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「小児がん」の治療後はどんな「後遺症」が残る?【医師監修】

 公開日:2024/11/02
「小児がん」の治療後はどんな「後遺症」が残る?【医師監修】

小児がん治療後にさまざまな後遺症が残ることがあります。後遺症は、身体的なものから心理的な影響まで多岐にわたるため、長期的なフォローアップが必要とされます。
本記事では小児がん治療による後遺症とはなにかについて以下の点を中心にご紹介します。

  • ・小児がんについて
  • ・生命に関わる小児がんの後遺症
  • ・妊娠に影響する小児がんの後遺症

小児がん治療による後遺症とはなにかを理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

小児がんについて

小児がんはどのような病気なのでしょうか?以下で詳しく解説します。

小児がんとは

小児がんは、0歳から14歳までの子どもたちに見られる悪性腫瘍の総称です。主に白血病、脳腫瘍、悪性リンパ腫、胚細胞腫瘍、神経芽腫などが含まれ、そのうち白血病が多いとされています。

小児がんは、成人のがんとは異なり、生活習慣よりも発育過程での細胞の異常な増殖が主な原因とされており、臓器ではなく、病理組織学的特徴に基づいて診断されます。治療とフォローアップの進歩により、良好な治療結果が得られることが期待されています。

小児がんの症状

小児がんの主な症状は、以下のとおりです。

頭痛:頭痛が慢性的に続き嘔吐を伴う場合、脳腫瘍の可能性があります。

発熱:周期的に発熱が見られる場合、小児がんの一つである白血病を疑うことがあります。

リンパ節の腫れ:首回り、耳の後ろ、脇の下などに腫れが生じることがあります。

骨・関節の痛み:夜間や安静時に骨・関節の痛みが増す場合、白血病や骨肉腫などの可能性があります。

しこり:手足、顔面、生殖器などにしこりが発生し、ときには動かしにくい状態を引き起こすことがあります。

また、鼻出血やあざ、筋肉や骨の痛み、体重減少、息切れ・動悸・顔色不良などの貧血もあります。これらの症状が見られた場合、早急な医療の介入が必要です。

小児がんの治療

小児がんの治療には、化学療法や放射線治療など、複数の方法が組み合わされて行われることが多いとされています。

化学療法:複数の抗悪性腫瘍剤を使用する多剤併用化学療法が行われています。

放射線治療:放射線を悪性腫瘍に直接照射し、がん細胞のDNAを破壊する方法です。小児の場合、正常組織への影響も少なくはないため、長期的な副作用の管理が重要です。

手術治療:がんの種類によっては、患部を直接切除する手術が推奨されます。

造血幹細胞移植:血液がんや再発がんでほかの治療では難しい場合に、造血機能を正常化させるために行われます。

集学的治療:放射線療法、化学療法、手術などを組み合わせ、患者さんの状態に適切な治療プランを策定します。

これらの治療方法は、患者さんの年齢、がんの種類、進行度に応じて行われます。

小児がん治療による後遺症

小児がん治療後には、後遺症が生じることがあります。

晩期合併症とは

小児がんの治療が成功しても、晩期合併症が生じる可能性があります。発育途中の子どもたちが、がん治療の影響で心機能障害や肺線維症、二次がんといった生命に関わる合併症や、不妊症や成長・発達の遅延(内分泌機能の異常による)、てんかん、学習障害、運動機能の低下などの中枢神経系の異常(⽩質脳症など)日常生活の質(QOL)に影響を与える問題を抱えることを意味します。

さらに、肥満や輸血後C型肝炎なども将来的に重大な健康問題へとつながる可能性があります。これらの合併症は、治療完了後数十年経ってから現れることも珍しくないため注意が必要です。

長期フォローアップの必要性

小児がんの治療後の長期フォローアップは、晩期合併症を早期に発見し対応するために不可欠です。フォローアップは、患者さんが自身の健康リスクを理解し、適切な自己管理を助けることを目的としています。

また、必要に応じて予防的な健康教育を受けることで、日常生活の質を維持し向上させられます。さらに、長期フォローアップにより得られるデータは、将来の治療法の改良に役立つ重要な情報源となりえます。

そのため、子どもから成人へと移行する過程での医療の連続性を保ちながら、患者さん自身が成人としての医療に適応できるよう支援することが、長い人生を考えるうえで重要です。

生命に関わる小児がんの後遺症

生命に関わる小児がんの後遺症を以下で詳しく解説します。

二次がん

小児がんの治療後、生命に関わる後遺症として二次がんのリスクが高まります。特に、化学療法で使用されるアルキル化剤(シクロフォスファミドなど)、トポイソメラーゼ阻害剤(エトポシドなど)、アントラサイクリン系抗がん剤(ドキソルビシンなど)は、骨髄性白血病や骨髄異形性症候群などの二次がんを引き起こすリスクがあります。

