日本では胃がんの発生率は減少傾向ですが、日本人の死亡原因の上位に位置しています。早期の胃がんは自覚症状が現れにくいですが、進行すると症状が現れる場合があります。胃がんの早期発見・治療のため定期的な検診が推奨されています。
「スキルス胃がん」とは?
スキルス胃がんは、胃がんの中でも進行が早く、症状が出にくいのが特徴です。胃壁を硬くしながら浸潤していくため、早期発見が難しいという側面があります。また比較的若年層の女性に多いという一般的な胃がんと異なる側面も持っています。
胃がん・スキルス胃がんになりやすい人の特徴
スキルス胃がんの原因ははっきりとしたものがわかっていません。しかしスキルス胃がんと胃がんになりやすい人には、いくつかの共通点があります。
ピロリ菌感染者
ピロリ菌は、胃の粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、胃がんのリスクを高めます。ピロリ菌感染は、胃内視鏡検査や血液検査、尿素呼気試験などで判定を行います。胃がん検診などでピロリ菌の感染が疑われた場合には、お近くの消化器科で除菌治療を受けましょう。
濃い味付けを好む人
塩分の多い食事は胃の粘膜が傷つき、胃炎が発生し、胃がんのリスクが上がると考えられています。伝統的な日本食である漬物や塩蔵の魚卵や塩辛などの塩分の濃度の高い食品を毎日食べるような極端な食生活は控えましょう。受診の必要性はありませんが、普段から減塩を心がけましょう。
喫煙者
喫煙が胃がんのリスクになることがわかっています。タバコに含まれる発がん性物質が、胃の粘膜を傷つけ胃がんの発生に関わります。必要時は禁煙外来の受診を検討しましょう。
過剰な飲酒をする人
過剰な飲酒は胃がんのリスクを高めます。アルコールは、胃の粘膜を刺激し、炎症を引き起こす可能性があります。
胃がんの家族歴がある人
一般的な胃がんでは家族歴があると罹患リスクが高いことがわかっています。親族に胃がんの方がいる場合は積極的に検診を受けましょう。検診を受ける場合は、地方自治体が行っているものや、消化器科クリニックを受診しましょう。
胃がんの治療歴がある人
過去に胃がんで内視鏡治療や胃切除術などの既往がある人は、胃がんのリスクが高くなります。手術後も定期的な内視鏡検査をするのがおすすめです。
胃がん・スキルス胃がんの代表的な症状
腹部膨満
胃がんがお腹の中にばらまかれた状態を腹膜播種といいます。腹膜播種が起こるとお腹の中に腹水が溜まり、治療しなければ量が減ることはありません。結果として、食事とは関係なく常にお腹が張る症状がでることがあります。腹部膨満の症状がある時は近くの内科や女性なら婦人科を受診しましょう。
食べ物のつかえ感・嘔吐
胃がんによって胃からの食物の排出ができずに食事がつかえて、嘔吐してしまうことがあります。胃の通りは徐々に悪くなるのが特徴的です。この症状が胃がんによって出現した場合は、ある程度進行した胃がんやスキルス胃がんの可能性があります。つかえ感や嘔吐の症状は良性疾患でも出る場合があるので、気になる症状がある場合は消化器内科を受診しましょう。
下血・黒色便
胃がんがあると粘膜から出血が起こりやすく下血・黒色便の原因となります。特に胃・十二指腸からの出血は胃酸によって血液が酸化され黒い色がつくため、黒色便として排出されるのが特徴です。大腸からの出血や痔などでも便に血が混じることがあります。下血や黒色便が出た場合には、消化器科をすぐに受診しましょう。
胸焼け・胃もたれ
胃がんの症状として胸焼け・胃もたれを感じることがあります。これは、胃がんによって胃内容物の停滞が起こっていたり、胃酸の逆流を引き起こしたりしている場合があります。これらの症状があるからといって必ずしも胃がんとは限りません。自己判断せず、消化器科を受診して検査を受けましょう。
貧血
がんからの出血や、がんによる栄養吸収の障害によって、貧血が起こることがあります。これらの症状は、胃がん以外の病気でもみられることがあります。しかし、これらの症状が続く場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。
胃がん・スキルス胃がんの主な原因
胃がんの原因は、まだ完全に解明されていませんが、ピロリ菌感染、食生活、喫煙、飲酒、遺伝などが複合的に作用すると考えられています。
ピロリ菌
ピロリ菌は、胃の粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、胃がん・胃潰瘍などのリスクを高めます。胃がん検診などでピロリ菌の感染が疑われた場合にはお近くの消化器科を受診してください。
