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「胃がんとスキルス胃がんの違い」はご存知ですか?初期症状も医師が徹底解説!

 公開日:2024/09/09
「胃がんとスキルス胃がんの違い」はご存知ですか?初期症状も医師が徹底解説!

胃がんとスキルス胃がんの違いとは?Medical DOC監修医が胃がんとスキルス胃がんの違い・初期症状・末期症状・原因・なりやすい人の特徴や検査・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は一般外科、消化管内視鏡検査、生活習慣病を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、高砂内科・消化器科クリニックに勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。

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「胃がん」とは?

胃がんとは、胃の壁の内側にある細胞ががん細胞へと変化し、増殖する病気です。本邦では胃がんの発生率は減少傾向です。しかし、いまだに日本では発生率の高いがんであり、毎年10万人以上が新たに胃がんになっています。胃がんは早期の段階では自覚症状が現れにくいですが、進行すると様々な症状が現れます。早期発見・早期治療が重要であり、定期的な内視鏡検査が推奨されています。

「スキルス胃がん」とは?

スキルス胃がんは、胃がんの一種で、胃の壁全体が硬くなる特徴があります。スキルス胃がん特有の原因ははっきりとわかっていません。進行が早く、他の臓器に転移しやすい性質を持つため、現段階では早期発見・早期治療が非常に重要です。

「胃がん」と「スキルス胃がん」の違いとは?

スキルス胃がんは一般的な胃がんと比較して、若年者や女性に多い、腹膜への転移(腹膜播種)の頻度が高いという特徴があります。診断時にはすでに進行がんで、転移した状態で見つかることが多く、治療としては外科手術や抗がん剤などの化学療法、放射線治療などを行います。

胃がん・スキルス胃がんの前兆となる初期症状

胃の不快感

胃がんの症状の一つとして胃の不快感、違和感などがあります。しかし、この症状も胃炎や胃潰瘍、逆流性食道炎などの良性疾患でも起こるため、症状だけでの判断が困難です。これらの症状が続く場合には、放置せず一度消化器内科を受診しましょう。

胸焼け

胃がんの場合、初期症状として胸焼けを感じることがあります。これは、がんが胃の出口付近に発生し、胃酸の逆流を引き起こしている可能性があります。ただし、胸焼けは胃がん以外の多くの病気でも起こりうる症状であるため、胸焼けがあるからといって必ずしも胃がんとは限りません。頻繁に胸焼けを感じる場合は、自己判断せず、医療機関を受診して検査を受けましょう。

貧血

胃がんからの出血などにより徐々に貧血が進むことがあります。貧血の影響で、ふらつきが強くなったり、日常生活で息切れや倦怠感を自覚することがあります。血液検査で急に貧血が進んだり、ふらつきや息切れなどの症状があったりする場合、まず内科を受診しましょう。

胃がん・スキルス胃がんが進行すると現れる症状(末期症状)

進行胃がんで現れる症状は、がんの発生部位や進行度合いによって異なります。ここでは胃がんが進行した場合の代表的な症状をお示しします。ただし、いずれの症状も胃がんに限らず、他の病気でもみられます。気になる症状がある場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けましょう。

腹部膨満

胃がんの腹膜播種が起こり、がん細胞がお腹の中にばらまかれるとお腹の中に腹水が溜まります。腹水は治療しなければ量が減ることはないので、食事とは関係なく常にお腹が張る症状がでることがあります。腹水は肝臓の病気や女性では婦人科の病気でも腹水がでることがありますので、症状がある時は近くの内科や婦人科を受診しましょう。

食べ物の使え感・嘔吐

胃の出口付近にできた胃がんが進行すると、胃からの食物の排出ができずに食事がつかえて、嘔吐してしまうことがあります。胃の通りは徐々に悪くなるのが特徴的です。この症状が胃がんによって出現した場合は、ある程度進行した胃がんやスキルス胃がんの可能性があります。胃炎や逆流性食道炎などの良性疾患でも同じような症状が出る場合があるので、気になる症状がある場合は消化器内科のある医療機関を受診しましょう。

血便・黒色便

がんからの出血により、便に血が混じったり、黒色になったりします。胃がんができている胃粘膜から出血すると便に血が混ざることがあります。胃からの出血では胃酸によって血液が酸化され黒っぽくなり、黒色便として排出されるのが特徴です。血便は大腸からの出血や痔などでも起こる場合があります。血便や黒色便が出た場合には、消化器内科をすぐに受診しましょう。