放射線治療も、治療を受けた部位に関連した二次がん、例えば頸部や胸部の放射線照射後の甲状腺がんや乳がん、肺がんが発生するリスクがあります。

二次がんは、治療完了後数年から数十年後に発症する可能性があるため、長期的なフォローアップと定期的なスクリーニングがとても重要です。

心機能障害

小児がんの治療による心機能障害は、アントラサイクリン系抗がん剤(例:ドキソルビシン、ダウノルビシンなど)の使用により発生することがあります。これらの薬剤は心臓に毒性を示し、使用量が増えると心筋へのダメージが蓄積され、拡張型心筋症や心不全などの深刻な症状を引き起こすリスクが高まります。

なかでも若年で治療を受けた患者さんでは、成長とともに心臓への負担が増大し、思春期に症状が顕著になることが多いとされています。心機能障害を予防または発見するためには、定期的な心機能評価が推奨されます。

呼吸器障害

小児がん治療後、ブレオマイシンやカルムスチンなどの化学療法、または胸部放射線療法などの治療により肺の晩期合併症リスクが増大します。晩期合併症にはホジキンリンパ腫やウィルムス腫瘍、幹細胞移植を受けたがんが含まれます。

肺の機能が低下し、慢性的な呼吸困難、持続的な咳、その他の呼吸器系の問題が生じる可能性があるため、適切な診断と早期の介入が重要です。

妊娠に影響する小児がんの後遺症

小児がんの後遺症は妊娠にも影響を与えるのでしょうか?以下で詳しく解説します。

妊孕性(にんようせい)の低下

妊孕性、すなわち妊娠しやすさは、抗がん剤治療や放射線治療により影響を受けることがあります。子宮、卵巣、精巣など生殖器官への治療が直接的な影響を及ぼし、将来妊娠しにくくなる可能性があります。

しかし、医療進歩により、若年がん患者さんの妊孕性の温存が可能とされており、がんに関する生殖医療は、地域ネットワークを通じて支援が強化されているため、不妊に関する不安がある場合は、医師に相談し、適切な情報と支援を求めることが重要です。

性腺機能異常(せいせんきのういじょう)

性腺機能異常は、中枢性と原発性に大別され、それぞれが視床下部・下垂体異常や性腺自体の異常に起因します。抗がん剤や放射線治療は、性腺刺激ホルモンの分泌不全や性腺への直接的なダメージを引き起こし、妊孕性の低下につながります。

男児では精子産生に必要な細胞が、女児では原始卵胞数の減少が見られ、それぞれ妊孕性への影響が懸念されます。このため、がん治療後は定期的なホルモン検査や生殖機能の評価が必要です。

小児がんについてよくある質問

ここまで小児がんの後遺症を紹介しました。ここでは小児がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

小児がんの治療に補助金などはありますか?

武井 智昭 医師武井 智昭 医師

小児がんの治療には小児慢性特定疾患治療研究事業という公的助成制度があります。小児慢性特定疾患治療研究事業は、18歳未満で発症した小児がん患者さんが対象で、医療費の自己負担の軽減が可能とされています。自己負担額は家庭の収入によって異なりますが、詳細な支援内容や申請方法などは、お住まいの地域の公的機関や専門の相談支援員に問い合わせることをおすすめします。

小児がんの治療後に大切なことはありますか?

武井 智昭 医師武井 智昭 医師

小児がん治療後には、定期的なフォローアップを行うことが大切です。治療終了後も、再発や晩期合併症のリスクがあるため、医師の指示に従い、定期的に検査を受けることが重要です。また、治療中に体力や筋力が低下している場合が多いため、徐々に日常活動を再開し、適度な運動を取り入れることで体力の回復を図ることも推奨されます。

まとめ

ここまで小児がん治療による後遺症とはなにかをお伝えしてきました。要点をまとめると以下のとおりです。

  • ・小児がんは、0歳から14歳までの子どもたちに見られる悪性腫瘍の総称のこと
  • ・小児がん治療後には、心機能障害や肺線維症、二次がんなどの生命に影響する晩期合併症が生じる可能性がある
  • ・小児がんの抗がん剤や放射線治療が生殖器官に影響を与え、将来の妊娠能力が低下することがあるため、定期的な検査が重要

小児がんと関連する病気

小児がんと関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

小児科・小児腫瘍科の病気

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

小児がんと関連する症状

小児がんと関連している、似ている症状は14個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 頭痛
  • リンパ節の腫れ
  • ⾻や関節の痛み
  • しこり
  • 風邪をひきやすくなる
  • 鼻血や歯茎からの出血
  • 息切れ
  • 手足の麻痺
  • 視力・視野障害
  • 性格や行動の変化

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

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