目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 「リンパ浮腫」治療方法をご存知? 進行を抑える方法や手術について医師が解説!

「リンパ浮腫」治療方法をご存知? 進行を抑える方法や手術について医師が解説!

 更新日:2024/07/05
リンパ浮腫にはどんな治療法がある?【医師が解説】

がんの治療の過程やなんらかの原因で発症する「リンパ浮腫」には、完治のための治療方法はありません。一方、症状が進行しないように食い止めるための方法や、手術があることをご存知でしょうか? 今回は、リンパ浮腫の原因や進行を抑制するためのポイント、治療方法としての手術について医師の長西 裕樹先生(NACSクリニック リンパ浮腫センター北横浜院長)にお聞きしました。

長西 裕樹

監修医師
長西 裕樹(NACSクリニック リンパ浮腫センター北横浜)

プロフィールをもっと見る
横浜市立大学医学部卒業後、横浜市立大学附属2病院や北里美容医学センター、神奈川県立こども医療センター、横浜市立大学附属市民総合医療センターなどで経験を積む。2013~23年度、済生会横浜市南部病院 形成外科主任部長を務め、2024年4月より現職。日本形成外科学会 専門医・指導医、再建・マイクロサージャリー分野指導医、小児形成外科分野指導医、日本頭蓋顎顔面外科学会 専門医。

「リンパ浮腫」の概要 原因や種類について医師が解説

「リンパ浮腫」って何?

編集部編集部

まず初めに、「リンパ浮腫」とはどのような状態のことを指しますか?

長西 裕樹先生長西先生

私たちの体内には「リンパ液」とよばれる液体が循環しています。このリンパ液の役割として、細胞間液や老廃物を回収して体外に排出する機能があります。しかし、なんらかの原因でこの流れが阻害されると、組織に余分な液体がたまって浮腫んでしまい、リンパ浮腫と呼ばれる状態になります。

編集部編集部

リンパ浮腫の原因は何でしょうか?

長西 裕樹先生長西先生

多くの場合、乳がんや子宮がんなど婦人科系がんの手術後にリンパ浮腫が起こることがあります。理由としては、がんの手術に伴うリンパ節の切除や抗がん剤治療、放射線療法が誘因となるからです。一方で、がんを患っていないのにリンパ浮腫になるケースや、生まれつきリンパ浮腫を呈する方もいらっしゃいます。

編集部編集部

要因がないのにリンパ浮腫になるのですか?

長西 裕樹先生長西先生

そうですね。「原発性リンパ浮腫」といって、先天的な異常や遺伝的な問題によって引き起こされるリンパ浮腫があります。明確な原因はわかっていませんが、生まれつきリンパ系組織の余裕が少なかったと推測されます。

「リンパ浮腫」の発生予防や進行予防はどうしたら良い?

リンパ浮腫の発生予防や進行予防はどうしたら良い?

編集部編集部

では、「リンパ浮腫」を予防する方法はありますか?

長西 裕樹先生長西先生

まず、患者さんが日々できることとしては体重を増やさないことを意識してみましょう。皮下脂肪が増えると、リンパ管にかかる圧が大きくなるのでリンパが流れにくくなってしまうのです。

編集部編集部

ほかには何かありますか?

長西 裕樹先生長西先生

リンパ浮腫の悪化の原因で非常に多いのが細菌感染です。巻き爪、水虫、ペットや虫に噛まれたなどちょっとした傷から感染する場合も少なくありません。普通より感染が悪化しやすいので、放置せず早めに皮膚科などの医療機関を受診することが大切です。

編集部編集部

では、進行予防はどうですか?

長西 裕樹先生長西先生

発生してしまった場合の進行予防も、基本的には予防法と同じく太らないようにすることと感染予防が大切です。特に、一度リンパ浮腫となった腕や脚は、通常より動かしにくく皮下脂肪が溜まりやすくなるので、これまで以上に体重管理に注意を払う必要があります。

医師が解説! リンパ浮腫の手術療法とは? メリットや注意点も教えて!

医師が解説! リンパ浮腫の手術療法とは? メリットや注意点も教えて!

編集部編集部

リンパ浮腫になったらどのような治療法があるのでしょうか?

長西 裕樹先生長西先生

まずは弾性ストッキングなどを使った圧迫療法が基本となります。ストッキングなどで強い圧力をかけて、リンパ管に溜まっているリンパ液を強引に流し出すという方法です。それでも改善されない場合、手術療法を検討します。

編集部編集部

どのような手術ですか?

長西 裕樹先生長西先生

リンパ浮腫によって増える「水分」と「脂肪」に対するアプローチとなります。水分を減らす「リンパ管細静脈吻合(LVA)」という手術は、リンパ管内の流れが滞って内圧が高くなった状態に対して、静脈への逃げ道を作り、うっ滞を解消します。切開が2cm程度で済むこと、さらに局所麻酔で実施できるため、体への負担も少なく、即効性が期待できるなどのメリットがあります。

編集部編集部

では、「リンパ管細静脈吻合(LVA)」の注意点はありますか?

長西 裕樹先生長西先生

これまで、LVAは期待できる効果に個人差が大きい、何回も手術を繰り返してもわずかな効果しか得られなかった、というケースも見受けられ、懐疑的な意見もありました。しかし、最近はより効果的なLVAを行うための事前検査のコツが色々と分かってきており、この問題は解消されつつあります。

編集部編集部

増えた脂肪に対しては、どのようにアプローチすればいいのでしょうか?

長西 裕樹先生長西先生

まずはダイエットです。ただし、リンパ浮腫を患った手足は太りやすく、痩せにくい性質をもっています。そのため、左右差が残ってしまうケースも多く、その場合は手術で脂肪吸引を検討することもあります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

長西 裕樹先生長西先生

リンパ浮腫は、見た目だけの問題ではありません。手足が太く重たくなると、運動機能も制限されて、生活のQOLも悪くなっていきます。お早めに専門の医療機関に相談ください。がんサバイバーの皆さんを応援したい医療者はたくさんいますので「治療を頑張りたい」という方は、一度専門の医療機関に相談してみてはいかがでしょうか。

編集部まとめ

「リンパ浮腫」とその治療方法について、医師にお話を聞きました。まずは体重コントロールと感染に気をつけること、それでもダメな場合は専門の医療機関に相談することが大切です。浮腫みをそのまま放置せずに、自分のためにもうひと頑張りして医師に相談してみてもよいのではないでしょうか。

医院情報

NACSクリニック リンパ浮腫センター北横浜

NACSクリニック リンパ浮腫センター北横浜
所在地 〒224-0003 神奈川県横浜市都筑区中川中央1丁目4-25
アクセス 横浜市営地下鉄各線 センター北駅 徒歩4分
診療科目 形成外科、眼科

この記事の監修医師