胃がん・スキルス胃がんの主な原因

スキルス胃がんの原因は全てが判明しているわけではありませんが、一般的な胃がんと同様に複数の要素が関与していることがわかっています。

ピロリ菌

ピロリ菌は、胃の粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、胃がんのリスクを高めます。ピロリ菌を除菌することで胃がんリスクを低下させることができます。胃がん検診などでピロリ菌の感染が疑われた場合にはお近くの消化器科を受診してください。

塩分の過剰摂取

塩分の多い食事は胃の粘膜が障害を受け、胃炎が発生し、胃がんのリスクが上がることが示唆されています。日本食には漬物や塩蔵の魚卵や塩辛などの特有の高い塩分濃度の食品があります。これらの食品を毎日摂取するような極端な食生活は胃がん予防の観点ではおすすめできません。普段から減塩を心がけましょう。

喫煙者・過剰な飲酒

喫煙、過剰な飲酒が胃がんのリスクになることがわかっています。胃がん予防の観点では禁煙と1日のアルコール量をエタノール換算で20g程度に抑えることが重要です。胃がんのリスクが高い生活習慣を是正し、40歳以上の方は胃がん検診を受けましょう。

遺伝的要因

一般的な胃がんでは胃がんの家族歴があると胃がんの罹患リスクが高いことが示唆されています。近い親族に胃がんの方がいる場合は積極的に検診を受けることをおすすめします。

胃がん・スキルス胃がんになりやすい人の特徴

ピロリ菌感染者

ピロリ菌は、慢性的な胃炎を引き起こし、胃がんのリスクになります。胃がん検診でピロリ菌感染を疑う結果が出ている場合には、積極的に除菌を行いましょう。

塩分摂取量が多い人

前述の通り、塩分の多い食事は胃がんのリスクが上がることが示唆されています。漬物や塩蔵の魚卵や塩辛などの特有の高い塩分濃度の食品を毎日摂取するような方は、胃がんリスクが高いといえるでしょう。塩分の過剰摂取は高血圧などの他の疾患のリスクにもなりうるので、塩分摂取は控えるようにしましょう。

喫煙者・アルコール多飲者

日本人を対象とした研究で喫煙者は非喫煙者に比べて男性で1.8倍、女性で1.2倍胃がんになりやすいという研究結果があります。また男性においてアルコール多飲者はアルコールの摂取量が多くなるに従って胃がんのリスクが高いという研究もあります。胃がん予防の観点では禁煙と1日のアルコール量をエタノール換算で20g程度に抑えることが重要です。

胃がん・スキルス胃がんになる可能性の高い食べ物

スキルス胃がん特有の原因になる食べ物はわかっていませんが、一般的な胃がんのリスクになる食品について解説していきます。

塩蔵食品・漬物

塩蔵食品・漬物は魚介類や野菜を食塩につけることで長期保存できるようにした食品です。塩蔵食品の具体例にはたらこ、いくらなどの塩蔵魚卵や塩鮭などの塩蔵魚、塩辛や練ウニなどがあります。漬物は梅干しやたくあんなどの野菜の塩漬けです。これらの食品は少量の摂取で多くの塩分を含むので、習慣的に摂取すると胃がんのリスクを高める可能性があります。食事全般の味付けは控えめにし、塩分は適度な摂取にとどめることを意識しましょう。

アルコール飲料

過剰なアルコール摂取は胃がんのリスクを上昇させます。アルコール量の適量はエタノールで20g程度です。具体的には日本酒なら1合、ビールや%の酎ハイなら500ml、12%のワインなら200ml程度です。もちろんウィスキー、ウォッカなどのアルコール度数の高い飲料には注意が必要ですが、アルコール度数9%のチューハイも自覚なく多くの量のアルコールを摂取している可能性があるので量には注意しましょう。

胃がん・スキルス胃がんの検査法

胃がん・スキルス胃がんが疑われた場合には、まずがんかどうかの診断と治療方針を決定するための検査をします。

バリウム検査(上部消化管造影検査)

造影剤を飲んでレントゲンを撮影する検査です。本来は健診などで、胃がんを見つけるために行う検査です。とくに、胃の壁が厚く硬くなるスキルス胃がんの発見には有用な場合があります。胃がんの診断後には、内視鏡検査ではわかりにくい胃全体の形や病変の位置の確認、手術の術式の決定に用いられることもあります。

腹部CT検査・MRI検査

胃がんかどうかの確定をするために上部内視鏡検査を行い、直接胃の粘膜を観察します。がんが疑われれば、病変の一部を採取し、病理の検査で診断が行われます。がんと診断されれば、その深さや周囲の臓器への浸潤の有無を調べるために超音波内視鏡検査を併用することもあります。