塩分の過剰摂取
前述の通り、塩分の多い食事は胃炎や胃がんのリスクになります。胃がん予防の観点でも減塩は大切です。さらに減塩することで高血圧や心臓病のリスクも下げることができます。普段から減塩を意識しましょう。
喫煙者、過剰な飲酒
前述の通り喫煙、過剰な飲酒が胃がんのリスクになります。たばこは禁煙、アルコールは適量にとどめましょう。
遺伝的要因
前述のように胃がんの家族歴があると胃がんの罹患率が高いことが分かっています。近い親族に胃がんの方がいる場合は積極的に検診を受けましょう。
年齢
胃がんは齢になるほどリスクが高まります。特に50代からの罹患率が上がってくるので、50代以降の方には胃がん検診がおすすめです。
胃がん・スキルス胃がんの予防法
胃がんを予防するためには、以下の点に注意することが大切です。
ピロリ菌の除菌
ピロリ菌の除菌によって胃がん罹患リスクはほぼ半減することがわかっています。まずは胃カメラでピロリ菌の感染が疑われる胃炎があるかどうかを判定します。胃炎がある場合、呼気試験や血液検査などでピロリ菌感染の判定を行います。ピロリ菌の陽性の場合は除菌治療を行います。50歳以上の方は、胃がん検診や胃カメラの検査を受けてみてはいかがでしょうか。
塩分を控える
前述のように、塩分の高い食事で胃がんのリスクが上がります。胃がん予防のために塩分を控えることが重要です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」によると、1日の塩分摂取量の目標量は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満とされています。胃がん予防の観点でも減塩がおすすめです。
禁煙する
前述のように喫煙は胃がんのリスクです。がんを予防するためには、たばこを吸わないことが理想です。また周りの人への受動喫煙の影響も無視できません。現在喫煙中の方も、禁煙することによってがんになるリスクを下げることができます。自分で禁煙が難しいときは禁煙外来へ受診することを検討しましょう。
節酒する
飲酒はアルコール換算で20gまでが適量です。缶ビール500 mL 1本または日本酒1合が目安になります。それより多い飲酒は胃がんのリスクを高める可能性があるので、胃がんの予防のためにも節酒を意識しましょう。
定期的な検診を受ける
胃がん検診を受けることで胃がんの前の段階のポリープを見つけることができれば、がんになる前に予防的な治療ができます。50歳以上の方は胃がん検診を受けましょう。
「胃がんになりやすい人」についてよくある質問
ここまで胃がんになりやすい人の特徴を紹介しました。ここでは「胃がんになりやすい人」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃がんの好発年齢について教えてください。
浅野 智子 医師
胃がんの好発年齢は70-80代です。60代から罹患率が上がります。つまり、一般的な胃がんは高齢になると罹患しやすい傾向があります。しかし、胃がんの中でもスキルス胃がんは20代といった若い年齢でも発症することがあり、注意が必要です。
編集部まとめ リスクを理解して、胃がんを予防しよう
今回の記事で紹介したように、胃がんのリスクとなる特定の生活習慣を避けましょう。また初期症状の出にくい胃がんですが、一部症状には注意が必要です。胃がんは定期的な検診などで早期発見、早期治療が重要です。50歳以上の方は胃がん健診を積極的に受けましょう。ピロリ菌の感染があれば除菌治療がおすすめです。またピロリ菌の除菌が終わっても胃がんリスクがすぐに減るわけではないので定期的な検査を受けましょう。
「胃がん」と関連する病気
「胃がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血液科の病気
胃がんと関連する病気は良性の疾患を含みます。気になる症状があれば、検査ができる消化器内科を受診しましょう。
「胃がん」と関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は9個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の症状だけでは病気を断定できません。症状がある場合には、まず内科を受診しましょう。定期的な胃がん検診もおすすめです。