胃がん・スキルス胃がんの治療法

胃がんの治療は、がんの病変が早期であれば、内視鏡的切除、進行がんであれば外科手術が中心です。いわゆるステージ4と呼ばれる胃がんは、遠隔転移があり手術で病巣をとり切れない場合を指します。手術ができない場合は薬物療法や放射線療法、緩和医療を行います。

内視鏡的切除

がんの深達度が粘膜層までの場合は、内視鏡治療(内視鏡的切除)が中心です。体に対する負担が少なく、がんの切除後も胃が残るため、食生活への影響が少ない治療法です。手術後には、切除した病変の病理分類を行い、必要に応じて薬物療法が行われることがあります。

手術療法(化学療法)

がんが粘膜下層に達しているときは、内視鏡的切除が難しいため手術療法を行います。がんの部分と転移の可能性があるリンパ節を取り除く手術です。胃がんの部位によって胃を部分的に切除するか、全摘するかどうか判断されます。進行がんにおいては唯一の根治治療です。手術後の再発を防ぐために薬物治療を行うことがあります。

薬物療法(化学療法)

胃がんの薬物療法では、細胞が増殖するのを抑える「細胞障害性抗がん剤」や、がんの増殖にかかわるタンパク質を攻撃する「分子標的薬」、免疫ががん細胞を攻撃する力を保たせる「免疫チェックポイント阻害薬」などがあります。どの薬を使用するかについては、患者さんの状態、がんの進行状況など総合的に判断されます。また、点滴や入院の必要性、通院の頻度なども患者さんごとに異なりますので、わからない点があれば主治医に確認をしましょう。

放射線療法

放射線を使って、がん細胞を攻撃する治療法です。胃がんにおいては進行がんや再発胃がんの補助的治療として用いられます。根治を目的とする場合や症状緩和目的など、がんの進行度や患者さんの状態によって治療目的は異なります。医師と相談し、最適な治療法を選択しましょう。

緩和ケア

がんによる身体的な痛みはもとより、がんになることによって生じた仕事や将来、家族への不安など、精神的な痛みを軽減させるために行う治療です。がんによる心身の苦痛があるときは、緩和ケアチームへ相談しましょう。

「胃がんとスキルス胃がんの違い」についてよくある質問

ここまで胃がんとスキルス胃がんの違いなどを紹介しました。ここでは「胃がんとスキルス胃がんの違い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

スキルス胃がんを早期発見する方法を教えてください。

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

スキルス胃がんは初期症状が乏しく、進行が早いことから、早期発見が難しいがんの一つです。しかし、定期的な検査を受けることで、早期発見の可能性を高めることができます。特に、40歳以上の方は胃がん検診を、胃がんのリスクが高い方は年に一度の内視鏡検査を受けることをお勧めします。

スキルス胃がんは胃カメラで発見できますか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

スキルス胃がんは、胃カメラで発見できる可能性があります。しかし、スキルス胃がんは胃の壁全体が硬くなるため、通常の内視鏡検査では見逃されることがあります。その場合はバリウム検査が有用な場合もあります。

胃がんやスキルス胃がんは、家族に発症した人がいると自身も発症しやすいのでしょうか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

胃がんやスキルス胃がんは、遺伝的要因も関係しているため、家族に発症した人がいる場合は、自身も発症するリスクが高くなる可能性があります。特に、両親や兄弟姉妹など、血縁関係の近い人が胃がんになった場合は、注意が必要です。定期的な胃カメラ検査を受け、早期発見に努めましょう。

編集部まとめ 生活習慣の改善と定期検診で胃がんを予防しよう!

胃がんとスキルス胃がんは、原因が一部わかっていないものの、知識をつけた上で、生活習慣の是正を行うことでリスクを下げることができます。万が一胃がんに罹患してしまった場合は早期発見・早期治療が重要です。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査・治療を受けましょう。

「胃がんとスキルス胃がん」と関連する病気

「胃がんとスキルス胃がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

胃がんは早期発見・早期治療が重要です。定期的な胃カメラ検査を受け、早期発見に努めましょう。

「胃がんとスキルス胃がん」と関連する症状

「胃がんとスキルス胃がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状は胃がんやスキルス胃がん以外の病気でも起こるため、症状のみでは区別がつきません。気になる症状があれば消化器内科を受診しましょう。

この記事の監修医師